ありそうでないつまみが酒を包み込む『大槻』

濃厚ではなくさらりとした味わいに仕上げた四川麻婆豆腐980円は、爽快な辛さが際立つ一品。やさしいタッチの「天穏」850円(正一合)の燗酒とともに、ずっと飲み続けられる組み合わせ。
濃厚ではなくさらりとした味わいに仕上げた四川麻婆豆腐980円は、爽快な辛さが際立つ一品。やさしいタッチの「天穏」850円(正一合)の燗酒とともに、ずっと飲み続けられる組み合わせ。

「天穏」のにごり燗に合わせてくれたのが、意外にも麻婆豆腐。でも、試して納得。コチュジャンや石臼でひいたという山椒の爽やかな後引く辛みを、酒のやわやわした甘みがそっとくるむ。パンチのある強さとやさしさの絶妙なコントラストは、斬新なのにホッと安心する相性だった。「麻婆豆腐はライスに合うので、にごり酒も同じ感覚です(笑)。日本酒は、小手先でこねくり回した料理よりも、シンプルなおいしさがあるつまみが合うし落ち着きます」と店主の大槻俊也さん。ありそうでなかった〝麻婆ライス酒〞、きっとハマってしまいますよ。

店主の大槻さん。
店主の大槻さん。

『大槻』店舗詳細

住所:武蔵野市吉祥寺北1-10-22/営業時間:18:00~24:00LO/定休日:月・火/アクセス:JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩7分

タイ料理と日本酒は合う!『ラコタ』

仕込中の1枚。
仕込中の1枚。

「タイ料理と日本酒は合うって、ずっと思ってたんです」。料理長の池田香奈子さんはうれしそうに語る。「民宿とおの どぶろく水もと仕込」は、天然の乳酸菌と住み着き酵母で醸造。シュワッと拡散するほのかな酸味や甘みと、インパクトの強いタイ料理の辛味が寄せては返す、その応酬が癖になる。ぜひとも、ナンプラーやナッツ、干しエビなどの材料をひとつの鉢に入れ、潰しながら和えたりんごのソムタムと一緒にどうぞ。

りんごのソムタム650円には『民宿とおの』の、どぶ酢を使用。
りんごのソムタム650円には『民宿とおの』の、どぶ酢を使用。

『ラコタ』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-22-10寿々木ビル1F/営業時間:11:30~14:30・17:30~23:00(土は15:00~翌3:00、日は15:00~23:00)/定休日:不定(ランチは月・火、祝の場合は営業)/アクセス:JR中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩3分

フレッシュな生酒をフィーチャー『日本酒庵 吟の杜』

常時約50~80種を用意!
常時約50~80種を用意!

2014年2月に登場。店主・中川一彦さんは日本酒好きが高じ、「日本酒が盛り上がっている地がいい」と吉祥寺に店を構えた。日本酒は日ごとのおすすめ25種をラインナップ。常時約50~80種を用意し、希望すれば未開封の瓶を口開けしてもらうこともできる。扱う8割がフレッシュな味が特徴の生酒なのは、あまり酒に強くなかった中川さん自身が「おいしく飲めた」から。「初挑戦の方におすすめできるものを取り揃えています!」。

「風の森」「町田酒造」「鍋島」。
「風の森」「町田酒造」「鍋島」。
鮮魚と〆ものを組み合わせた刺し身は8種盛1人前1320円、写真は2人前。
鮮魚と〆ものを組み合わせた刺し身は8種盛1人前1320円、写真は2人前。

『日本酒庵 吟の杜』店舗詳細

住所:武蔵野市吉祥寺本町1-8-14 六鳴館B1/営業時間:11:30~ 14:00LO・17:00~ 23:30LO/定休日:無/アクセス:JR 中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩3分

通年で燗酒を供する『にほん酒や』

猪のモモ肉のソテー手製ウスターソースかけ1900円。添えた赤玉ネギのアチャールと相性、絶妙! サワラ酢締めの炙りなど、刺し身3種盛り1300円。日本酒750円(150ml)~。
猪のモモ肉のソテー手製ウスターソースかけ1900円。添えた赤玉ネギのアチャールと相性、絶妙! サワラ酢締めの炙りなど、刺し身3種盛り1300円。日本酒750円(150ml)~。

冬のみならず、通年で主に燗酒を供する。「お燗だと次の日の体が楽ですし、温かい料理にもよく合う。なにより気持ちよく飲めて、お風呂に入ってるみたいにほどける、と表現する人もいます」。銘柄は、店主・高谷謙一さんがこれと決めた5種。無濾過、かつ熟成したものが多く、燗を付けたときの味わいの開き方が見事。スパイスを巧みに使った一品や熟成で旨味を引き出した刺し身、猟師から届くジビエなど、技ありの料理にも膝を打つ。

オープンキッチンの店内。
オープンキッチンの店内。

『にほん酒や』店舗詳細

住所:武蔵野市吉祥寺本町2-7-13 レディーバードビル1F/営業時間:17:00(土・日・祝13時)~23:00LO/定休日:木/アクセス:JR 中央線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩6分

割烹で培った和食の無限の進化に挑戦!『福郎』

雲仙ハムのハムカツ ゴルゴンゾーラチーズソース780円、ホタテと菜の花のおひたし630円。日本酒1合990円~。
雲仙ハムのハムカツ ゴルゴンゾーラチーズソース780円、ホタテと菜の花のおひたし630円。日本酒1合990円~。

割烹料理店の板前や、フレンチでの修業経験もある店主の牧野大輔さん。基本は刺し身や煮魚といった王道の和食が中心だが、魚介出汁にオリーブオイルを加えておひたしをまろやかに仕上げたり、薬膳を合わせたり、新しい提案にも積極的だ。看板メニューの福郎丼に付く茶漬け用のスープは、フレンチの魚介出汁・フュメドポワソン! ワインと和食の相性を探るバータイムも企画中。

福郎丼いくらのせ1400円。
福郎丼いくらのせ1400円。
店主の牧野さんは海外で和食店の立ち上げも経験し、和食の魅力を再認識。
店主の牧野さんは海外で和食店の立ち上げも経験し、和食の魅力を再認識。
日本酒は料理になじむ上品な味わいが多いが、旨味系や熟成酒もあるので気軽に相談を。店主を含む3名が酒師です。
日本酒は料理になじむ上品な味わいが多いが、旨味系や熟成酒もあるので気軽に相談を。店主を含む3名が酒師です。

『福郎』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町2-9-10/営業時間:11:30~14:30LO・17:00~21:00LO・バータイム22:00~翌3:00(予定)/定休日:無/アクセス:JR中央線・京王電鉄井の頭線吉祥寺駅から徒歩3分

日本酒大好き夫婦の幅広い品揃えが自慢『IZAKAYA kon』

グリンピースのコロッケ880円、ゆり根まんじゅう600円、苺とせり、マッシュルームのサラダ880円。「遊穂」1合1200円~。
グリンピースのコロッケ880円、ゆり根まんじゅう600円、苺とせり、マッシュルームのサラダ880円。「遊穂」1合1200円~。

日本酒は夫婦二人で仕入れを担当。店主の荻原裕貴さんが燗酒や熟成酒、むぎよさんが華やかな冷酒というそれぞれの好みが反映された50種類以上が揃う。保管にもこだわり、5~6℃と10℃の冷蔵庫のほか、-4℃の氷温庫も! 料理は、旬の食材を生かした和食が中心。そこにマリネやコロッケなど遊び心を加えた洋テイストもあるが、どれも日本酒に合うようシンプルに仕上げられている。

カウンターのほか、ファミリーにもうれしい広々とした小上がり席やテーブル席も。
カウンターのほか、ファミリーにもうれしい広々とした小上がり席やテーブル席も。
むぎよさんの影響で裕貴さんも日本酒好きに。燗酒と冷酒の両方に自信あり。
むぎよさんの影響で裕貴さんも日本酒好きに。燗酒と冷酒の両方に自信あり。

『IZAKAYA kon』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-13-6 クローチェ吉祥寺3F/営業時間:17:00~22:00LO(土は12:00~23:00、日・祝は12:00~21:00)/定休日:水/アクセス:JR中央線・京王電鉄井の頭線吉祥寺駅から徒歩5分

センスあふれる空間と居酒屋の安心感が共存『MIYAUCHI』

開店時から人気の牛すじ大根600円とアボカドサラダ700円。焼酎20種以上、ワインや日本酒、サワーも。
開店時から人気の牛すじ大根600円とアボカドサラダ700円。焼酎20種以上、ワインや日本酒、サワーも。

イタリアンのような外観で、店内もミッドセンチュリーを思わせる粋なインテリア。しかしメニューを開くと、予想とは正反対のまさに居酒屋のラインナップなのだ。和洋中が揃い、モツ煮やアジフライのほか、グラタンや炒飯も。「テーマを作ると料理の幅が狭くなるだけ。おいしかったら何でもいいでしょ」と笑う店主の宮内映志さん。食べれば納得。しかも500円前後が中心の安さにも驚きだ。

雰囲気を邪魔しないBGMも最高。
雰囲気を邪魔しないBGMも最高。
近隣のお店をまわって安くていい食材を探すという宮内さん。ファミレス感覚で気軽にどうぞ。
近隣のお店をまわって安くていい食材を探すという宮内さん。ファミレス感覚で気軽にどうぞ。

『MIYAUCHI』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町2-4-6 田中フラット1F/営業時間:17:00~22:00LO/定休日:不定/アクセス:JR中央線・京王電鉄井の頭線吉祥寺駅から徒歩2分

ワインも旨い!

旬の野菜を軸にした食材の組み合わせが見事『vineria harvest』

ホワイトアスパラのソテー 桜エビのタルタル1800円、桜マスと春野菜のカルパッチョ1600円。基本2人分だが1人分(写真)にも調整可能(2022年4月時点のメニューと価格)。
ホワイトアスパラのソテー 桜エビのタルタル1800円、桜マスと春野菜のカルパッチョ1600円。基本2人分だが1人分(写真)にも調整可能(2022年4月時点のメニューと価格)。

「山形からおまかせで届く野菜を見て何を作るか考えるんです」とは店主の鎌倉竜也さん。ホワイトアスパラにタルタルは定番だけど、桜エビとナンプラーを合わせてひとひねり。外食が好きであちこちで蓄積されたアイデアを取り入れているそう。「たくさん召し上がる方が多いです」とは妻でソムリエの芙美さん。ツボを押さえたワインのセレクトで、さらにあれもこれも食べたくなるのだ。

グリンピースのスパゲットーニ1800円(2022年4月時点のメニューと価格)。
グリンピースのスパゲットーニ1800円(2022年4月時点のメニューと価格)。
カウンター席がメイン。
カウンター席がメイン。
2人とも長野県出身で最近は地元食材にも積極的。6品のお任せコースもおすすめです。
2人とも長野県出身で最近は地元食材にも積極的。6品のお任せコースもおすすめです。

『vineria harvest』店舗詳細

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-10-2 田中ビルB1/営業時間:18:00~22:00LO/定休日:火(不定あり)/アクセス:JR中央線・京王電鉄井の頭線吉祥寺駅から徒歩3分

取材・文=井島加恵、沼由美子、山内聖子、信藤舞子 撮影=加藤熊三、井原淳一、オカダタカオ、山出高士

住みたい街のランキングで常に上位に入る吉祥寺。ファッションやカルチャーが栄え、商店街や公園などもあり老若男女を問わず住みやすさは抜群。そんな街には、普段使いに適した食の店がずらり。ほかほかごはんにおかずをワンバウンドして頬張るひとときは、昼も夜も私たちを元気にしてくれる。飲食店のひしめく吉祥寺でも、定食のやさしさは変わらない。毎日でも通いたい、定食が食べられる店を紹介しよう。
最新のスポットや古くから続く商店街、ノスタルジーを感じる飲み屋街など、さまざま表情がある吉祥寺。学生たち御用達のガッツリとしたラーメンから、優しさを感じる味わいのラーメンなど、ラーメン通をうならせる名店が点在する激戦区。どの店を選んでいいか迷ってしまうほどだ。
カフェ激戦区と言えるほど多くのカフェで溢れる吉祥寺では、ビルの階段を上がった先や商店街の地下など、街のあちらこちらで個性豊かなカフェを見つけることができる。コーヒーや紅茶の香りに導かれ、お気に入りの場所を見つけてみよう。
心癒される井の頭公園に活気のある商店街、探究心をくすぐる裏路地……。お散歩好きならワクワク必至の吉祥寺には、パンの名店もたくさんあるのをご存知でしょうか。オーナーのこだわりがつまった個性的なパンとの出合いを求め、もっと歩きたくなること間違いなし。焼きたての香りに誘われて、さっそく行ってみましょう!