噛むほどに味わい深く力強い太打ち田舎そば『蕎麦切り 翁』
創業70余年。戸越銀座商店街の東の端にそっと佇む『蕎麦切り 翁』は、決してアクセスがよいとはいえないのに、遠方からも通うファンが絶えない知る人ぞ知る名店だ。
そばは、細打ちと太打ちの2種類。細打ちは、北海道産のそばの実を石臼で丁寧に製粉し、中心に近い白い部分と粗挽き粉をブレンドした、のどごしのよいそば。太打ちは、北海道・山形・茨城・長野などから厳選したそばの実を殻ごと挽いて製粉した田舎そばで、味や香りがよく、噛むほどに味わい深く力強い。
季節に合わせて内容が変わるそば膳の天ぷらや茶わん蒸し、ご飯ものは、さまざまな味や食感が楽しく、満ち足りた気持ちにしてくれる。
初めて訪れてもほっとする居心地のよい空間や、つかず離れずの接客にも、普通や日常を大切にする3代目の想いが込められている。何気ない日も大切な日も、いつもよりちょっと豊かで幸せになれる、とっておきの1軒。
『蕎麦切り 翁』店舗詳細
今日も熱々はふはふの焼き小籠包『龍輝』
『龍輝』の看板メニューである焼き小籠包は、戸越銀座商店街の食べ歩き商品のなかでも大人気メニューのひとつ。できたて熱々の焼き小籠包にはくれぐれもご注意を。油断すれば超熱々、灼熱、破壊力抜群の肉汁が口中を襲う。
ランチには鶏粥とのセットがおすすめだ。熱々の肉汁と、滋味あふれるやさしい鶏粥のハーモニーがなんともうれしく、満足度は抜群。ついてきたザーサイの塩味も良い仕事をしている。塩味を感じながら食べる鶏粥の味が引き立ち、食欲をそそる。卓上の黒酢をかけて味変させるのもいい。
夜はカップルで来店し、小籠包6個を2人でシェアしながら、ほかのメニューも頼んでゆっくりお酒を楽しむというスタイルの方も多いとのこと。「お酒の友」として蒸し鶏やよだれ鶏、牛煮込みやピータン、ザーサイなどいかにもお酒が進むメニューがしっかり用意されている。
『龍輝』店舗詳細
都内に希少な博多スタイルの天ぷら『天ぷら食堂若鷹』
都内では珍しい、博多スタイルの天ぷら専門店。気取らず自由に過ごせる、子供も大歓迎のアットホームなお店だ。
お皿代わりのバットと揚げ網の上には、数秒前まで天ぷら鍋で音を立てていた、まさに揚げたてがどんどんサーブされる。熱々に喰らいつけば、プリッと歯切れのよいエビや、すっと嚙み切れる感動のイカを堪能できる。
ランチの定食は、品数によって呼び名の変わる天ぷら・若鷹・デラックスと、チキン南蛮、唐揚げから選ぶが、上エビ+半玉にグレードアップするのをお忘れなく。
珍しい豚肩ロースのスライス肉や、とろっとろの半熟玉子の天ぷらは、明太子や辛子高菜、もやしナムル、バラエティー豊かな卓上の調味料で自由にアレンジ。ご飯、みそ汁、明太子のお替りは無料なので、心ゆくまで味わい尽くそう。
『天ぷら食堂 若鷹』店舗詳細
普段着で訪れたい。誰でも気軽に入れる『イタリア厨房 若王子』
都営浅草線戸越駅から徒歩4分、戸越銀座温泉のほど近くにある『イタリア厨房 若王子』。戸越銀座出身のシェフ・若王子資和さんが14年に渡るホテルシェフやフードコンサルタントを経て、2009年「誰でも気軽に入れるカジュアルイタリアン」というコンセプトでオープンした。ランチはオムライス2種、パスタ2種、ピザ1種。価格はすべて1000円で、サラダとドリンクがつく。
なかでも一番人気は、モッツァレラチーズとバジルのトマトソース。ピラフの上にふんわり卵、爽やかな酸味のトマトソースがかかっているオムライスだ。ミルキーなモッツァレラチーズが口の中でやさしく溶け合う。こちらのメニューは全体的に、優しいテイストなのも特徴だ。
そこには「戸越銀座にはお年寄りや子どもが多く、誰にでも食べやすい味にしています」という若王子さんの配慮があった。『イタリア厨房 若王子』は誰とでも気軽に食事ができるレストランなのだ。
『イタリア厨房 若王子』店舗詳細
必ずまた食べたくなる特製ミートソース『SPERANZA』
戸越銀座の駅裏、細い路地にあるミートソース専門店『SPERANZA』は気さくなイタリアン。ランチメニューには、個性豊かな6種類のミートソースが並ぶ。一番人気は、9割以上の人がこれを選ぶ日もあるスペランツァ特製ミートソース。ミニパンとミニサラダがついて790円という財布にやさしい価格設定もうれしい。
口の中で踊るようなちゅるんとした食感の自家製の生フェットチーネが、ソースの肉感を引き立てる。初めて食べたのになぜか懐かしさを感じるほっとする味。オーナーシェフの北原さんには、忘れられない味の記憶がある。
25年前に1人でシチリアを旅していたときに出会った、素朴でなんてことない、でも忘れられないボロネーゼ。あのボロネーゼのような、ごく普通の味を目指している。「あの店でいいかというぐらいの気軽さで来てもらえたらと思っています」と語るシェフの料理は、普通だけど忘れられない余韻を残す味。
『スペランツァ』店舗詳細
おまかせ定食の刺し身が絶品! 『酒味処 みやこや』
都営浅草線戸越駅から徒歩5分。さりげない店構えに下町情緒を感じる『酒味処 みやこや』は、お昼からとびきりの魚が味わえる店。豊富なラインナップに迷ったら、3つのおまかせ定食から選ぼう。
ご主人は、その日に使う分だけを仕入れに豊洲に通う。研ぎ澄まされた包丁の技も鮮やかな刺し身。おまかせ定食は、お昼からヒラメ・真鯛・マグロの中トロという贅沢さ(魚の種類は日によって変更あり)。お盆の上には、赤いマグロと鮭、白いヒラメと真鯛とポテトサラダ、黄色い玉子焼き、緑の和え物と漬物と、色とりどりのおかずが並ぶ。やさしい味で栄養バランスのよい定食がうれしい。
実直で腕のよいご主人と、戸越銀座育ちで面倒見のよいおかみさんが切り盛りする店は、昼も夜も戸越界隈の幅広い世代に愛され、毎日通う常連も1人や2人ではない。忙しくなるとお客さんが店を手伝うこともあるという、下町ならではの温かい人付き合いが残っている。夜限定や季節のメニューも魅力的。
『酒味処 みやこや』店舗詳細
『洋食工房 陶花』は、絶品オムライスが食べられる街の洋食屋さん
東急池上線の戸越銀座駅から戸越銀座商店街を中原街道方向へてくてく4分ほど歩いた左手にある『洋食工房 陶花』。この地で20年以上地元民に愛され、2世代、3世代に渡って通う常連が通う。そんな街の洋食屋さんの『陶花』でとくに人気で有名なのが、オムライスだ。
ランチタイムに食べられるオムライスは、オムライストマトケチャップ990円と、オムライスデミグラスソース1180円の2種類が基本。秋・冬限定(10~3月)でオムライスホワイトソース1180円、春・夏限定(4~9月)でトマトソースが登場する(すべてカップスープ・ミニサラダ付)。
その鮮やかな色彩美と優雅なフォルムに思わず「わぁ!」と、子供のように口を突いて出てしまうほど、ここのオムライスは麗しい姿をしている。表面がプルンとして、内側にトロトロが少し残る絶妙な仕上がりの玉子に、具材たっぷりのチキンライス。味も食感もケチャップとのバランスも、決して家庭ではマネできない職人技だ。
『洋食工房 陶花』店舗詳細
『中国料理 百番』は、異色の3代目がプロデュースする人気の老舗街中華
東急池上線の戸越銀座駅から第2京浜を渡り、戸越銀座商店街に入ってすぐの場所にある『中国料理 百番』。店頭にずらりと並ぶ中華総菜や、独特な雰囲気の店内で食事を楽しむ客が、開店から閉店まで絶えることがない人気店だ。
ここで初めてランチを食べる客は、その種類の多さに驚くはずだ。日替わり定食や選べる定食、麺セット、レディースセットに百番オリジナル料理などなど、とにかく豊富過ぎるほどのバラエティ。何を食べるかを迷ってなかなか決められなくなるかもしれない。そんな時は、百番オリジナルの一番人気「特製酸辣湯麵」がおすすめ。
イベント関係の元サラリーマンの現・3代目オーナーである白井さんが、店のコックとともに100回近くの試作を繰り返して作り上げた『百番』でしか食べられない、滋味あふれるやさしい味わいの酸辣湯麵だ。1日に2回食べに来る人もいるというほど、やみつきになる味。戸越銀座に来たら、ぜひ食べておきたい逸品だ。
『中国料理 百番』店舗詳細
『天丼専門店 天丸』でリーズナブルに愉しむ天丼×シェリー酒の大人ランチ
都心の商業施設の中にあるカフェのオーナーだったという店主が営む、カウンター席だけのこじんまり落ち着いた雰囲気の天丼専門店。都営浅草線戸越駅から第二京浜を五反田方面にまっすぐ歩いて5分ほど、壁に描かれた大きな天丼が目印だ。
お店おすすめは、丼から横一文字にはみ出る大きなアナゴと海老、イカ、玉子、海苔の5種類の天ぷらがのった特上天丸天丼1000円。特上なのに、海老天丼1100円や小海老かき揚天丼1100円よりもリーズナブルでかなりお得な一品だ。また、天丼のほかに、定食や天ぷら盛り合わせ、お好みで頼める単品の天ぷらもある。
さらにここのもうひとつのおすすめは、なんとシェリー酒。お1人様で来店して天丼や天ぷらと一緒に、シェリー酒をサクッと愉しむ女性客も多いという。「シェリー酒と天ぷらは、すごく相性がいいんですよ」というダンディな店主にすすめられ、思いがけず「天丼×シェリー酒」の大人なランチとなった。この意外なペアリング、ぜひおすすめだ。
『天丼専門店 天丸』店舗詳細
取材・文・撮影=京澤洋子、丸山美紀(アート・サプライ)、夏井誠、松本美和、パンチ広沢