アクセス
鉄道:JR東京駅から東北新幹線・JR水戸線・真岡鐵道で約2時間の真岡駅下車。秋葉原駅からつくばエクスプレス・関東鉄道常総線・真岡鐵道利用も可。
車:東北自動車道川口JCTから同道・北関東自動車道を利用し、真岡ICまで約102km。同ICから真岡市中心部まで約5km。
手紡ぎ・手織りならではの風合いに心和む『真岡木綿会館』
絹のような肌ざわりが評判を呼び、江戸期に隆盛を誇った真岡木綿。一度は産業として途絶えたが、真岡商工会議所が中心となり、昔ながらの手作業を守りながら見事に復興した。風合い豊かな木綿製品を扱う売店と、見学・体験が可能な工房があり、機(はた)織りなどの体験は営業日3日前までの予約制。
日本一のいちごのまち
「いちご王国栃木の首都もおか」を宣言
いちご収穫量・生産額日本一を誇る真岡市。冬季に晴れる日が多いなど、気候に恵まれた市内には400戸以上の農家があり、とちあいか・とちおとめ・スカイベリー・ミルキーベリーなど甘さや硬さの異なる品種を栽培している。いちご狩りを楽しめる農園も市内各所に点在しており、丹精込めて育てられた完熟いちごを心ゆくまで味わえる。
日本の都市公園100選「井頭(いがしら)公園」
自然豊かで広大な公園で、ボート池を囲むように散策路が巡っている。各種運動施設、多様な植物園、釣り池などが点在し、周回するのに便利な貸自転車も用意。利用時間・料金は施設ごとに異なる。
ご当地グルメへの心意気が伝わる珍メニューを提供『文珍楼(ぶんちんろう)』
地元客に愛される町中華だが、気になるのはいちごメニューの数々。白米に刻んだいちごを混ぜて炊いたいちご飯(めし)のチャーハンや天津飯のほか、いちごチョコラーメンやいちご飯バーガーも開発。夏期は削りいちご冷やし中華に替わる。
落ち着いた空間でゆったり過ごせる『喫茶ロクガツ』
白い壁と本棚に並ぶ書籍や雑誌が目を引く喫茶店。ブレンドコーヒー580円、チャイ680円などのドリンクメニューに加え、煮込みハンバーグや自家製スモークチキンのグラタンなどフードメニューも提供。手づくりのデザートも要チェックだ。ワンドリンク制。
県有形文化財指定の歴史的建造物『岡部記念館 金鈴(きんれい)荘』
明治中期、真岡木綿問屋として栄えた岡部呉服店の別荘として、十余年を費やして建てられた木造建築物。『真岡木綿会館』裏手にあり、贅(ぜい)を尽くした室内、北関東では珍しいなまこ壁、庭園など見どころも多い。
石蔵が立ち並ぶ観光文化の拠点『久保記念観光文化交流館』
地域の発展に尽力した美術評論家・久保貞次郎を輩出した旧家・久保家の邸宅を市が譲り受け、観光文化の拠点として新たに整備。市登録文化財の久保記念館をはじめ、美術品展示館・観光物産館・イタリアンレストランが、往時の風情を残しながら立ち並んでいる。
珈琲スタンドを併設した登山道具のアトリエ兼店舗『NRUC NEST(ヌルクネスト)』
全国各地に熱烈なファンを擁する登山道具のガレージブランドNruc。真岡駅近くの石蔵にミシンが居並ぶアトリエを構え、すぐ脇にオリジナル商品を並べた店舗を併設している。「単に軽さだけを追求するのではなく、山での使い勝手を考え、機能として必要なものは残すなど差別化しています」と代表の井上真(しん)さん。その姿勢はバックパックから気の利いた小物類、ウエア、調理道具などのギアに至るまで一貫している。一角に「ZUKKOKE COFFEE」なるスペースを設けているのは、「遠くから来た方が、買い物がてらゆっくりしていってほしい」との思いからだ。
懐かしき蒸気機関車やレトロな客車を展示『SLキューロク館』
C12形蒸気機関車がけん引する「SLもおか号」(2026年度末まで検査のため運休)が走る真岡鐵道。その中核である真岡駅横にあり、9600形とD51形のSLを展示。運転台の様子を間近にでき、土・日・祝は圧縮空気で動くSLの勇姿も見られる(運休日あり)。
職人の遊び心から生まれた上生菓子『御菓子司 紅谷三宅(べにやみやけ)』
「和菓子をもっと面白く、楽しいものにしたい」と語る2代目店主で1級和菓子技能士の三宅正晃さん。たしかな技に裏打ちされた週替わりの癒(いや)しの練り切り540~800円は、従来の花鳥風月に加え、動物たちの愛くるしい表情がたまらない。
スイーツやドリンク、市内循環バスのデザインまで「いちご」
真岡市に関心を抱いたのは、いつだったか踏切待ちの際に通りかかった真岡鐵道の車両側面に「いちご日本一もおか」と記されているのを見かけたのがきっかけである。栃木県がいちごの一大生産地であることは知っていたが、真岡市が収穫量・生産額とも日本一であるとは、このときまで知らなかった。どうせ訪れるならいちごの収穫時期にと企み、いざ足を運ぶと、お目当ての完熟いちごはもちろんのこと、スイーツやドリンク、さらには市内循環バスのデザインに至るまでいちごだらけで、「さすがは日本一」とうならされた。
そんななか、妙に気になったのが『文珍楼』のいちご飯チャーハンで、どんな味なのか想像がつかない。テーブルに運ばれてきたチャーハンをレンゲで口に運んだところ、まさしく未知との遭遇といった味わいで、居合わせた地元客が誰も注文していないのもうなずける。「いちごを使ったご当地グルメをと頼まれ、もう10年以上作っているけど、実はオレも微妙でさぁ」と店主の白川文夫さんも苦笑いだ。それでも全国各地からこの味を目当てに訪れる客が後を絶たないというから、地域に貢献していることは間違いないだろう。
真岡でしか出合えない魅惑のスポットを探訪
もう一つ、真岡市で気になっていたのが、真岡駅や『SLキューロク館』からすぐの場所にある『NRUC NEST』の存在だ。数年前、東京で開催されたアウトドアギアのイベントでたまたま目にし、購入した「Nruc」ブランドの小物のデザインと機能性にすっかり感心。いずれ機会があれば現地を訪れたいと前々から考えていたからである。
何語か不明なブランド名にはきっと強い思いが込められているのだろうと、代表の井上真さんに由来を尋ねると、「肩肘張らずに、“ぬるく”山に触れましょうとの考えで思いついた造語なんですよ」との意外な答えにズッコケそうになった。店舗で改めて手にした商品には、井上さんのそんなスタンスを反映した細かいギミックが散りばめられており、ユーザーも遊び心をくすぐられることだろう。
お気に入りのギアを手に入れ、旅を締めくくるのも悪くないが、ここにしかない逸品があると教わったのが『御菓子司 紅谷三宅』だ。ぱっと見、これぞ正統派の和菓子屋さんといった趣きだが、本格的な和菓子に混じり、動物をモチーフにした練り切りが、つぶらな瞳でこちらを見ているではないか。「基本に忠実でありながら、どうしたら今の若い方にも和菓子に興味を持ってもらえるかを考えて商品化したところ、いきなり評判になりまして」と三宅正晃さん。シニア予備軍の私ですらメロメロになるかわいさで、口にするのがはばかられるほど。なんとも悩ましいお土産である。
【耳よりTOPIC】日本一の高さを誇るえびす様に感服
本殿・拝殿・幣殿が国重要文化財に指定されている大前(おおさき)神社。その若宮社として1989年に建立されたのが大前恵比寿神社で、高さ20mのえびす様が参拝者を笑顔で出迎える。金運招福・商売繁盛の御利益もあらたか。
●御水取り拝観料500円。拝観時間9:00~16:00(4~10月は~17:00)。栃木県真岡市東郷943 ☎0285-84-2200
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2026年3月号より







