イタリアンがメインの店に2024年に加わったグルメバーガー
どこかのんびりした雰囲気のある高円寺あづま通り商店会を歩いていると、ふっと目につく地下に続く階段。アルファベットの「S」をデザインしたストリートアートと、ネオン管でデザインされた『SUBSTANCE』の文字が地下のお店への興味をそそる。
2025年にはこの階段付近で、高円寺が舞台のテレビドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のロケが行われた。ファンなら「あ、あのシーンの!」とピンとくるかもしれない。
『SUBSTANCE』は、オーナーの中山真一郎(なかやましんいちろう)さんが、すぐ近くで営んでいたショットバーに代わる店として2019年に開いた。カウンターメインのショットバーから、地下に広い空間を持つことになり、シェフのいるイタリアンレストランのような業態に変更。オープンから5年ほどは、イタリアンをベースにした食事とお酒が飲める店としてディナー時間帯だけの営業だった。
転機が訪れたのは、2024年6月のことだ。縁あって長年グルメバーガーの店で調理を担当してきたハンバーガー職人が『SUBSTANCE』に加わり、メニューにハンバーガーを含めた。同時に、それまでやっていなかったランチタイムの営業を開始したことで、お店に新しい側面が生まれたのだ。
現在ランチはハンバーガーとサンドイッチがメインで、ディナーは毎月がらっと変わるイタリアンのメニューにハンバーガーも食べられるという欲張りなラインアップ。特にランチとしてハンバーガーやサンドイッチを目当てに訪れる人が増え、週末になると入店待ちができる時間帯も増えてきた。もちろん今も、深夜を過ぎても食事ができることは変わらない。特に深い時間帯は、銀座や新宿などの飲食店で働く食のプロたちが仕事帰りにやってくる。
デミグラスソースと自家製マヨネーズが決め手のサブスタンスバーガー
ハンバーガーのおすすめは、店名を冠したサブスタンスバーガー。100%ビーフのパティに、ベーコン、チーズ、両面焼きの目玉焼き、レタスにトマト、玉ねぎを重ねたヴィジュアルは、まるでグルメバーガーのお手本のよう。
バンズは、数々のグルメバーガー店のバンズを手がけることで有名な新宿『峰屋』から仕入れている。粗めに挽いたビーフ100%パティには深みのあるデミグラスソースを合わせ、自家製のほんのり甘いマヨネーズが全体の味をまとめている。
ボリュームたっぷりのハンバーガーは、豪快に食べるのが基本。大抵の場合は、下の方から口に入るのではないだろうか。しっかりとトーストした『峰屋』のバンズに挟まれたサブスタンスバーガーは、最初のひと口でバンズとパティとデミグラスソースの味が口の中で一体となる。
そして目玉焼きのプリっとした食感とチェダーチーズのコク、厚みのあるベーコンのうまみなど、ボリューム感ある具材は、口に入れるたびに気分が上がる。上部に重ねられたシャキシャキしたレタスや玉ねぎ、トマトなど野菜が、ひと口に混ざり始めると、徐々に口の中がさっぱり。おおよそ食べ終わると、バーガー袋の中に自家製マヨネーズやデミグラスソースが残っていて、サイドオーダーしたフレンチフライをディップして食べたくなる。
中山さんは「うちのバーガーは、ボリュームはあるけれど、しつこさがないので食べやすいんですよ」と話してくれたが、その言葉の通りだ。肉や卵といった食べ応えのある素材と新鮮な野菜や、さっぱりした酸味のピクルスとのバランスがいい。満足感と後味のよさが印象的なハンバーガーだ。
ちなみにハンバーガー用の肉は、夜のメニューとは別の精肉店から仕入れているそう。「同じ名称の肉なのに、どうも仕上がりの味が違うんですよ」と中山さん。手間は増えたが、わずかな違いが『SUBSTANCE』の味を支えている。
アーティストが壁に直接描いた、ここだけの地下空間
『SUBSTANCE』は、カウンターやテーブル席、ソファ席など40席前後をゆったりと配置した広い空間も魅力。そして、壁にたくさんのアートが描かれていることも独特の雰囲気を作っている。壁にはアーティストが直接描いたダイナミックな作品から、額入りの作品まで飾られており、まるでギャラリーのようだ。
実はオーナーの中山さんには飲食店経営とは別の顔もあり、海外のストリートアーティストが日本で活動するときのサポートを手がけている。当然来日するアーティストたちは『SUBSTANCE』を訪れる。そのときお店の壁に直接アートを描いているのだ。
この地下にあるアーバンな雰囲気の空間とボリュームあるハンバーガー、イタリアンのメニューに豊富なお酒は、外国人客にも人気がある。
「ハンバーガーを取り入れたのは、イタリアンを手がける夜のスタッフと味やアイデアを融合したメニューができたら、店としておもしろいだろうと考えたからです」と中山さん。
中山さんが店のオーナーとして大事にしているのは、スタッフが働きやすく、やりたいことを実現できるお店であること。特に若いスタッフがその表現力を発揮することを期待しているそう。
アートに囲まれた空間でハンバーガーやイタリアンの料理を食べながら、お店に満ちたエネルギーを体感してほしい。
取材・文・撮影=野崎さおり






