女性店主が徹底プロデュース
「ラーメン業界って男性だらけの世界ですが、この店は私がすべてをプロデュースしています。女性店主のラーメン屋は珍しいかもしれませんね」。そう語るのは『旨辛麺かつくに』の店主・えつ子さん。真っ赤な外壁も、力強い店の名もえつ子さんが決めた。
もちろん、メニューもすべてえつ子さんが開発。男性がメインに活躍する業界で女性が商品をつくるとなると、いかにも “控えめ”で“おしとやか”なものができあがることが多いが『旨辛麺かつくに』は、コク深く、しっかりと味が主張するラーメンばかりを提供する。
旨辛、醤油、魚介、濃厚かにみそも。幅広いメニュー
看板メニューの旨辛麺は0辛~6辛まで好きな辛さを選べる。スープはうま味のあとに辛さがやってきて、何度でもレンゲですくって飲みたくなる味。米粉入りのもちっとした麺はスープがよく絡んで美味。
旨辛麺と双璧をなす人気のじとっこ醤油ラーメンは、こっくりとした醤油スープが特徴。旨辛麺も醤油ラーメンも、スープの味の決め手は宮崎の高級ブランド鶏で有名な“じとっこ”だ。じとっこのガラで奥行きのあるうま味と上品な甘味が出るそう。
「何度か旨辛麺を食べてくださったお客さんが、試しにじとっこ醤油ラーメンを食べると、その次に来てくださったときはどちらにするか迷っていらっしゃることが多いですね。旨辛麺もよく売れますが、醤油のほうも気に入ってくれる方が多くてうれしいです」。
ほかにも魚介の風味が加わったじとっこ醤油魚介ラーメン800円、味噌の味わいが活きる魚辛麺790円などメニューを広く展開。一風変わった、濃厚かにみそつけめんもファンが多い。
ほがらかな女性店主のブレない覚悟
店主のえつ子さんはこれまで海鮮料理屋で料理の勉強を重ねてきた。なぜラーメン屋を開業したのかを聞いてみると「ラーメンってよく食べるし、好きな人が多いですよね。店を出すならたくさんの人に食べてもらえるラーメンにしようと決めていました! 私自身も食べることが大好きなんです」と明るく答えてくれた。
代々飲食に携わる家系に生まれたえつ子さんは「食べることは生きることそのもの。腹が減っては戦はできぬ、でしょ?」と笑う。小柄な女性のためか「店長に見られない」と言うが「一生ラーメン職人としてやっていこうと思っています。自分の人生のすべてを賭けて営業しています」と、並々ならぬ覚悟を持つ。
そういえば、“かつくに”という店の名前の由来はどこからだろうか。「実はお店をオープンしたタイミングが2020年の6月でした。ちょうど新型コロナウイルスで飲食店が大ダメージを受けたタイミングだったんです。飲食店だけでなく日本全体が不安いっぱいなときで……。だからコロナに勝つ国であってほしいと願って。“コロナに勝つ国”、略して“かつくに”にしました」。
なんという頼もしい答え!
店主の情熱がたっぷり注がれた力強い味わいで評判の『旨辛麺かつくに』。これからますますにぎわっていく注目店だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=宇野美香子