八街飛行場跡
数奇な運命をたどった蒼空の駿馬のふるさと
戦時中、新司偵こと陸軍一〇〇式司令部偵察機の練習部隊が八街に置かれた。村境を越え富里にも及んでいた飛行場は戦後開墾されたが、1965年には新東京国際空港予定地に内定。その後空港建設の代替地となり転入者を受け入れるなど時代に翻弄された。当時の地図と照合すると、碑に面した道が南でカーブするあたりが滑走路端のようだ。
●千葉県富里市十倉四区
稲荷山昌福寺
江戸時代後期の高僧ゆかりの禅刹
曹洞宗の寺。21世の大中京璨(きょうさん)和尚(1806~1871)は、仏教史に名を残す高僧。後に東京帝国大学印度哲学科最初の講師になった仏教学者の原坦山(1819~1892)が、旃檀林で講義をしていた際に論破され、出家したという逸話がある。境内には応永33年(1426)の銘がある美しい宝篋印塔も。扁額とセットでどうぞ。
新橋(にっぱし)観音堂
歴史ある馬の里に立つ、富里最古の馬頭観音
水田の広がる谷津を望んでポツンと立つ。元々、伽藍の一つだったが明治の終わりに寺は合併で消え、18世紀前期の建築といわれる観音堂だけが残された。傍らの石造物群は市文化財。延享元年(1744)の銘がある市内最古の馬頭観音をはじめ、首なし地蔵や板碑をじっくり観賞したい。変わった読みの「新橋」は、平安時代の古文書に出ている古い地名。
●拝観自由。千葉県富里市新橋809
熊野神社
参道左に連なる不思議な小山、その実体は古墳
大同4年(809)に紀州熊野の本宮大社(2020年5月号参照)より勧請されたといわれる古社。住宅が立ち並ぶ丘陵に鎮座する。拝殿に向かって左手の社叢(しゃそう)に、古墳として築かれた小山がいくつかあり、それぞれ子安神社、金毘羅神社、三峰神社、疱瘡神社の祠が載っている。形で残る古いものが少ない富里では抜群に古い史跡だ。
●境内自由。日吉台4-615
富里香取神社
ユニークなスイカの御朱印と御守、絵馬
経津主大神(ふつぬしのおおみかみ)を祀る富里の鎮守。御朱印帳や絵馬、御守など特産のスイカをモチーフにしたオリジナルの授与品が揃う。黒西瓜・西瓜御朱印帳(御朱印込)各1500円。御朱印300円~、西瓜御守700円、西瓜絵馬500円。季節感あふれる月詣限定の御朱印や、毎月1日・15日限定のスイカの皮目と実の部分をモチーフにした御朱印(当面自粛)も楽しみ。
富里のすいかまつり
富里特産のスイカをたっぷりと楽しむ
40年以上続くイベントで、例年約1万5000人が訪れる。スイカにちなんだイベントが盛りだくさんで、なかでも無料の試食コーナーは大人気。形の美しさから食味、糖度の高さを競う「すいか共進会」が前日にあり、そこで出品されたスイカも即売される。
●例年6月第3日曜9:00~14:30開催。千葉県富里市七栄652-1富里市役所 ☎0476-93-4943(千葉県富里市農政課)
富里スイカロードレース大会
“給スイカ所”で有名な富里ならではのレース
2019年に36回を数え、毎年ニュースでもよく報じられる富里の定番イベント。高低差が少ないのどかな田園地帯にコースが設定され、総勢1万人が参加するほどの人気。給水所ならぬ「給スイカ所」、ゴール後の「スイカコーナー」で心ゆくまでスイカを堪能できる。来年こそ、甘くておいしい富里スイカで喉を潤しながら走りたい。
●例年6月第3日曜開催(エントリーは2月中旬)。
紅葉山 七栄稲荷神社
明治維新後、江戸の武士などが最初に入植したエリアに立つ。江戸城内の紅葉山にあった稲荷社から勧請した神社で、昨年遷座150年を迎えた。門前には当初娼楼(しょうろう)が並び短い間だが栄えたという。埼玉県から入植した地区の武州稲荷神社(十倉296-1)など各地区に神社があり、神頼みしたくなる原野開墾の厳しさが偲ばれる。
●境内自由。千葉県富里市七栄326-2
JA富里市産直センター1号店(旬菜館)
スイカを買うなら産地直送のJA直営店へ。毎朝、安全・安心な野菜や肉、卵をはじめ、弁当や総菜が地域の生産者から届けられ、富里の農畜産物を使った加工品「ふるさと産品」も揃う。「とみちゃんピーナッツバターサブレ」648円〜。ニンジンも特産で「にんじんドレッシング」530円、「フルーツ&キャロット」105円など。
スイカ柄ガスタンク
2020年の秋で見納めの、富里名物超巨大スイカ
スイカ柄のペイントを施した直径30mほどの球形ガスタンク。正式名を「千葉ガス富里供給所」という。ネットで真上からの航空写真をみると不思議なオブジェ感が半端ない。地元の要望から実現したもので、20年にわたり富里のシンボルとして君臨。残念ながら2020年10月に解体予定なので見学はお早めに。
●周辺道路や「富里第二工業団地第二公園」などから外観のみ見学可。千葉県富里市中沢269
取材・文・撮影=飯田則夫