店頭で、文庫がきちんと並んでいる

お店におじゃましようとしたちょうどその時、店員さんが店頭の文庫をきれいに整えていた。

古本屋の店頭といえば100円文庫コーナー。たいてい日に焼けた文庫をなんとなく掘り起こして、もとに戻すことなくまたなんとなくその辺に重ねる。みんなそうするから文庫はばらばらしているのがふつうだ。でもこのお店は違った。整然ときれいに並んだ100円文庫が出迎えてくれる。

店員さんがしょっちゅう並べ直す店頭の文庫コーナー。

大多数の本にかかるグラシン紙。管理され、きれいな古本にびっくり

「グラシン紙」というのは、本の保護のためにかける半透明の薄い紙のことだ。高価な本のコーナーでよく見かけるけれど、この店では大多数の本にかかってるんじゃないか?と思うくらい。ほぼ一面グラシン紙に包まれた書棚はちょっと壮観だ。またしても、このお店のていねいさを実感する。

書棚ごとにジャンルが分かれているので見やすいのも特徴だ。

薄く透けて見える本の背がきれい。

「この一冊を売るために」早くからネット販売にも着手

かなり勝手な思い込みで「古くからある古本屋なら、ネット通販はしてないだろう」と思っていた。ところが『岩森書店』は早い段階からネット通販を開始したという。

「古本屋は、ここにあるこの一冊を売る。本との出合いのためには、店舗でだけでなく販路を広げることが必要だから」と店主の岩森さんは話す。

ネット通販で大切なのは、サイトに上がっている画像と届いた商品に違いがないこと。きれいに管理しているのは、店内で在庫している間に焼けや折れが出てしまうトラブルを避けるためでもあった。

店主の岩森さん。実は東京都古書籍商業協同組合のインターネット部門の事業部員でもある。
整理されるのを待つ古本たち。

荻窪駅の発車ベルが聞こえるこの地で70年以上

ふと店の外に目を向けると目の前に中央線が止まっていた。目の前の道をはさんで向こう側が線路なので、電車が来るとすぐにわかる。

お父さんから受け継いで『岩森書店』の2代目となった岩森さん。長年この景色を見てきた荻窪っ子だ。「昔、ここから見える風景は……」と、荻窪タウンセブンのない時代をなつかしそうに話してくれた。

本の読み方も時代によって変化するそうだ。今は、軽く楽しめるものと、専門性の強いもの、両極端な本がよく出るそう。そんな要望に応えるため、蔵書のジャンルは多岐にわたる。

そういえば、ご自身はどんな本が好きなんですか?と聞くと「売れる本が一番好き」。

さすが本屋さん。いい答えをもらいました。

電車を降りた人とあいさつできそうな距離感。
スズキコージ氏がデザインした包装紙。『第21回書皮大賞』受賞作。
70年以上この場所で営業を続けている。
住所:東京都杉並区荻窪5-30-12/営業時間:11:00〜20:00/定休日:火/アクセス:JR中央線・地下鉄丸の内線荻窪駅から徒歩1分

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ