マエダ特殊印刷【凸版印刷】
親子3代にわたるシール印刷工場
「戦後間もない1950年に祖父が始めました」と3代目の前田努さん。現在は社名の“特殊印刷”を拡大解釈し、シール印刷から派生するさまざまなものづくりも行う。受注業務はもちろん、グラフィックデザイナーでもある妻・千容さんがデザインしたシールや、フェイスシールドをシールでデコレートできるお面手作りキットも評判。購入のため足を運ぶと、タイミング次第で工場を見学させてもらえるかも?
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リズムアンドベタープレス【活版印刷】
ご近所さんが集う印刷屋とは?
どっしり鎮座する活版印刷機が目を引く。主に名刺の印刷を受け、「立ち会い印刷歓迎」と依頼主とのコミュニケーションに積極的だ。目指すは「オープンな印刷屋」で夕方からは立ち飲み屋、水曜日のランチ時にはカレー屋兼コーヒースタンドにがらりと変貌。オーナーの宍戸祐樹さんがマスターとして立ち、とりとめもないおしゃべりや、時には印刷談議に花が咲く。
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キョーダイ社【製本】
手作業も新型マシン操作もまかせて
断裁から製本(綴じ加工)、または折り加工と、本の仕上げが製本会社の仕事。こちらでは創業時の約50年前、手作業が中心だった時代の道具も現役で、木製ののり盆は2代目の小森豊章さんによるオリジナル御朱印帳作りに活用される。社名の由来は「父が兄弟で一緒に創業したから」と豊章さん。地域の祭りに参加し、小学校の社会科見学に協力するなど製本の仕事を広めることにも前向きだ。
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《界隈で立ち寄りたい個性派ブックスポット》
眺花亭【私設図書館】
館長の人生が垣間見える本の城
マンションの5階、隅田川を見下ろす一室に本棚がずらり。長年の本好きが高じて渡辺信夫さんが開いた私設図書館だ。「自宅に収まらなくなってこちらに移したんです」と笑う渡辺さんの蔵書は、東京の街歩き、演芸、音楽など多岐にわたり4000冊以上。サービスコーヒーまたは紅茶を片手に読書はもちろん、本を間に挟んで生き字引のような渡辺さんと話すのも、楽しすぎて時間があっという間。
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Books&Cafeドレッドノート【新刊・古書】
本のジャンルをぐっと絞って勝負
ミリタリやSF、オカルトなど、扱う本のジャンルはピンポイント。だが、柔らかい接客やすっきり整頓された店内、カフェメニューのクオリティの高さから、門外漢にも驚くほど居心地がいい。「軍艦の写真集や希少な洋書も一推しです」と、蔵書について語る店主の鈴木宏典さんは実に楽しげ。購入可能な新刊、古本のほか、非売品も閲覧自由で、マニアでなくても興味をそそられてしまう。
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古書しいのき堂【古書】
大人も子供も長居したくなる品揃え
店主の山口俊文さんは、2016年に会社勤めから転身し、蔵書を中心に並べてこの店をスタート。少年時代から読書に熱中し、「背伸びして大江健三郎を読んだりしていました」。店内には昭和40~50年代の日本・外国文学、思想・哲学をはじめ、詩集も充実し、これを目当てに来る常連も。児童書の棚には子供も大人も釘付けで、「大人になって読み返すと内容の深さに驚きます」とにっこり。
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【関連イベント情報】本と川と街 2021
イースト東京を舞台とし、「本」という記憶媒体を軸に「街を巡る」アートプロジェクト。時勢を踏まえて直感的に選ばれた本を展示し、そこに対話(言葉)を重ねることで体験をアーカイブする「Layerd」、よく行く場所や道を地図でなぞり、個人的な場所の記憶を俯瞰的に思い起こす「日常記憶地図」など、たくさんの見どころが街に点在する。観覧者は事前に、チケットとプログラムブックを兼ねたパスポートブックを購入しておくのがおすすめ。その余白に作品の感想や街の印象を書き込めば、世界に一冊だけの本が完成するというグッとくる仕掛けになっている。
2021年10月30日~11月28日、本所・深川エリアで開催。料金はプログラムごとに異なる(パスポートブックを持参した場合、無料または割引にて入場可。パスポートブックは8月よりクラウドファウンディングにて先行発売。また地域書店、東京都現代美術館ミュージアムショップなどでも販売予定。価格未定)。
取材・文=信藤舞子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2021年7月号より