町中華が新規で開店するのは珍しいと思う
町中華の店主が若いと、ついつい「お父さんから継いだのかな」などと思ってしまう。ところが意外にも『中華屋 啓ちゃん』は、店主の幸田さんが一から作った店だ。連日通うほど好きだった中野の中華屋で修業した後、2011年に自身の地元である荻窪で開店した。
オープンから間もなく、炒飯、餃子など、正統派の町中華の店として評判に。中でも、プリプリで肉厚のキクラゲとふんわりと卵を炒めた木耳玉子650円が店の名物だ。この日も狭い店内にはお客さんがひっきりなしで、テイクアウトやデリバリーなどの利用も多かった。人気店だと肌で感じる。
カレー好きが高じて思わず開店した「カレー屋3時まで」
どういった経緯でカレーを出すことになったのか尋ねると、「ここの2階でカレー屋もやってたんですよ」とのこと。
実は幸田さん、店の2階でバー「Bar Soar」の経営もしていて、さらにバーを閉めている日中の時間を利用して「カレー屋3時まで」という店もやっていた。タフすぎる……。現在は閉店したこの店のカレーが『中華屋 啓ちゃん』のカレーの原点。2年ほど試行錯誤しながら、ほぼ今の味にたどり着いたそうだ。
味わい深い、本格派スパイシーカレー。だけど、それだけじゃない
それではいよいよ、いただいてみよう。
2種類のカレーソースをベースにどっしりした重さのあるルーに、玉ねぎが溶け込んでいる。具は豚ひき肉のみ。スパイスの豊かな香りが食欲をそそる。口に含めば、きりっと辛くてスパイシー、その奥の甘さも十分だ。福神漬けで舌を休ませながら、汗をかきかき食べる爽快感! たっぷり楽しめる量も魅力だ。
しかし、ただの本格派カレーとはちょっと違う、どことなく懐かしいような……と思い、隠し味を聞いてみた。
コーヒーやトマトジュース、そしてカルピス。へぇー、ちょっと変わってるかも。しかし、それだけではなかった。続いて出てきたのが、紅生姜の汁に中華スープ。なるほど! 中華と本格カレーの融合が独特の深みを出していたのか。
“町中華”とは、カレーでもなんでもアリのフリースタイル。その中で幸田さんは、アイディアを実行する楽しさに溢れ、まだまだやりたいことがたくさんありそうだ。これからもぜひ自由型で、縦横無尽に泳ぎ回って欲しい。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ