産地の個性を1杯のコーヒーに映す新しい体験
柏駅南口を出て、右側の階段を降りると商店街がある。その中でひときわ目を引くのは『ease coffee kashiwa』だ。
白を基調にした空間に足を踏み入れると、まず目に入るのは整然と並ぶボトルやタイル、そしてラボのような空気感。だが、この店の魅力は見た目の洗練だけではなく、その1杯にどこまで産地の個性を映し出せるか、という強い思いに支えられている。
東武鉄道東武アーバンパークライン高柳駅近くにある本店は焙煎所を兼ねており、2026年3月にオープンした柏店では、より“産地の個性”にフォーカスしたラインアップをそろえている。
コーヒーはスペシャルラインとデイリーラインに分かれ、日常的に楽しめるものから、より高品質なロットまで幅広い。ただし、どの豆にも共通しているのは、流行として浅煎りにしているのではなく、その豆の個性がいちばん引き出される焙煎を選んでいることだ。
もっとも、この店はコーヒーに詳しい人だけの場所ではない。初めて訪れる人にも、香りや好みから一緒に選ぶ接客を大切にし、アロマから感覚的に選ぶこともできる。代表の関口勝久さんは「無理やり理解しようとしなくていいんです。もっと気軽に『こんなのあるんだ』くらいで楽しんでもらえればいい」と話す。
難しさよりも、まずはおいしさや驚きから入ってほしいという姿勢が、この店の印象をやさしくしている。
果実味がリンクする、ルワンダのコーヒーとレモンケーキ
店頭には、日常的に楽しめるデイリーラインと、より高品質なスペシャルラインのコーヒーが並ぶ。本店とは少しラインアップが異なり、柏店では産地の個性をより感じやすい浅めの焙煎を中心にそろえている。
メニューの中から選んだのは、ルワンダ800円。「果実味があり、ベリーやチョコを思わせるニュアンスもありますよ」と、関口さんからのアドバイスを受け、コーヒーに合いそうなレモンケーキ630円もオーダーした。
普段飲んでいるコーヒーとは、香りの段階から違いがはっきりわかる。
ほんのり果実味を感じる甘酸っぱいルワンダと、シンプルなパウンドケーキにのったレモンアイシングがよく合う。コーヒーとレモン、それぞれの果実味が自然に引き合っていた。
この店の核にあるのは、トレーサビリティとサステナブルという考え方だ。関口さんたちは、生産国に足を運び、生産者と直接コミュニケーションを取りながら豆を買い付けている。それはただ特別なことをしたいからではなく、今のコーヒー生産の現場に危機感があるからだ。
コーヒーには、搾取的な構造の歴史もある。だからこそ、よくわからないまま仕入れるのではなく「自分たちで見て、判断し、責任を持って買いたい」という。
その考えは、店頭の見せ方にも表れている。『ease coffee kashiwa』では、提供するコーヒーとともに豆が採れた農園の情報が書かれたカードが添えられている。そこには産地名だけでなく、生産者の名前をきちんと記している。
「誰々のコーヒーが今年も来たね、みたいな楽しみ方をしてもらえたら」と話す関口さん。
そんなコメントからもコーヒーをただの飲み物ではなく、人と人をつなぐものとして捉えていることが伝わってくる。サステナブルという理念だけでなく、1杯のコーヒーに込められた想いが店頭に落とし込まれている。
コーヒーで“カッコイイ柏”を盛り上げたい
さらに印象的だったのは、関口さんが柏という街に強い思いを持っていることだ。柏は生まれ育った場所であり、「かっこいいお姉さん、お兄さんがいる街」というイメージとともに育ってきたという。
だからこそ、「この街をもっと良くしたいし、柏のコーヒーシーンを盛り上げたい」と関口さん。実際に、系列から独立して店を持つ人も現れ、県内のコーヒー店とのつながりも広がっている。
その一端となるのは、主催するバリスタの抽出技術を競う大会『Chiba Brewers Cup』。柏だけでなく千葉全体のコーヒー文化を押し上げたいという思いも隠さない。
産地に向き合うまっすぐな姿勢、それを象徴するような白を基調にした空間、そして柏の街への愛着。『ease coffee kashiwa』は、それらをコーヒーに込めようとしている店だった。ここで味わうコーヒーは、単に“おしゃれなカフェ”ではない。どこで、誰が、どんな思いで作ったのか。その背景にまで思いを巡らせたくなる、新しいコーヒー体験が柏で始まっている。
取材・文・撮影=パンチ広沢






