うどんへの偏愛が生んだ麺四銃士。『自家製うどん うどきち』[狭山ヶ丘]
小麦粉は40種以上試し、試作した麺の数は100種近くといううどんの探究者、倉田將昭(まさあき)さん。品書きにはその中から生き残った4種の麺が並ぶ。力強いコシの後、粘るようなモチモチ感がやって来るウルトラもち麺も気になったが、今回は田舎麺の揚茄子うどん並858円を注文。そうだ節、いりこ、利尻昆布などで出汁を引いた奥深い味のつけ汁に、素揚げしたナスがコクと甘みをプラス。小麦の香り鮮烈な麺をしっかりと受け止めるのだ。
『自家製うどん うどきち』店舗詳細
土鍋の奥に霊峰望む天空うどん。『平九郎茶屋』[吾野]
加藤ツチ子おばあちゃんは、富士山を望む顔振(かあぶり)峠の茶屋の看板を守り続けて60年。「50年前に林道が通るまでは、ビールもなんも自分たちの脚で荷上げしてたの」。時代は変われど、手打ちのうどんのコシの強さ、のめっこい(滑らかな)食感は変わらない。冬、猪鍋の締めにこのうどんを投入し、リンゴやニンニク、豆板醤などを加えた味噌ベースの甘辛つゆでグツグツ煮込んですすれば、体が芯から温まる。1時間以上かけ、登ってきてよかった!
『平九郎茶屋』店舗詳細
ゴリゴリ麺を掲げる武州の若武者。『本格手打ち かんたろう』[東所沢]
2019年春開店で早くも客の心をつかんだのが1cm近い太さの手打ち麺。何度も踏み鍛えたうどんを約6分の固茹でで提供するので、タピオカのようにはすすれない。だが、噛むほどに地粉の風味が広がるTHE武蔵野うどんなのだ。人気は特製旨辛つくね入り白味噌煮込みうどん1298円。企業秘密の白味噌とかつおやさばなど節類の旨味を重ねた出汁で作るつゆと極太麺のタッグは、中毒性高し。
『本格手打ち かんたろう』店舗詳細
所沢うどんの名店は今なお進化中。『涼太郎』[所沢]
地粉の農林61号などをブレンドし打った麺は、外が堅く中モチモチ。噛むと塩気と地粉の香りが押し寄せる。「最近つけ汁の塩分を減らしかつおの出汁感を強めたんだ。そのつけ汁に絡むよう麺は昨年から細くしたよ」と店主・五十嵐昭久さん。ほかにもカップルでシェアできるよう、かき揚げを巨大化させたり、大人のミートソースうどんを考案したりと「お客を喜ばせたい」という店主の思いが炸裂!
『涼太郎』店舗詳細
太い竹と腕で伸ばす郷愁うどん。『さわだ』[仏子]
2代目の澤田広志さんは裏山で採った極太の竹を使い、体重を目いっぱいかけて麺を伸ばす。「昔ながらの田舎うどんを打ちたいから、粉は農林61号100%。加水が多いと切れやすい粉なので水は少なめ、そのぶん力を入れて伸ばさないといけないんです」。あえて寝かさず朝の打ちたてを出すのも、小麦の風味を優先するため。褐色の麺をズズッとやれば、黄金色に輝く小麦畑の風景が頭をよぎる。
『さわだ』店舗詳細
コシと喉ごしを併せ持つ愉悦麺。『cafeやまね食堂』[飯能]
店主の森沢修さんは、名栗の主婦たちに麺打ちを教わった。「耳たぶぐらいのやわらかさ、押すとちょっと押し返すぐらいのコシが理想です」。教えをもとに修さんなりのアレンジを加えたうどんはコシがありつつ、ツルっとした麺肌が喉に心地よい。肉汁でいただく手打ちうどん並盛りは、たっぷりの天ぷらと小鉢が付いて、なんと900円!「 秘境でやってるから、この値段で出せるんだね(笑)」。
『cafeやまね食堂』店舗詳細
讃岐と武蔵野のいいとこどりイケ麺!『うどん家 一』[小手指]
大女将が活ける花が季節を優しく知らせる。『うどん家 一』が暖簾(のれん)を掲げたのは2011年3月。いきなりの震災に苦労もあったが、うどんマニアや有名人が訪れる繁盛店に成長を遂げた。店主・鈴木一孝さんは、千石『元喜』や池袋『うちたて家』など人気店で修業。讃岐と武蔵野、両者の良さを知る彼が打つのが、瑞々しさも絶妙なコシも兼ね備えたハンサム麺だ。メニューに応じて7種類のつゆを使い分ける心配りまでお見事!
『うどん家 一』店舗詳細
取材・文=鈴木健太、井上こん 撮影=オカダタカオ、小野広幸