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旅の手帖 2026年5月号
旅の手帖 2026年5月号
古来、日本の大動脈である東海道と中山道。その旧街道に目を向けてみれば、歴史の記憶を刻むスポットがあちこちに。気ままで楽しい街道歩きに出かけよう。特集2は、さわやかな初夏の風が気持ちいい那須。連続テレビ小説『風、薫る』主人公のモチーフとなった大関和の出身地、黒羽地区も案内!

今回歩いたコースはこちら!

[中山道 下諏訪宿]
今回歩いた距離・所要時間●約8.5km・約2時間(休憩などは含まない)
出発駅へのアクセス●JR中央本線下諏訪駅下車

外歩きが気持ちのいいシーズン。いざ、街道歩きを始めようと思っても、どんな服装で行けばいい? どんな持ち物が必要? ちょっとした疑問は多い。快適に歩くための準備やコツ、街道用語を知れば、もっと楽しい街道歩きに。
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参勤交代の諸大名や旅人も連泊で楽しんだという「下諏訪宿」

町じゅうのあちこちに手湯や足湯があり、湧き水に見える水場も触ってみると温泉! 下諏訪は古くから湯治場として知られ、諏訪大社下社の参拝客も温泉で身を清める過ごし方が根づいていたそう。参勤交代の諸大名や旅人もここでの滞在を楽しみにしていたに違いない。

下諏訪宿で身分の高い人々が滞在した『本陣 岩波家』には、各藩が入口に掲げる関札が多く残る。

「川が渡れないときなど“連泊”の意味で使われる“萬”の文字が書かれた関札がいくつもあるんです。川が近くにない場所で連泊は珍しい。おそらく温泉をゆっくり楽しむためではないでしょうか」と、28代目当主の岩波太佐衛門(だざえもん)尚宏さんが教えてくれた。

体の中からぽかぽかして「あぁ癒やされる~」。
体の中からぽかぽかして「あぁ癒やされる~」。
観光案内所『しもすわ今昔館 おいでや』の足湯(上)や日帰り入浴施設『遊泉ハウス児湯(こゆ)』の手湯のほか、足湯や手湯が点在。手ぬぐいやタオルを忘れずに。
観光案内所『しもすわ今昔館 おいでや』の足湯(上)や日帰り入浴施設『遊泉ハウス児湯(こゆ)』の手湯のほか、足湯や手湯が点在。手ぬぐいやタオルを忘れずに。
諏訪明神の女神が湯を含ませた綿から湧いたと伝わる「綿の湯」は手湯が楽しめる。近くにある「遊泉ハウス児湯」は綿の湯が源泉。不浄な者が触ると湯が濁るとか。お試しを!
諏訪明神の女神が湯を含ませた綿から湧いたと伝わる「綿の湯」は手湯が楽しめる。近くにある「遊泉ハウス児湯」は綿の湯が源泉。不浄な者が触ると湯が濁るとか。お試しを!

諏訪大社 下社秋宮の向かいに立つ『二十四節氣 神楽(にじゅうしせっきかぐら)』では、中山道の佐久と下諏訪の間で振る舞われていたという能平汁(のっぺいじる)をアレンジした信州能平汁が味わえる。

おともは江戸時代のファストフードといわれたおむすび! 軽く焼いた香ばしさと信州味噌ベースの七福味噌の素朴な旨味で体の中からじんわり満たされる。

時間があれば、中山道を北に向かって御柱祭が行われる木落し坂へ。まるで崖のような急斜面から巨木が落とされるとは信じがたい。少し離れたところに武田信玄の隠し湯として知られる『毒沢鉱泉 神乃湯』があるので、下諏訪宿に戻る前に温泉でひと息つくのもおすすめだ。

下諏訪のお土産ではずせないのは、明治6年(1873)創業の『新鶴(しんつる)本店』の塩羊羹。諏訪大社下社の参拝客や旅人の口伝えで評判が広まったとか。

耐火レンガのかまどに楢(なら)の薪をくべた火で、職人が手作業で練り上げるという作り方は創業時と一切変わらない。「もうひと切れ食べたくなる味を目指しています」とは、6代目の河西正憲さん。その言葉どおり、小豆の風味が上品でスッと消えるような繊細な甘みが素晴らしい。

木落し坂を過ぎ、下諏訪宿に向かう途中で諏訪湖が現れる。
木落し坂を過ぎ、下諏訪宿に向かう途中で諏訪湖が現れる。
中山道沿いには、むかしの旅籠や茶屋を活用したお店がちらほら。
中山道沿いには、むかしの旅籠や茶屋を活用したお店がちらほら。

そしていま注目なのが、2018年に新体制に生まれ変わった『諏訪御湖鶴(みこつる)酒造』。稼働3年目に、食事に寄り添う味を追求した「純米吟醸山恵錦(さんけいにしき)」がロンドンのワイン品評会の日本酒部門で世界一位に! 「いつか世界のレストランで御湖鶴のお酒を楽しめるようになりたいですね」と杜氏・竹内重彦さんの夢は広がる。

中山道の風情を感じられるだけでなく、諏訪大社下社の歴史にもふれ、温泉もめぐれるといいことづくし。中山道の一歩はここに決まり!

『本陣 岩波家』当主が守り続ける江戸時代の面影

600個以上の庭石を用いた優美で大胆な庭園は、中山道随一と称えられた。外柱がなく、まるで一枚の屏風絵のよう。
600個以上の庭石を用いた優美で大胆な庭園は、中山道随一と称えられた。外柱がなく、まるで一枚の屏風絵のよう。
青森から鹿児島まですべての大名が訪れ、所有する関札は500枚以上。
青森から鹿児島まですべての大名が訪れ、所有する関札は500枚以上。
28代目当主の岩波さんが解説することも。
28代目当主の岩波さんが解説することも。

下諏訪宿で本陣問屋を務めた岩波家。28代目当主の岩波太佐衛門尚宏さんが住みながら維持管理を行っている。玉座の間から眺める庭園も当時のまま。200年以上前も、公家や大名が同じ景色を眺めていたと思うと感慨深い。

☎0266-28-7055
10:00~16:00、水休
800円
長野県下諏訪町横町3492イ-1
JR中央本線下諏訪駅から徒歩10分

「諏訪大社 下社秋宮」青銅製で日本最大といわれる狛犬が圧巻

中山道と甲州道中の合流地点という交通の要所にあり、古来町の中心地としてにぎわった。江戸中期の名匠・立川和四郎富棟(たてかわわしろうとみむね)による、繊細かつダイナミックな幣拝殿の彫刻が見事。下諏訪宿の旅籠が近く、手水舎は温泉!

☎0266-27-8035
境内自由(授与所は8:30~17:00)
長野県下諏訪町5828
JR中央本線下諏訪駅から徒歩10分

「諏訪大社 下社春宮」技を競い安永9年(1780)に造営

半年に一度遷座祭が行われ、2月1日から7月31日までは農耕を見守るため春宮に御霊代(みたましろ)がある。幣拝殿の彫刻は秋宮と同じ図柄だが、地元の宮大工・柴宮長左衛門が手がけ、半額の予算で1年早く仕上げた。

☎0266-27-8316
境内自由(授与所は8:30~16:30)
長野県下諏訪町193
JR中央本線下諏訪駅から徒歩15分

『二十四節氣 神楽』滋味深い和の味わいで信州の旬にふれる

おむすび2個が付いた神楽御膳(上)1540円。信州能平汁はカツオや昆布ににぼしの出汁が効いたしっかり味で、旬の野菜がたっぷり。
おむすび2個が付いた神楽御膳(上)1540円。信州能平汁はカツオや昆布ににぼしの出汁が効いたしっかり味で、旬の野菜がたっぷり。
信州のリンゴや味噌などをブレンドした、オリジナルの七福味噌864円をお土産に。まろやかな白とピリッと辛い赤の2種。
信州のリンゴや味噌などをブレンドした、オリジナルの七福味噌864円をお土産に。まろやかな白とピリッと辛い赤の2種。

東京で割烹料理の経験を積んだ店主・武居章彦さんが営む和食の店。「生まれ育った下諏訪を再び盛り上げたい」と、長野の食材を使って中山道にちなんだ信州能平汁を考案した。五平餅、鰻の白焼きも人気。

☎0266-78-8868
11:30~14:00(金曜は11:30~14:00)・18:00~22:00(ディナーは要予約、一日1組4~8名利用のみ)、水休
長野県下諏訪町立町3571
JR中央本線下諏訪駅から徒歩11分

『新鶴本店』素材も作り方も創業時から変わらない

求肥(ぎゅうひ)で包まれた雪平や、スポンジでくるまれた黄色の茶袱紗(ちゃぶくさ)も餡が上品な甘さ。
求肥(ぎゅうひ)で包まれた雪平や、スポンジでくるまれた黄色の茶袱紗(ちゃぶくさ)も餡が上品な甘さ。
築150年以上の建物や店内の棚、漆の箱など随所から歴史を感じる。
築150年以上の建物や店内の棚、漆の箱など随所から歴史を感じる。

代々伝わる「変えないための努力を惜しまない」という教えを守り、作り方や材料は変えず、塩羊羹には希少な長野県産の角寒天にこだわる。寒天や小豆の一体感やなめらかさには、薪の火を使いこなす技術も不可欠!

☎0266-27-8620
9:00~17:30、水休
長野県下諏訪町木の下3501
JR中央本線下諏訪駅から徒歩12分

『諏訪御湖鶴酒造場』自由な発想で“心ときめく”日本酒を

試飲はメニューの中からお酒を3種選べるセット1000円や単品もOK。
試飲はメニューの中からお酒を3種選べるセット1000円や単品もOK。
セミナーでは酒蔵内部をガラス越しに見ながら説明を聞く。
セミナーでは酒蔵内部をガラス越しに見ながら説明を聞く。

廃業の危機から2018年に復活を果たした下諏訪町唯一の酒蔵。伝統技術と現代の情報通信技術を融合させた最先端の酒造りを行っている。直営ショップで酒やグッズの販売のほか、試飲やセミナーも開催。

☎0266-75-1172
10:00~16:30(試飲は~16:00LO)、水休
酒造セミナーは金~日・祝の10:30~・14:00~(金は午後のみ、開催日は一部例外あり。所要30分程度)。
350円(1団体2〜10名、前日までに要予約)
長野県下諏訪町3205-17
JR中央本線下諏訪駅から徒歩7分

『毒沢鉱泉 神乃湯』神々の力に導かれた温泉へ

源泉は無色だが、加温すると鉄分が酸化して茶色に変化する。
源泉は無色だが、加温すると鉄分が酸化して茶色に変化する。
「やわらかいお湯で体の芯から温まります」と4代目の小口富明さん。
「やわらかいお湯で体の芯から温まります」と4代目の小口富明さん。

神様のお告げで病気の子どもを入浴させたところ病が治ったことが開業のきっかけ。森に囲まれ「神乃湯」の雰囲気が漂う。12度の源泉は飲泉可能で貧血や消化器官によいとされ、やさしいレモン果汁のような味で飲みやすい。

☎0266-27-5526
1泊2食1万3000円~
10:00~14:00、不定休(営業日はホームページまたは電話で要確認)。1000円
14室
泉質/含鉄(Ⅱ)-アルミニウム-硫酸塩冷鉱泉
長野県下諏訪町社7083
JR中央本線下諏訪駅から車10分

下諏訪温泉 公衆浴場めぐり

現在も毎分5100L以上が湧き、一般家庭に引かれているほど湯量が豊富。レトロな『菅野温泉』、地元民が通う『矢木温泉』など4軒の公衆浴場のほか、日帰り入浴ができる宿も。全部入っていたら1日じゃ足りない!

菅野温泉
☎0266-27-1076
JR中央本線下諏訪駅から徒歩6分

矢木温泉
☎0266-28-3232
JR中央本線下諏訪駅から徒歩8分

菅野(すげの)温泉(写真=窪田真一)。
菅野(すげの)温泉(写真=窪田真一)。
矢木温泉(写真=窪田真一)。
矢木温泉(写真=窪田真一)。
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取材・文=井島加恵 撮影=yOU(河﨑夕子)
『旅の手帖』2026年5月号より

老舗が守り抜く“不変の美”と現代的な感性が生み出す“新たな価値”。伝統と革新が静かに響き合う奈良井宿の過去と未来の物語をひもといていく。
─木曽路はすべて山の中(島崎藤村『夜明け前』より)山峡の道を踏みしめて歩けば、かつての旅の景色が立ち上がる。見どころ多い二つの宿場町を結ぶ、木曽路の街道歩きへ。
中山道の醒井宿は日本橋から数えて61番目の宿場だ。本陣や旅籠などが中山道と地蔵川を挟んで並んでいた。地蔵川近くには湧水もあり、その清流は梅花藻(ばいかも)の群生地としても知られる。
歩く、歩く、ひたすら歩く。江戸時代の旅は体力勝負だから常にエネルギー補給が求められた。そう考えると、サッと食べられて体力が回復でき、腹もちもいい餅や団子はうってつけ。街道沿いの茶屋の名物になったことも納得できる。