駅前無料足湯でほっこり
電車を降りて改札抜けたらすぐにドボン!
市北部を横切るJR中央本線。市内の駅は旅の玄関口で2階建て橋上駅舎の石和(いさわ)温泉駅と一つ東京寄りで無人駅の春日居町駅の2つ。いずれも駅を出てすぐ目の前、南側ロータリーの一角に、温泉を引いた無料足湯がある。泉源や風情はそれぞれ異なるので、電車に揺られてのハシゴ足湯もオツかも。多少の雨では濡れない立派な屋根がありがたい。
●10:00~17:00(4~9月は18:00まで)、無休。
山梨県笛吹市石和町駅前18(石和温泉駅前公園あしゆ)、山梨県笛吹市春日居町別田387-1(春日居足湯施設)
☎055-261-3334(笛吹市まちづくり整備課)
笛吹権三郎の像
名の由来は川に流された母を思う伝説にあり
約600年前、氾濫した子酉(ねとり)川に流された母を、得意の笛を吹きながら探し回る孝行息子・権三郎の姿があった。しかし願いは叶わず、疲れきった権三郎自身も川に呑まれて命を落とし、村人はこの流れを笛吹川と呼ぶようになったという。悲しい伝説を後世に語り継ぐべく、権三郎をしのぶ像が建立されている。
●見学自由。山梨県笛吹市石和町川中島、山梨県笛吹市松本
日本一の桃源郷
咲き誇る桃の花が旅人を華麗にお出迎え
フルーツ王国として名高い山梨県。なかでもモモとブドウの生産出荷量日本一の一大産地である笛吹市の春の風物詩といえば桃の花だろう。目にも鮮やかなピンク色の花が市内各所を彩る様子は壮観で、南アルプスや八ヶ岳との対比もすばらしい。展望台から観賞するのもいいが、気ままな散策がてら自分だけのお気に入りスポットを見つけるのも楽しそう。開花時季は例年3月下旬~4月中旬。
●市内各所
釈迦堂遺跡博物館
縄文中期の国指定重要文化財5599点を収蔵
中央自動車道建設に先立つ釈迦堂遺跡発掘調査により発見された土器・土偶・石器など、貴重な出土品を展示・収蔵。2020年には「土偶の聖地と土器の森」を展示コンセプトに据えリニューアルオープンした。常設展示では特異な造形が目を引く水煙文土器や1116 点の土偶などを、回廊を巡るように見て回ることができる。
ルミエールワイナリー
眺めのよいブドウ畑から甲府盆地を一望できる
ブドウ畑に囲まれた明治18年(1885)創業のワイナリー。ショップにはシャトールミエール赤4400円ほか30種以上の銘柄が揃い、スパークリングワインも充実。国登録有形文化財の石蔵発酵槽などを巡るワイナリーツアーは11:00・14:00の2回(500円、原則2人以上、要予約)。フレンチレストラン『ゼルコバ』も併設(営業時間など詳細は要確認)。
喫茶kivis
自分のペースで穏やかに過ごせる至福の時間
少々素っ気ない外観とは裏腹に、店内に足を踏み入れるとホッとできる空間が広がる小さな喫茶店。「一人で来ても居心地のよい場所を」と、20年近く空き家だった建物に手を入れ、この地で店を始めた店主・井上真由美さんの思いが随所にうかがえる。こだわりのドリンクメニューに加え、季節の果物のスイーツも大いに気になるところ。臨時休などの店舗情報はインスタグラムで確認を。
みさか桃源郷公園
モモ畑越しに南アルプスと甲府盆地を望む好展望地
果樹園に囲まれた小高い丘の上に広がる。鏡池を中心に親水広場、健康の丘広場、芝生広場などが点在するが、目玉は平成の塔が立つ中央広場からの南アルプスと甲府盆地の眺望。標高がさほど高くないので気軽に立ち寄りやすい。
リニアの見える丘
地上区間走行中の様子を間近に見られる
品川・名古屋間の開業に向け、鋭意工事が進められている浮上式輸送システムのリニア中央新幹線。総延長42.8kmに及ぶ山梨リニア実験線では現在走行試験が精力的に行われており、市内の八代ふるさと公園と花鳥山展望台で実験走行の様子を間近に見られる。走行予定日は山梨県立リニア見学センターのHPで確認できるが、運行時刻は決まっていないので、現地を訪れた際にタイミングよくリニアに遭遇できるかどうかは運次第だ。
●見学自由。山梨県笛吹市八代町岡(八代ふるさと公園)、山梨県笛吹市御坂町竹居(花鳥山展望台)
花鳥山一本杉
駐車場からの眺望もなかなか侮れない
花鳥山と呼ばれる標高500m弱の地に立つ根回り8m超の巨樹で推定樹齢は300年以上。樹高は40mあったとされるが、度重なる落雷を受け現在は25mほどになっている。リニアの見える丘の一つである花鳥山展望台よりさらに高い場所に位置するため、駐車場からは山梨リニア実験線や甲府盆地をより俯瞰(ふかん)気味に見通せる。
●見学自由。山梨県笛吹市御坂町竹居
八代ふるさと公園
何度も足を運びたくなる圧巻の眺め
市内随一の眺望を誇り、南アルプスや八ヶ岳など名だたる峰々を見通せる。起伏を生かした園内には親水広場やリニア見学用展望台があるが、ひときわ目を引くのは県内屈指の規模を誇る前方後円墳の岡・銚子塚古墳(全長92m)や、円墳の盃塚古墳を整備した古墳広場。古墳の上に立てば、その大きさを実感することだろう。甲州蚕影(こかげ)桜をはじめとする桜の名所であり、また甲府盆地を一望する夜景スポットとしても大変人気がある。
星石
碑面に彗星が描かれた摩訶不思議な自然石
果樹農家や住宅に囲まれた地にある長さ129cm、幅40cm、厚さ50cmの自然石。石の表面には星座、太陽、月などが刻まれ、2個の彗星は慶長12年(1607)のハレー彗星との説もあるとか。悪星退散を祝う星祭で使われた、あるいは星占いの神事に供されたなど諸説あるが、いわれははっきりしていない。花鳥山山腹の桃の花見とセットで訪れるのにも便利。竹居地区コミュニティセンター敷地内にある。
●見学自由。山梨県笛吹市御坂町竹居3277
山梨県立博物館
甲斐の国の歩みをわかりやすく学べる
基本テーマは「山梨の自然と人」。常設展示室のメイン展示では山梨の自然と人や交流に関わる歴史・文化を19のテーマに分けて紹介。控えめな照明はじっくり見て回るのに好適だ。企画展示エリアでは開館15周年記念特別展「生誕500年 武田信玄の生涯」を2021年5月10日まで開催中。常設の「歴史の体験工房」は2021年3月現在休止中。
甲斐国分寺跡
国指定史跡! 石の国営寺院跡
甲斐国分寺は天平13年(741)、国家鎮護のため聖武天皇が命じた「国分寺建立の詔」により全国各地に60ほど建てられた国分寺の一つ。大きさは南北330m、東西255mとされ、発掘調査により金堂跡・講堂跡・塔跡・回廊跡・中門跡などが見つかっている。約500m北側には同じく国指定史跡の甲斐国分尼寺跡(一宮町東原)がある。山梨県立博物館とあわせて巡るとよりいっそう理解が深まるのでぜひ。
●見学自由。山梨県笛吹市一宮町国分
田舎料理 古今亭
「ラーほー」か「ほうとう」か注文が悩ましい
笛吹市の新ソウルフードとして売り出し中の「ラーほー」。ラーメンスープと山梨の郷土料理ほうとうの麵を組み合わせたもので、店ごとに味や具を工夫している。地粉にこだわる手打ちほうとう(900円~)の老舗でもあるこちらでは、醤油味と塩味の2種をラーほー専用麵とともに提供(各800円)。馬肉のもつ煮600円やたまご焼き700円など居酒屋メニューも充実している。
小林公園
歴史散策のあとは足湯でくつろぐもヨシ
日本開発銀行初代総裁・小林中(あたる)の邸宅跡を公園として整備。土蔵も残る公園自体はさほど広くないが、周辺には立派な仁王門が目を引く遠妙(おんみょう)寺をはじめ、石和八幡神社、石和本陣跡、石和陣屋跡、八田家書院などが集まっているので、歴史散策の拠点に好適だ。園内には無料足湯もある。
●散策自由。無料足湯は10:00~17:00(4~9月は18:00まで)、無休。
山梨県笛吹市石和町市部1080
石和温泉七福神まいり
破魔矢獲得を目指して精力的に訪ね歩きたい
JR石和温泉駅付近から南西方面にかけて笛吹川右岸に点在する常徳寺、常在寺、蓮朝寺、恵法寺、遠妙寺、佛陀禅寺、大蔵経寺の7寺。それぞれに七福神が祀られており、御朱印をいただくための色紙も各寺に用意されている。7寺すべてを巡り、色紙が完成するとその場で破魔矢をいただける趣向も面白い。
●御朱印色紙700円、御朱印代1カ所300円。御朱印対応時間帯は寺ごとに異なる。
山梨県笛吹市石和町各所
☎055-263-0893(同事務局/蓮朝寺)
大窪いやしの杜公園
春に開花する稀少な水芭蕉が清流に群生
木々に囲まれた閑静な公園を訪ねると、すぐに見えてくるのが藤垈(ふじぬた)の滝。自然の滝のような荒々しい風情には欠けるが、湧水が8本の筧(かけい)を通して静かに流れ落ちる様子に心が癒やされる。ゆるやかな起伏のある園内には80体の野外彫刻が点在しており、それぞれの造形を見て回るのも面白い。遊歩道が整備された清流ゾーンでは、新潟県旧中条町から譲り受けた水芭蕉の群落が、例年3月下旬に開花の見ごろを迎える。
駅なかワインサーバー
旅の締めにもフラリと立ち寄りたくなる
JR石和温泉駅に併設された観光案内所内にあり、市内にあるワイナリー10社のワイン16種(赤・白・ロゼ)をその場で有料試飲できる。ワインの銘柄は時季により入れ替わるが、25cc100円から50cc500円まで選択肢は幅広い。なお観光案内所でのワイン販売は取り扱っていないので、お気に入りが見つかったらワイナリーや酒販店に足を運んで購入を。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2021年4月号より