束の間、時を止めて静かさを味わう『珈琲屋まめは』【つくば】
約1000坪の敷地に築150年以上の農家建築が並ぶつくば文化郷。「元々は農家の住まいでした。私が子供の頃には、陶芸家や写真家、母のアトリエも入っていました。手伝いに行くたび、母屋の喫茶室で作家がくつろぐ姿を子供心にかっこいいと思ったものです」と、『珈琲屋まめは』の店主・岡谷沙織さん。門の両側に長屋を配する長屋門は、江戸時代の武家屋敷の流れを汲む建築様式で、その一室に『珈琲屋まめは』がある。歴史の厚みに思いをはせながら静けさに身を委ねれば、ゆらりと立ち上るコーヒーの香りと和菓子の滋味に促され、自然と自分に還る。
『珈琲屋まめは』店舗詳細
草花みたいに朗らかな笑顔がこぼれる『prisme.』【みらい平】
花のアーチをくぐると馥郁(ふくいく)とした香りに包まれ、童話に迷い込んだような気持ちになる。「ガーデニングが趣味の母のもと庭を見て育ちました」という店主の星えみさんが手塩にかけた庭は、草花がのびのびと枝葉を広げ、木漏れ日が心地良い。テラス席で会話に花を咲かせる人々が頬張っているシフォンパルフェは、なめらかなホイップクリームとキメの細かいシフォンケーキが口の中でふわっと溶け合い、思わずうっとり。普段使いする地元客も多く、かつて大学で研究者を目指していた星さんと気が合うのか「近隣に住む学校の先生がお話をしに来てくれることも」。
『prisme.』店舗詳細
侘び寂びの趣と華のある甘味の競演『茶房 香』【平和台】
『京料理 かねき』の店内で『茶房 香』を始めたのは「昔からの常連さんに、年齢を重ねても気軽に利用してほしいから」。店主の渡邉昭一郎さんが考案した甘味のレシピには、どれも京料理の技術が生かされている。茶碗蒸しの要領で蒸すながれやまプリンは、柔らかいが絶妙に食感が感じられ、地元の万上本みりんとしょうゆで作るカラメルは、みりんの甘みが余韻となって鼻腔を舞う。数寄屋造りの侘び寂びとコントラストを成す、ゆるやかに広がる甘み。食後にサービスの焼き菓子とお茶があるのも、ゆっくりしていってと言われているようでうれしい。
『茶房 香』店舗詳細
誰もが思い思いに羽を休めるとまり木『千年一日珈琲焙煎所CAFE』【つくば】
『千年一日珈琲焙煎所』の姉妹店。以前はここに焙煎所があったが、「オーナーが就労支援を始めるにあたって雇用を増やそうと、約200m先に場所を移してこちらはカフェにしたんです」と店長の土田元気さん。壁を抜いたり、カウンターを立てたり、自分たちで店内の改装をしたが、「奥に謎の死角ができました(笑)」。しかしその「謎」のおかげで空間に表情が生まれ、いろんな景色が見える。店内はギャラリーも兼ね、展示によって席の配置を変えるのだとか。作品と向き合いランチを食べていると、日常と非日常の境目が曖昧になっていく。
『千年一日珈琲焙煎所CAFE』店舗詳細
温もりいっぱいのもう一つの居場所『kiss a CLOVER』【みどりの】
紅茶を柱に、スコーンやヴィクトリアケーキなど、それに合うイギリスのお菓子を用意。店主の森田真紀子さんは開業前、本場のレシピをもとに試行錯誤を重ねてレパートリーを増やしたという。ミルクティーは「イギリス人の常連さんが『good color(日本のものより色が濃い)』と喜んでくれます」。常連同士が仲良くなることもしばしばで「カフェというより集会所のよう。みんなのサードプレイスになりたい」とはにかむ。畑で採れたフルーツをお裾分けしてくれる人もいて「それでお菓子を作るから原価計算は度外視」。おなかが満たされ、心もぽっと温まる。
『kiss a CLOVER』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2026年7月号より





