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復活した温泉天国で文化に浸り、ひとっ風呂

熱海駅を出ると、目の前に「家康の湯」と名づけられた足湯があり、温泉街に来たなぁと実感する。10年以上前になるが、熱海の衰退が話題となり、閉鎖したビルやホテルが廃墟のように立っていた。そんな話はいまはむかし。駅前の平和通り商店街や仲見世通り商店街は人波であふれ、行列をつくっている店も少なくない。熱海が復活したのだ。

高々と湯を噴き上げる熱海七湯の一つ、大湯間欠泉。
高々と湯を噴き上げる熱海七湯の一つ、大湯間欠泉。

まずはひとっ風呂。熱海は源泉数500を超える温泉天国。立ち寄り湯も数あるが、駅から少し離れた『山田湯』へ向かうことにした。

敷地内で湧出したことで始まった銭湯は路地の先の先にあり、「最初は何度も迷って探して」と地元客が苦笑するほどの隠れっぷり。かけ流しが魅力の通好みの風呂で、モザイクタイルや柄ガラスなどの昭和風情と、やわらかな湯、そして小さな湯船を譲り合いながら浸かる情景になごむ。

熱海は海に面して山が迫る狭い斜面が特徴で、いわゆる坂の街だ。徳川家康が愛し、文化人たちも通った湯治場。彼らの舌をうならせてきた味や文化もまた、色濃く残っている。

駅前には足湯もある。
駅前には足湯もある。

熱海銀座商店街にある『宝亭』は昭和22年(1947)創業。カレーにソースを添える昭和スタイルが懐かしい。変わらぬ味のようでいて「レシピはブラッシュアップしています」と、2代目の長島一俊さん。

市役所近くの路地にもれる音に誘われたのは『ジャズ喫茶ゆしま』。混沌としたアートな風情、膨大なレコード・CDコレクションとJBL改造スピーカーの織りなす音が魅惑的。いまなお、名のあるアーティストたちがこっそり立ち寄っていくという。

夜さんぽの楽しみは地元の人とのふれあい

熱海のお土産といえば干物を選ぶ人も多いが、そんなときは、熱海銀座商店街の坂の上にある『魚竹』へ。店頭に並ぶ地魚の天日干しが目印だ。「最近は乾燥機が主流ですが、干物はやっぱり風と太陽じゃないと旨味が閉じ込められません」と、3代目の田村直次さん。地魚の煮付けも名物だ。

土曜なら、熱海魚市場の夜市に出かけてみよう。地元商店が机を並べるコンパクトな市だが、商品を並べた先からどんどん売れていく。夜市が終わる19時30分頃になると、仲間の店の総菜を肴に店主たちの酒盛りが始まる。のぞき込めば、「入りなよ」の声に誘われ、甘酒や味噌汁をごちそうになった。

熱海銀座商店街にはミカンの自販機がある。
熱海銀座商店街にはミカンの自販機がある。

熱海にはかつて“赤線”と呼ばれた遊郭街があった。凝った意匠の鄙びた建物はスナックやバーに変貌したが、いまもネオンを点し続けている。

意を決して『スナック 亜』の扉を開けば、老若男女の地元客が集う熱海情報の集積地だった。ママがほかの客との会話の橋渡しをしてくれるのが心地よく、時間が経つのも忘れて飲む手が止まらない。楽しかった余韻を胸に、宿へ戻る足取りも軽い。

ヨットハーバー越しに海を望む熱海親水公園。
ヨットハーバー越しに海を望む熱海親水公園。
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『山田湯』熱海に残る最後の温泉銭湯

入口にかかる木製看板の文字は山田さんの手書き。「暖簾だけだとわかりにくいから」と話す。
入口にかかる木製看板の文字は山田さんの手書き。「暖簾だけだとわかりにくいから」と話す。

路地に青と赤の暖簾が下がる。たくさんあった熱海の銭湯も、最後の一軒になった。番台を守るのは3代目の山田松子さん。「温泉が肌をコーティングしてほかほかになる」と話す当人の肌もスベスベ。

☎0557-81-9635
8:00~11:00・15:30~21:00、不定休。300円
泉質/カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
静岡県熱海市和田町3-9
東海道新幹線熱海駅からバス11分の熱海所記念病院前下車、徒歩2分

『亀山社中』蒸したての串刺し温泉まんじゅう

かわいいひと口サイズのおちょぼ口3連串まん1本200円。
かわいいひと口サイズのおちょぼ口3連串まん1本200円。

昭和46年(1971)創業の製菓卸が立ち上げた新ブランド。小ぶりの温泉まんじゅうを串刺しにしたもので、食べ歩きにちょうどいい。蜜たっぷりのみたらし団子250円もおすすめ。

☎090-2425-8310
10:00~17:00、不定休
静岡県熱海市田原本町4-6
東海道新幹線熱海駅から徒歩2分

『魚竹』地魚の干物や燻製はすべて自家製・天日干し

アジの干物は10枚1100円程度と安い。
アジの干物は10枚1100円程度と安い。
カワハギの肝煮、サザエやカキの燻製などは酒の肴に。
カワハギの肝煮、サザエやカキの燻製などは酒の肴に。

熱海・網代(あじろ)漁港で仕入れた新鮮な魚介を、その日のうちに天日干し。干物もみりん干しも旨味凝縮の逸品ぞろい。キンメダイやサバ、イワシなどの煮付けも各種そろう。

☎0557-81-3792
9:00~17:00、水と月1回火休
静岡県熱海市上宿町4-3
東海道新幹線熱海駅から徒歩13分

『スナック 亜』元遊郭の建物が醸すレトロな雰囲気

アーチを描く棚や群青色の壁が素敵。
アーチを描く棚や群青色の壁が素敵。
かつての歓楽街に立つ建物も風情がある。
かつての歓楽街に立つ建物も風情がある。

元遊郭の建物で、昭和53年(1978)創業。ウッディな化粧壁がカーブを描く艶やかな空間に往時が偲ばれる。カラオケがなく、地元出身の2代目ママと落ち着いて会話を楽しめる。

☎0557-82-3451
20:00~翌1:00、不定休。
チャージ1000円
静岡県熱海市中央町6-4
東海道新幹線熱海駅から徒歩16分

『宝亭』懐かしいけど新しいレトロカレーの進化

カツカレー1150円とクリームソーダ600円。
カツカレー1150円とクリームソーダ600円。
店を継ぐ長島一俊さん・遼さん親子。
店を継ぐ長島一俊さん・遼さん親子。

昭和55年(1980)に改築したという建物は、高い天井や溶岩の坪庭などが独特の雰囲気をつくる。名物のカツカレーは、蒸してから炒めたタマネギが甘みとコクを生んでいる。

☎0557-82-3111
11:00~15:00LO、木休
静岡県熱海市銀座町5-10
東海道新幹線熱海駅から徒歩13分

『ジャズ喫茶ゆしま』マスターが描いたアートにも注目

コーヒー500円。
コーヒー500円。
小学生の頃からジャズを聴いていたというオーナーの土屋さん。
小学生の頃からジャズを聴いていたというオーナーの土屋さん。

昭和27年(1952)創業以来、バンドマンの溜まり場となり、ソニー・ロリンズをはじめ、名だたるプレーヤーも来店している。JBL改造スピーカーで鳴らす音はライブ感たっぷり。

☎0557-81-4704
12:00~17:00頃、日・月・火休
静岡県熱海市中央町5-9
東海道新幹線熱海駅から徒歩16分

「土曜夜市」熱海の夜は買い物も楽しみ。閉店後は飲み会に……

開店直後は新鮮で安い商品を求めて争奪戦になる。
開店直後は新鮮で安い商品を求めて争奪戦になる。
夜市の閉店後はウクレレ演奏をBGMに酒を楽しめることも。
夜市の閉店後はウクレレ演奏をBGMに酒を楽しめることも。

熱海魚市場で土曜限定で開かれる市。出店は4~5店と小規模ながら、新鮮な刺身はもとより、地魚のアラなど魚市場ならではの商品も。青果、豆乳、味噌玉など、地元の味覚も勢ぞろい。

☎0557-81-3695
土曜の17:00頃~19:30
静岡県熱海市清水町8-8
東海道新幹線熱海駅から徒歩18分

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熱海温泉街のひとり泊OK宿

『ホテルニューアカオ』

目の前は名勝・錦ヶ浦。海に溶け込むような露天風呂をはじめ、趣の異なる3つの大浴場がある。

☎0557-83-6161
1泊2食1万9750円~
日帰り入浴は13:00~18:00、無休。2500円~
350室
泉質/ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
静岡県熱海市熱海1993-250
東海道新幹線熱海駅からバス10分の錦ヶ浦下車、徒歩4分(送迎あり)

『ブリーズベイシーサイドリゾート熱海』

客室から海を一望。展望風呂のほか、無料貸切風呂がある。大浴場工事中(2026年8月末までの予定)は貸切風呂24時間営業。食事は和洋バイキング。

☎0557-85-0280
1泊2食1万7800円~
36室
泉質/弱アルカリ性単純温泉
静岡県熱海市海光町7-79
東海道新幹線熱海駅から徒歩20分(送迎あり、要予約)

『熱海風雅(ふうが)』

幻想的な意匠の大浴場のほか、女性専用岩盤浴、海一望の客室、ハーフビュッフェも好評。

☎0570-003-141
1泊2食1万6850円~
40室
泉質/カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉
静岡県熱海市梅園町16-8
東海道新幹線熱海駅から車10分(JR伊東線来宮駅から送迎あり、要予約)

編集・制作=アド・グリーン
旅の手帖MOOK『温泉ひとり旅』より

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