富士㐂 荻窪
ちょっと奮発!超極厚とんかつのボリュームを体験せよ
使用するのは茨城産「瑞穂のいも豚」。やわらかく、脂の融点が低いため、口の中で溶けるような食感が楽しめる。とんかつにベストマッチの豚肉だ。オーダーが入ってから、肉を切り分け、中挽きの生パン粉をつけ、揚げ油に入れる。生で見ても大迫力の豚肉は、低温でじっくり15分ほど揚げてから、少しの間休ませ余熱で火を通す。揚げ時間は肉の厚さや気温によっても変化するため、職人の腕が試される瞬間だ。
まずは何も付けず、このままいただこう。揚げたてでさっくり。この厚みにもかかわらず、難なく噛み切れ、ジューシーで甘い脂が溢れ出てきた。下味の塩コショウのみでも十分なおいしさにびっくり。野菜をていねいに煮詰めた自家製ソースはとろりとしていて絶妙な甘辛さ。キャベツとともに食べると、シャキシャキサクサクじゅわーのハーモニーが最高だ。とんかつのは通常の厚さも選べるが、ここは奮発してぜひ極厚を選びたい。昼は定食、夜はビールとともに楽しみたい迫力満点メニューだ。
『富士㐂 荻窪』店舗詳細
本むら庵 荻窪本店
石臼碾きの自家製粉そばにこだわり続ける老舗の風格
おいしいそばのための必須条件「三たて」とは、「碾(ひ)きたて」「打ちたて」「ゆでたて」のことで、「碾きたて」のそば粉を管理することは難しい。その「碾きたて」に強いこだわりを持つ、荻窪の老舗が『本むら庵 荻窪本店』だ。玄そばという、殻のついた状態のそばの実を18℃の低温倉庫で保存することで極力劣化を防ぎ、独自の石臼で毎日自家製粉している。
今回は、とくに評判の高い天せいろをいただいた。その日の天気によってもつなぎの割合を変え、丁寧に手打ちされたそばは、香りがとても強い。そば粉を荒碾きにしているのも理由の一つだろう。きりっと冷えたコシの強いそばに、雑味のない辛めのつゆがよく合う。喉ごしもよく、歯ごたえも十分だ。
敷地内の和風庭園や盆栽など、店内にいるだけで四季を感じる。旬を大切にする心遣いが老舗ならでは。現在にとどまることなく、さらなる高みを目指す。そんな風格が十分に感じられる名店だ。
『本むら庵 荻窪本店』店舗詳細
そば処 せきば
味も香りもよい、本格手打ちそばを堪能!
店主が選びぬいたそば粉は国内の契約栽培農家の畑で穫れたもの。そば本来の甘味と香りが違う。打ちたての味を守り、気軽においしいそばを食べてほしい、という思いで毎日そばを打つ。つゆに使う鰹節も、使う分だけを店内で削る。化学調味料を一切使わず、吟味した素材でつゆを作る。「自分の舌しか信じない」という関場さんの強い信念だ。
冷たい辛味大根そばは適度な冷たさ。そばは冷やしすぎると味がわからなくなってしまうため、冷やしすぎないのがポイントだ。一口たぐると、しっかりとコシがあり、なめらかなそばに大根おろしの辛さがいいアクセントになっている。つゆは鰹節の風味を強く感じる。甘めのそばに辛めのつゆのバランスがとてもよく、また辛味大根が混ざることで、後をひくおいしさとなっていた。そば湯も提供されるので、辛味大根の入ったつゆを楽しめる。
『そば処 せきば』店舗詳細
取材・文・撮影=ミヤウチマサコ