「カフェ」と「キャンドル」? つかめない関係性

荻窪駅前の喧騒が少し落ち着いたあたり。『Fイワモリ』はガラスの扉と窓、そして大きな「F」が目印の喫茶店だ。外のテラス席でコーヒーを飲むのも気持ちよさそう。

なんて思いながら店頭の看板を見ると、珈琲・紅茶のほかに「手づくりアイスクリームとケーキ」、そして「創作キャンドル」。

カフェとキャンドル。あまり関係がなさそうに見えるけど……。

看板にも「cafe」と「candle」の文字が。
看板にも「cafe」と「candle」の文字が。
風が抜ける気持ちよいテラス席。ここのみ喫煙可。
風が抜ける気持ちよいテラス席。ここのみ喫煙可。

「手づくり」の情熱はとどまるところを知らない

迎えてくれたのは、お客の応対にケーキづくりと、なにからなにまで一人で切り盛りする店主の染谷さん。棚にはいっぱいのキャンドルが。

「いろんなものづくりをしたんだけど、特にハマっちゃったのがキャンドル作り」

あるときは、カフェの店主、またあるときはキャンドル作家、同時に毎日ケーキや焼き菓子、アイスクリームなど丁寧に手作りしている人なのだ。とにかく「作るのが好き!」。「次に何を作ろうか、毎日ワクワク考える時間が楽しい」と話す。

ちなみに店名の「F」は、名前の「Fumie」と「Fire(キャンドルの炎)」、「Flower(花)」、「Flour(お菓子作りに欠かせない小麦粉)」の意味。そして、「イワモリ」は旧姓であり、喫茶店ができる前に母親が店番していた古書店「岩森書店」の由来だ。現在も荻窪駅前で「岩森書店」を営むのは染谷さんの弟さん。カフェに古本屋とは、なんだかイカス姉弟だ。

トマトソースも手づくりで。
トマトソースも手づくりで。
キャンドルは200円〜ですべて染谷さん手作り。香り付きのものや、芯の数が多く消えにくいものなど種類も豊富。
キャンドルは200円〜ですべて染谷さん手作り。香り付きのものや、芯の数が多く消えにくいものなど種類も豊富。

クリームにもヒミツあり! 絶品のシフォンケーキ

この日は、毎日のように焼くというシフォンケーキとコーヒーをオーダー。シフォンケーキはほんのりレモン風味で本当にふわふわ。甘さもちょうどよく、添えられたホイップクリームの酸味と相性抜群だ。

このさわやかな酸味、秘密はヨーグルト。これも手づくりで「安心して食べられるもののほうがいいでしょ」と笑って話す。

ケーキといっしょに楽しむためのコーヒーは、中煎り、深煎りに加え、酸味のあるものの3種を用意。ケーキもコーヒーも、プロの「手づくり」を感じる逸品といえる。

シフォンケーキとコーヒーのセット900円。オプションでアイスクリームをのせるのもいい
シフォンケーキとコーヒーのセット900円。オプションでアイスクリームをのせるのもいい
コアントローが隠し味の手づくりアイスクリームも濃厚でおいしい。コーヒーとセットで1100円。
コアントローが隠し味の手づくりアイスクリームも濃厚でおいしい。コーヒーとセットで1100円。

お店を形作る、あたたかな気まぐれさ

ケーキの種類は日によって違うので、その日だけのメニューに出合えることも。ちょっと気まぐれなのがむしろ楽しい。常連さんには裏メニューを出すこともあるそう。

「愚痴を言えるような喫茶店があることって大事なんじゃないかな」。この日もものづくりをしている常連さんが来店し、おしゃべりしたり、作品について語ったり。やさしい時間を過ごして行った。

お店を始めて30年以上。地元に愛され続けるあたたかい喫茶店だ。

カウンター奥の小さな厨房で毎日ケーキを焼く染谷さん。
カウンター奥の小さな厨房で毎日ケーキを焼く染谷さん。
レンタルボックススペースには手作り作品がたくさん並ぶ。
レンタルボックススペースには手作り作品がたくさん並ぶ。
住所:東京都杉並区荻窪5-21-11/営業時間:10:00〜18:30(火は12:00〜)/定休日:日・祝/アクセス:JR中央線・地下鉄丸ノ内線荻窪駅から徒歩1分

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ