おすすめはこいめ。ネルドリップでいれる深煎り珈琲を『珈琲店 長月』
わずか5つのカウンター席に囲まれた場所で、店主が深煎りの珈琲をネルドリップでいれて提供。珈琲豆は、カウンターに置かれたステンレス製の手回し式焙煎機で焙煎されているため、店内には珈琲の香りと、豆を焙煎するときに出る独特の香りが混ざり合っている。
『珈琲店 長月』のブレンド珈琲には、「ふつう」「こいめ」「うすめ」の3種類があり、店主のおすすめは「こいめ」。「こいめ」には1杯あたり30gの珈琲豆が使われる。店主が珈琲をいれる仕草を観察していると、左手にネルドリッパー、右手にポットを持ち、しずくを垂らすようにポットを傾けながら小さく円を描く。ドリッパーも数センチずつ上下させている。じっくりと時間をかけていれられた「こいめ」は、安心できるような深みのある味わい。ひとくちずつ、舌の上でゆっくり余韻を楽しみたい珈琲だ。
『珈琲店 長月』店舗詳細
時をかけてつくられた読書のための空間『アール座読書館』
私語厳禁。古い机やベンチ、植物や水槽などを配した「読書するためだけの空間」は、異様でもあり、どこか懐かしくもある。宮沢賢治の『黄いろのトマト』に出てくるような博物館、長崎の教会、古い木造校舎、昔乗った列車——。つくりたいお店のイメージは物件探しの段階からあったが、「結局、開店まで半年もかかってしまいました(笑)」と店主・渡邉太紀さん。長い時間をかけてつくり込まれた、どこにもない場所がここにある。
『アール座読書館』店舗詳細
スパイスに魅了された店主が開いたチャイの店『amber chai & bake』
高円寺の高架沿いにあるカフェ『amber chai & bake』の看板メニューはマサラチャイ。店主はオーストラリアのシドニーに長く住んだ経験を持つ。そのころ出会ったさまざまな国から来た友人たちは自国の料理を振る舞ってくれた。各国それぞれにスパイスが使われていたことが、スパイスとの出合いだった。特に台湾出身の友人が使っていたスターアニスが『amber chai & bake』のマサラチャイを特徴付けている。そのせいか、お店全体にスターアニス由来の甘い香りが漂う。
焼き菓子には、シナモンやジンジャーなどのスパイスに加えて、ドライフルーツを使ったものも複数。食に制限のある人も利用できるようにと、小さい子供や愛犬連れの人に向けた小麦粉と少量の油と砂糖だけを使ったごくシンプルなクッキーや、小麦粉を食べない人に向けた米粉とオーツを使ったクッキーも用意している。
『amber chai & bake』店舗詳細
本から始まる地域のつながり『Book Cafe Dinerイココチ』
「自宅にある本を店に持ってきて置いたのが始まりです。当初は売るつもりはなかったんですが」と店主の蔵下さんは話す。店内には壁際の本棚を中心に、絵本や小説、デザイン、建築、料理など、幅広いジャンルが揃う。席から手が届く距離にある小さな棚にも、まんべんなく本が詰まっている。このごろはラインアップを見て、お客さんが本を持ってきてくれることもあるとか。地域の憩いの場で、本が巡っていく。
『Book Cafe Dinerイココチ』店舗詳細
夢見る人たちを迎える駅前のアメリカンダイニング『Yonchome Cafe』
『Yonchome Cafe』は高円寺駅のホームからも見える老舗のカフェで、オープンは1989年。数々の映画やドラマの撮影が行われ、高円寺ゆかりの著名人たちがそれぞれの思い出を持つ。高円寺の文化を育んできた場所のひとつだ。
オーナーがニューヨーク留学中に好きだったアメリカンダイナーをイメージした店内。鉄製のフェンスがあるのは、ニューヨークの街並みを意識してのことだ。メニューが豊富なのも『Yonchome Cafe』の特徴だが、やっぱり代表的なメニューはタコライスだろう。ピリ辛の自家製チリミートが食欲をそそり、ボリュームもたっぷり。表面には野菜がたっぷりと野菜不足になりがちな人にもぴったりだ。
『Yonchome Cafe』店舗詳細
好みや気分に合わせて茶葉が選べるティーカフェ『three』
夜になるといっそうにぎやかになる高円寺駅前。その一画に立つビルの3階にある『three』は、小さな屋根裏のような空間に穏やかな時間が流れるカフェ。オープン当初は夜カフェとして開いていたこともあり、木・金・土は19時台の休憩を挟んで、ラストオーダーが22時30分。週末の夜に、落ち着いた時間を過ごせるお店だ。
バーで働いた経験を持つ店主が、その人のための一杯を入れたいと、紅茶やハーブティー、緑茶など、100種類前後の茶葉を用意している。メニューには具体的な茶葉の名前は書かれていない。訪れた人は、好みやその日の気分を伝えると、スタッフがたくさんある中から3、4つの茶葉を選んで見せる。香りなどから、飲む茶葉を選ぶというシステムだ。お茶はポットにたっぷり入って提供される。今日はどんな茶葉との出合いがあるのかを楽しみにしながら3階までの階段を上る人も多いはずだ。
『three』店舗詳細
ソムリエが珈琲とスイーツのマリアージュを提案『Poem MANO A MANO COFFEE』
高円寺南口で約半世紀、街の人に親しまれてきたコーヒーハウス「ぽえむ」。2020年4月にリニューアルが行われ店名も少し変わって『Poem MANO A MANO COFFEE』となった。
現店主はソムリエとして、食べ物と飲み物のマリアージュを大切に提案し続けてきた五十嵐智香子さん。五十嵐さんがつくりたかったのは「手をかけて作ったものを提供することで、いろんな人が集まる場所」。珈琲は一杯ずつハンドドリップするし、スイーツ類もパティシエによる手作り。なかでも人気のスイーツはカスタードプリンで、限界まで固いプリンにホイップクリームと喫茶店らしい枝付きチェリーを添えられたかわいらしいたたずまいだ。
『Poem MANO A MANO COFFEE』店舗詳細
商店街に生まれた朝ごはんカフェ『UPLIFT coffee & breakfast』
中央線沿線には朝ごはんを食べられるお店が少ないからと、一日中朝ごはんが食べられるカフェを開いたのは、同じ場所に約20年前まで金物店を開いていた店主家族。
朝ごはんメニューのUPLIFTプレートは、メイプルシロップのチーズトーストかバタートーストを選べる。目玉焼き、ベーコン、キャロットラペ、特製グラノーラをトッピングしたサラダと一緒にワンプレートで提供され、毎日焼かれる特製グラノーラは、カレー風味という意外性が楽しい。高円寺の老舗焙煎所『さわやこおふぃ』から仕入れる珈琲のうち、シングルオリジンはケメックスの器具を使って抽出して、オリジナルのマグカップで提供。2025年7月のオープン以来、近所の人たちや外国人観光客でにぎわう。
『UPLIFT coffee & breakfas』店舗詳細
ニューヨークスタイルのミートボールをランチに『NOSTALGIA CAFE』
映画業界出身のオーナーが、焼き菓子作りが得意なパートナーと開いたカフェ。週末になると期間限定のパイを目当てに訪れる人で行列ができることも多く、人気店として知られている。お店の外壁や窓にはサインペイントで代表的なメニューや店名が書き入れられていて、まるで外国の映画に出てくるダイナーやカフェのようだ。
食事のミートボールも、提供方法はニューヨークにあるミートボール専門店からヒントを得た。ミートボールの数、ソースや付け合わせの種類など、好みやお腹の空き具合に合わせて選べるスタイルだ。しっかり大きめのミートボールは食感にもこだわりが光る。
『NOSTALGIA CAFE』 店舗詳細
薄闇と音の洪水に埋没し、ひっそり本を読みふける『ルネッサンス』
スタッフが「全国で一番敷居が低いんじゃないかと思います」と語る、会話もOKの名曲喫茶。かつて中野に存在した名曲喫茶「クラシック」の家具を使用し、同店おなじみの大工さんが作り上げた空間は、2007年にオープンしたのが信じられないムードを漂わせる。地下演劇の舞台のように入り組んだほの暗い座席で、クラシックに身をゆだね頭の芯を痺れさせれば、難解な詩集や哲学書のわからなさがむしろ楽しくなってくる。
『ルネッサンス』店舗詳細
スタイリッシュさと手作りスイーツが魅力のスタンド『RAD BROS CAFE』
高円寺駅から中野に向かう線路沿いを進み、環七を渡ってすぐのところに『RAD BROS CAFE』はある。スタイリッシュな外観が印象的だ。
手作りのスイーツの中でいちばん人気はオリジナル バスクチーズケーキ。チーズと生クリームは北海道産、小麦粉ではなく米粉を使い、砂糖もてんさい糖を使うなど、原材料を厳選している。生地はぎゅっと詰まっているが、フォークを入れた時と口に入れた時で、重さにギャップがあるのが不思議だ。珈琲は、セレクトショップのような形式。珈琲にしろケーキにしろ、定番はありながら、毎月何かが変わっているというのも、店をたびたび訪れる楽しみとなる。
『RAD BROS CAFE』店舗詳細
古いビルの3階に広がるもうひとつの物語でティータイムを『エセルの中庭』
古いビルの3階にある『エセルの中庭』に入店するには、2階まで上った後にドアを開け、さらに狭い階段を上がる。階段は明らかに別世界につながっている。オーナーは同じビルの2階にあるおしゃべり禁止の読書カフェ『アール座読書館』の渡邊太紀さん。少年の頃から宮沢賢治やミヒャエル・エンデに親しみ、大人になってからは洋館やアンティークショップ巡りも楽しんだ。その2つが融合したのが『エセルの中庭』だ。
第2次世界大戦前後の英国に暮らしていた少女エセルが登場するストーリー『中庭のエセル』が背景になっている。メニューは、ドリンクは紅茶が中心で美しく華奢なポットで提供され、スイーツ類もエセルの物語に登場することを想定したもの。メニューブックには、それぞれに背景となるストーリーが添えられている。
『エセルの中庭』店舗詳細
取材・文=野崎さおり、渡邉 恵(編集部)、信藤舞子、屋敷直子、佐藤さゆり 撮影=野崎さおり、門馬央典、金井塚太郎、花岡慎一






