注文を受けてから丸鶏を切り分けて調理する

食鳥処理免許を持つ相原さんは、「鶏肉は鮮度が命」と話す。だから、調理は、注文を受けてから鶏をざばくところから始まる。

旗の台にある『鳥樹本店』は昭和48年(1973)の創業。蒲田店の店主・相原卓也さんは、父が営む本店で7~8年修業した後、他店でも2~3年修業し、1998年に蒲田店を開業した。

この店の焼き鳥は、串に刺して焼くのではなく、部位ごとに網焼きするスタイル。朝絞めの丸鶏を仕入れ、注文が入るたびに、必要な部位を切り分けて調理する。これは父が生み出した独自の調理法だ。だから、カウンターに席を取れば、相原さんが手際よく鶏をさばき、調理していく姿を見ることができる。

1階はカウンター席と2人掛けのテーブル席。

鳥樹に来たら「ももたたき」は必食!

ももたたき1200円。かぶりつけば、香ばしい皮が鼻をくすぐり、口の中で弾力ある身から肉汁が染み出てくる。

『鳥樹』の名物になっているのが、ももたたき。まずは皮面を860度から930度の高温でよく焼き、パリッと焼き上げる。続いてひっくり返して身側を焼くが、生でも食べられるほど鮮度が良いので焼き加減はレア。このままでも十分においしいが、ニンニク、ショウガ、刻みネギを加えた自家製のポン酢ダレで味わう。香ばしい皮、柔らかくジューシーな身は噛むほどに鶏肉本来の旨味が広がる。鶏もも肉を1枚丸ごと使うのでボリュームも満点。これだけでお腹がいっぱいになりそうなので、シェアして食べるのがいいだろう。

2階は板張りの座敷で、掘りごたつ式のテーブル席となっている。

丸鶏を捌いているから部位ごとに異なる鶏料理三昧を楽しめる

新鮮だからこそ味わえるそぎ身のお造り800円。

その日の朝に絞めたばかりの新鮮な鶏肉の風味を楽しみたいなら、そぎ身のお造りがおすすめ。むね肉をサッと湯通しして、薄くそぎ切りにして、わさび醤油で食べる。ピンク色の肉は、レアというより刺し身状態。新鮮だからこそ作れる料理だ。

ほんのりしたピンク色を残したむね肉のから揚げ700円。から揚げは、もも700円、手羽先、軟骨各550円。

から揚げは、もも、むね、手羽先、軟骨の4種類が用意されている。もちろんこの料理も、中はレア状態で提供される。醤油ダレで味をつけ、薄く衣をつけて揚げ、日本酒で臭みを飛ばした沖縄産の2種類の海のものをブレンドした塩で味わう。

「本当の味を知ってもらいたいからタレで味をごまかしたくないのです」と、相原さんはシンプルな調理法の理由を教えてくれた。

丸鶏を捌くと、1羽から少ししか取れない希少部位が出る。僅かな量なのでメニューには載せていないが、その日のおすすめ裏メニューとして客に勧めることもあるという。どんな部位の料理かは当日でないとわからないが、声を掛けられたらぜひ注文してみよう。裏メニューは300円~。

また、鶏ガラやモミジ(足)などで作った濃厚出汁を使った茶碗蒸し700円、骨の周囲の肉をミンチにして作ったそぼろを使ったミニそぼろ丼550円など、鶏料理三昧ができるのも、この店の魅力といえる。

取材・文・撮影=塙 広明