設計士でもある店主の遊び心を探す『トンボロ』[神楽坂]
神楽坂に住んで三十数年の店主・平岡伸三さんが語ってくれた、店のコンセプトは「新しいものと古いものをつなぐラブリーを」。ヨシズの残りと和紙で照明を作ったり、自作のアート作品を飾ったり。息子さんが営む棟続きのカフェと引き戸でつながっていたり。開店から約30年、今でも少しずつ手を加えているとか。小さな創意工夫が、変わらないものの中に心地よく同居する。
『トンボロ』店舗詳細
都心では貴重なザ・昔ながらの喫茶店『珈琲専科 珈瑠で』[神楽坂]
オープンは昭和49年(1974)だ。飴色の木材を多用した内装に、籐の背もたれのパイプ椅子、温かみのあるオレンジ色の照明がほのかに壁を照らす。店主の堀井敏弘さんは開店以来、一貫してサイフォン式で1杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れている。薄いガラス容器越しに見るコーヒーは、目にも美しく、じっくり抽出される時間を待つのもどこかぜいたく。料理の看板メニューは「ナポリタン」。中太のやや柔らかめの麺に生のトマト、ベーコン、玉ねぎなど食べやすい大きさの具材が絡む。上品な味わいで、ボリュームもランチにちょうどいい。
『珈琲専科 珈瑠で』店舗詳細
風光を感じる席にするか、それともおこもり席にしようか『そよや江戸端 喫茶室』[江戸川橋]
階段を上がると、左右に対照的な空間が現れる。商店街に面する陽の間と、深緑の壁が光を吸い込む陰の間だ。戦後建築の平屋は増改築を繰り返し、しゃれた意匠が随所に光る。店主の新実喜久子さんは、工務店を営む一級建築士で「人が暮らした記憶を生かして」リノベ。時折催す茶会やイベント、販売もするアーティストの作品、近所の料理家考案のおやつが、新たな息吹を吹き込んでいる。
『そよや江戸端 喫茶室』店舗詳細
路地の先の茶室で過ごす気張らない時間『神楽坂 和茶』[神楽坂]
小さな看板に誘われ、引き戸を開ければ、正統派の茶室が出迎えてくれる。店主・塚田玲美さんは「お茶のおもしろさを少しでも感じてもらえたら」と、茶室をカフェとして開放。抹茶と上生菓子だけでなく、発酵や収穫の違いを楽しめるよう、和紅茶や、阿波晩茶、和チャイも用意。付かず離れずのもてなしを旨としながらも「話が弾むとつい、にじり寄っちゃう」。茶を囲む時間が朗らかに過ぎていく。
『神楽坂 和茶』店舗詳細
民家をリノベした開放的なカフェ『elm green coffee』[神楽坂]
のんびり過ごす人の姿を見つけ、行き止まりの路地へ入れば、開け放った窓から芳しい香りがこちらを誘う。民家を改装した店は「美容室を営むオーナーが見つけました。仲間のネイリストと3人で、街の人が憩えるカフェにしたくて」と、店長でバリスタの山崎順絵(ゆきえ)さん。エチオピアを軸にした深煎りのエルムブレンドや、スペシャリティーコーヒーが香り高く、カップ片手に談笑する時間がいとおしい。
『elm green coffee』店舗詳細
住宅地で人を呼ぶタイのお母さんの味『AKHA AMA COFFEE』[神楽坂]
オーナーの山下夏沙さんと市川純平さん夫婦がタイで出会ったのは、自身の母親が栽培する豆を用いたカフェを経営するリーさん。「少数民族アカ族出身で、村で初めて大学に行き、食育や教育を広めるための施設をつくってるんです」。その活動に共鳴し、丁寧に作られたコーヒーの味を伝えようと、日本1号店として開店。ハンドドリップを飲めば、すっきりした旨味と深い香りにほれる。
『AKHA AMA COFFEE』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、香取麻衣子(編集部)、風来堂 撮影=加藤熊三、木村心保、鈴木愛子