風格漂う築95年の銭湯建築で憩う『レボン快哉湯』[入谷]
「老朽化した銭湯を町に開かれた場にしたい」。オーナーの思いを形にしたのは、なじみ客だった建築会社代表だ。耐震補強を施した浴室のオフィス奥で、故・早川絵師による富士山がそびえ立つ。カフェ空間は脱衣場。「風呂上がりの味をイメージしました」とマネジャーの多田さんが推す自家製アイスクリームは、小田原の芳醇な農場直送果実と自家焙煎コーヒーのペアリングに心がとろける。
『レボン快哉湯』店舗詳細
スタイリッシュにそば屋の記憶を紡ぐ『229』[新御徒町]
郷愁と現代が混在する引き戸を開ければ、内外のアートブックがずらり。「自由に手に取ってください。販売もしてます」とは、美容師兼店主の嶋田聡史さんだ。“たまたま”出合った物件は地下に井戸と打ち場を備えた昭和期のそば屋。「その痕跡を残したい」と、意匠をあえて残してリノベ。スタイリッシュなキッチンにはスパイスが並び、カレーやドリンク、スイーツに多用。その芳香もたまらない。
『229』店舗詳細
魚屋時代の名残は天井に渡る太い梁『コーヒー店 ジァン』[入谷]
戦前から寺社に納めていた魚屋が戦後に移転。「親類に木曽の材木王がいて、木曽ヒノキを梁(はり)に使ったんです」と、店主の小林貞三さん。その後、喫茶開店、一時休店を経て2013年に再開。居間との仕切り煉瓦(れんが)壁を取り払ったことでウッディーさが際立ち、レースカーテンが窓辺に映える。まろやかなコーヒーの供には、チーズ、マヨ、リンゴジャムの3種から選べる自家製パンを。おやつにうってつけ。
『コーヒー店 ジァン』店舗詳細
戦前の銅板建築長屋でほっこり一服『珈琲ヒロカワ』[湯島]
植栽に埋もれた格子の引き戸の向こうは小さいけれど落ち着く空間。築90年余の長屋の一軒で、「以前は土間だったのよ」と店主の廣川蝶子さん。「建物が和でしょ、洋は似合わないから」と、手作り座布団を敷き、常連客のクラフトアート、切り紙のメニューを飾り、花も絶やさない。なんだか親類宅を訪れた気分だ。加えて、気温や常連客の好みに合わせてコーヒーを淹れてくれる、その心遣いにもほっこり。
『珈琲ヒロカワ』店舗詳細
焙煎工場に新設した空間で一杯を『カフェテラスコーヒー 工場&カフェ』[新御徒町]
1957年の創設以来、ホテルなどに卸す焙煎工場には、ドイツのプロバット社製が威風堂々と鎮座する。「世界最高の焙煎機です」と誇る代表の森田一さんは2017年、名機を眺めて味わえるカフェを新設。イチゴのように甘酸っぱい希少コーヒーやブレンドの改良を工夫し続けるアイスコーヒー500円、トルコ、ベトナムなど、コーヒーを飲みに旅した世界各地のコーヒー文化も紹介。足繁(しげ)く通いたくなる。
『カフェテラスコーヒー 工場&カフェ』店舗詳細
/定休日:土・日・祝/アクセス:つくばエクスプレス・地下鉄大江戸線新御徒町駅から徒歩2分
老舗2階に誕生した唯一無二のサロン『ヨコオカフェ』[稲荷町]
『横尾双輪館』は大正14年(1925)創業のプロ用自転車店だが、2022年、ウエア・パーツ販売フロアを改装。飾られたヴィンテージバイクがクールだ。「地域の人が集う場に」と、3代目の横尾亘さんは焙煎士にブレンドを特注。深みがあるのにスッキリした後味で、コーヒー目当ての客が後を絶たない。野菜ソムリエの妻・未来さん手製のシフォンケーキも舌触りなめらかで素朴な甘み。クセになる。
『ヨコオカフェ』店舗詳細
取材・文=林さゆり 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2023年7月号より