冨久晴
戦後創業、セピア色の佇まいに酔う
創業は1949年。コの字カウンターは夕方から常連で埋まっていき、注文のメモはカウンター裏にチョークで書くという、正しき大衆酒場。「品書きや仕入れ先までじいちゃんの代からほとんど変えてません」と3代目の青木武さん。看板は毎朝芝浦の市場から届くモツを焼く、もつ焼き各140円。初代から注ぎ足しのタレで焼くレバもうまいが、出色は辛味噌で味わうナンコツたたき。ナンコツのコリコリ感とパンチのある味噌味がホッピーを誘引!
煮込 千成本店
黒光りの梁の下、とろとろ牛モツで一献
会津若松の築100年以上の古民家を移築し、店を始めて早や半世紀。歴史の重ね着が、山手線駅前とは思えない味のある雰囲気を醸しだす。店の顔は芝浦の市場から仕入れた朝じめ牛モツがたっぷりの煮込み。「脂を蓄えたいい牛モツだから丁寧にアクをとるの」とは昼過ぎから鍋番をする女将の財津千代子さん。同じく朝じめのモツを使うもつ焼き各120円で杯を重ねたら、シメはまかないから生まれたうにスパゲッティ1380円で決まり!
KUSHIKOMA 井こし
地酒がグイグイ進む、創作つまみの数々
店主の井越克徳(かつのり)さんは、地酒好きが集う大塚の名店『串駒』から2003年に独立。常時20種以上揃う日本酒の多くが、旨味ののった純米や純吟だ。「火入れしていないフレッシュな生酒が好きなんです」。肴がまた、イシリ(イカの魚醤)を使った焼さばのサラダ600円(税別)やお新香の玉子焼き500円(税別)など、地酒を加速させるものばかり。「料理人歴も日本酒歴ももう40年(笑)。どの食材の組み合わせが日本酒に合うかは大体心得ているつもりです」。
駒露地
おしどり夫婦と多彩な酒肴に憩うひととき
取材当日、黒板にはうなぎ串313円やねぎとろとアボカド豆腐518円など50種近くの品書きがずらり。「仕入れ先の千住の魚河岸で食材を見てると、あれもこれも食べてほしいって浮かんできて。妻にはほどほどにねって言われますが(笑)」と店主の高橋義明さん。奥さんの志乃吹さんがおもに選んだ地酒も20種近くあり、杯を重ねていると隣で常連がひとこと。「この店は、朗らかな奥さんと寡黙で真面目なご主人の人柄が一番の魅力だね」。(2018.02月取材時点)
鳥晶 巣鴨本店
大ぶりの串で、火入れの妙を堪能
客の目当ては朝締めの阿久津の紅ふじ鶏を使った焼鳥。「新鮮で肉のハリがあり、おいしいんです」と店主・木下智晶さん。ゆえにレバー150円やささみ200円はミディアムレアで供され、官能的な食感。つくねやねぎま各200円は、最初巣鴨にしては強気な値付けと思ったが――ピンポン玉サイズのジューシーなつくねや大ぶりでプリッとしたねぎまのうまさに、むしろ安いと納得。火・金はちょうちん、水・土はさえずり各250円など希少部位も!
立呑みひろし
駒込のんべえの人間交差点
長髪のマスター、佐藤ひろしさん、春美ママとカウンターで話すおじさんたちに交じり、若い女性客もちらほら。「ふたりは懐が深いから、話の相手もしてくれるし、ほっといてもくれるから居心地よくて」と皆勤賞の常連さん。お酒もつまみも大体400円以下。柿ピーやオニオンスライス各150円など簡単なものもあれば、豚肉とナスのオイル焼き350円など手の込んだ料理もあり、軽く飲みに来たつもりがつい食べすぎてしまうお客も。
三番倉庫
熟練マスターの所作に酔う、街の老舗バー
大塚にバーを構えて40年以上のマスター、吉村利治さんは生粋の大塚っ子。「もともと祖父が大塚で三孫酒場という酒屋をやってて、僕が3男だったからこの店名にしたんです」。洋酒は200種近く揃い、なかでもウイスキーはアイラ島のものや瓶詰め工場が独自の樽で熟成させるボトラーズウイスキーなど、約110種と圧巻の品揃え。「生のザクロの果汁を使ったジャックローズなど、季節のフレッシュフルーツカクテルも女性に好評ですよ」。
構成=フラップネクスト 取材・文=鈴木健太 撮影=丸毛 透、 山出高士
『散歩の達人』2017年2月号より