“新丸子にはあの店があるから、自分も何か始めたい” そんな存在に

寿印が製作したオリジナルの張り子。スケボーだるま3万8500円(左)、干支張子2万4200円はFACE OKAがデザイン。
寿印が製作したオリジナルの張り子。スケボーだるま3万8500円(左)、干支張子2万4200円はFACE OKAがデザイン。
新丸子ライター495円、GARBAGE 6PANEL CAP9900円。
新丸子ライター495円、GARBAGE 6PANEL CAP9900円。

時しらずの市之瀬智博さん。

服好きが聞けばピンと来る名前で、以前ユナイテッドアローズの一事業として代官山にあったメンズセレクトショップ「時しらず」のディレクターだった人だ。時が経ち、2021年。市之瀬さんはユナイテッドアローズから商標権を取得し、新たに立ち上げた自分の店を『tokishirazu』と命名した。どうして、新天地は新丸子だったんですか?

「時代性にとらわれず、自分が本当にこれだと思えるもの、テーマに共感してくれる人を呼ぶには、郊外しかないと思いました」

商品は、以前のようにブランドごと揃えるのではなく、スウェットならここ、Tシャツならここと、アイテム単位で目利きをして選ぶようになった。雑貨やアートブックなど、洋服以外のものも大幅に増やしている。おすすめを聞くと、店名の焼き印を入れた木製のマルチボードを手に取る市之瀬さん。製作者は、ファッション誌でスタイリストとして活躍していた岡部文彦さんだ。

マルチボード「刈moku(カルモク)」6600円。
マルチボード「刈moku(カルモク)」6600円。

「彼、同い年なんです。担い手が少ないから自分が林業を始めるって、3年くらい前に地元の岩手に帰って。それで、うちの4周年に合わせて作ってもらったんです」

もともとは取るに足らない端材。でも、手を加えられ、こうして並べられると使い道を考えたくなる。お菓子を乗せるとか?「時計を置くという方もいました。穴を開けてお香を立てるとか」なんて、市之瀬さんと話すのも楽しい。

それから、椅子で休憩しながらアートを眺めるひととき。クラフトビールも販売していて、ここで飲んだっていい。最近、界隈にも面白い店が増えつつある。

壁面はアートスペースに。アートブックも並ぶ。
壁面はアートスペースに。アートブックも並ぶ。

「去年、『10匣(テンボックス)』ってブランドのディレクターをしているPiguくんが、立ち飲み屋の『夢であえたら』を始めてくれて、僕もよく行くんです。“新丸子にはあの店があるから、自分もそこで何か始めたい”って思ってもらえるような、そんな存在になろうって、二人でよく話をしてます」

もうすぐこの街が、ムーブメントの発信地になる予感がする。

住所:神奈川県川崎市中原区新丸子東1-841-2/営業時間:14:00~19:00(土・日は12:00~)/定休日:不定/アクセス:東急電鉄東横線・目黒線新丸子駅から徒歩4分

取材・文=信藤舞子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年4月号より