物事の見え方がゆるやかに変わる映画館『ポレポレ東中野』

カフェも併設。山口県祝島のびわ茶650円。
カフェも併設。山口県祝島のびわ茶650円。

開館以来20余年、ドキュメンタリーを中心に上映するミニシアター。硬派なイメージがある一方で、訪れると笑顔で迎えてくれ、どんな人でも受け入れてくれそうな懐の深さを感じる。ドキュメンタリーは報道性の高いもの、密着取材した作品など多種多様だが、「人間が見えてくるような作品はいいな、と思います」と支配人の大槻貴宏さん。一般2000円。

住所:東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸線東中野駅から徒歩1分

魚屋で買い物するついでに角打ちも『港丸 ― MINATOMARU』

三陸ジオイスター600円。お刺身3点盛り900円前後。日本酒500円前後。
三陸ジオイスター600円。お刺身3点盛り900円前後。日本酒500円前後。

近所には系列店も!

通り沿いに『SUNDAY JAM's CLUB』が。
通り沿いに『SUNDAY JAM's CLUB』が。
取材時、開業準備中だったコンビニ『ウェーブスストア』(2026年8月に開業)。『港丸』の刺し身が24時間購入可能になるそう。
取材時、開業準備中だったコンビニ『ウェーブスストア』(2026年8月に開業)。『港丸』の刺し身が24時間購入可能になるそう。

住宅地に近い中通りの魚屋で気仙沼の漁港から直送される魚介が評判。日本酒やビールも用意され、ピチピチの刺し身を主役に角打ちを楽しめる。真ガキや岩ガキは市場で目利きしたものも合わせて5〜6種類あり、「夏は岩ガキが旬」と店長の伊藤彩音さん。おすすめの三陸ジオイスターを頬張(ほおば)ればプリッと身が詰まっていて、甘みがある。

住所:東京都中野区東中野2-24-11/営業時間:11:00~19:00/定休日:日/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸東中野駅から徒歩2分

多角的に詩の世界を掘り下げる楽しみ『詩をはじめる本屋 蒼枯(そうこ)』

哲学的な要素もある『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』。
哲学的な要素もある『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』。
犬のバーテンダーがおすめの詩を出してくれる『ポエトリー・ドッグス』。
犬のバーテンダーがおすめの詩を出してくれる『ポエトリー・ドッグス』。

自身が詩を始めたきっかけは「ハンセン病患者の詩を読んだこと」と、雑居ビルの一室で詩に特化した書店を営む青海賢(あおみすぐる)さん。詩集だけでなく、作品の背景にある風土や歴史、社会問題など、詩の理解を助ける関連書も充実。青海さんを含む3名で運営。展示やブックフェアを開くといつも幅広い客層でにぎわう。

住所:東京都中野区東中野1-6-5 ホシノビル2F/営業時間:13:00~20:00(金は〜22:00、土・日は12:00〜)/定休日:月/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸東中野駅から徒歩1分

引き出されたジャズレコードの音を体験『JUDGMENT! RECORDS』

塙さんが監修し、最大限オリジナルを再現した復刻コレクション。
塙さんが監修し、最大限オリジナルを再現した復刻コレクション。

「BLUE NOTE」のオリジナルをはじめ、ジャズのレコードがずらり。60年代の希少盤も多く、「これらを鳴らすのに最適な同時代に製造されたオーディオ機器」で試聴も可能だ。豊かな音色に身を委ねるひととき。店主の塙耕記(はなわこうき)さんは、世界の名盤や日本の伝説的レーベル「three blind mice」の復刻コレクションの監修も務める。

住所:東京都中野区東中野1-57-6 福山ビル2F/営業時間:11:00~20:30/定休日:無/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸東中野駅からすぐ

草花に埋もれ、季節を感じられるカフェ『On Flowers』

サンドイッチ(写真はピリ辛初夏サンド)はドリンク付き1200円。
サンドイッチ(写真はピリ辛初夏サンド)はドリンク付き1200円。

草花があふれる花屋の店内でカフェタイム。魅惑的な断面のサンドイッチは2種類から選べ、3週ごとにラインアップが変わる。もちろん、花を買うだけでもよく、部屋に飾るとアクセントになりそうな色や形が個性的なものが目を引く。近所に住む常連や親子連れは「珍しい花が多くて面白い」と喜んでくれるという。

住所:東京都中野区東中野1-32-6/営業時間:11:00〜17:00/定休日:日・月/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸東中野駅から徒歩3分

店先でかぶりつくひんやりジェラート『洋菓子・ジェラート ドーカン』

ジェラートはシングル300円、ダブル360円。写真はチェリーとモカ。
ジェラートはシングル300円、ダブル360円。写真はチェリーとモカ。
チョコチップと、キリッとした塩味が甘みを際立てる桜塩ミルク。
チョコチップと、キリッとした塩味が甘みを際立てる桜塩ミルク。

1990年の開業当初、都内にもまだ手作りジェラートの店は少なかった。ショーケースには、店の前の通りに植えられた桜にちなんだ名物の桜塩ミルク、期間限定のフレーバーなど全10種が準備万端だ。素材を生かした味わいは、キレのいい甘みで口当たりスッキリ。常連の間では、蓋(ふた)付きのカップをまとめ買いし、冷凍庫に常備しておくのがおなじみ。

住所:東京都中野区中野3-2-2/営業時間:11:00〜19:00/定休日:火/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸線東中野駅から徒歩3分
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変わらぬ東中野と、変わる東中野

朝一番からにぎわう『ポレポレ東中野』で、全寮制高校の一年間を記録したドキュメンタリー『聴く隣人のいるところ』を鑑賞。スクリーンに映る学生のひたむきさがまぶしい。1階の『Space& Cafe ポレポレ坐』はトークショーなどイベントも開かれる場所だが、地域に密着し、普段は街のオアシス。映画に関係なくくつろぐ地元客に紛れ、気持ちが落ち着くまでいられるのがありがたい。

駅前の跨(こ)線橋から中野方面を眺める。
駅前の跨(こ)線橋から中野方面を眺める。

長年変わらぬ東中野があれば、様変わりした東中野もある。「誕生日ケーキの注文があると定休日も店を開けます」と微笑(ほほえ)む『洋菓子・ジェラート ドーカン』の植田賢一さんは御年72歳だ。

「36年前に店を始めた当初は、この街にあんな高層マンションが建つと思いませんでした」

以前近所にあった社宅はマンションになり、お屋敷は賃貸アパートになり、「一人暮らしの若者がうんと増えたねえ」。

桜の名所でもある神田川。
桜の名所でもある神田川。
JR東中野駅東口には昔ながらの風情が残る。
JR東中野駅東口には昔ながらの風情が残る。

新たに誕生しているコミュニティーに注目

山手通りの地下は首都高速中央環状線(山手トンネル)。道路トンネルとしては日本最長の約18.2km。
山手通りの地下は首都高速中央環状線(山手トンネル)。道路トンネルとしては日本最長の約18.2km。

『SUNDAY JAM’s CLUB』『港丸』『ウェーブスストア』は系列店。代表の逵(つじ)誠也さんに聞くと「SUNDAY JAM’s CLUB』の常連さんが空き物件を持っていて、声をかけてくれたのがその後の2軒を作ろうと思った発端です」。『港丸』はそのまま食卓に並べられる刺し身が豊富できっとみんな助かっているはず。

『ウェーブスストア』の内装工事は誰でも参加でき、「手伝ってくれる人募集」の貼り紙を見て参加した近隣住民がかなり多かったそうだ。

活気あふれる東中野ギンザ通り。
活気あふれる東中野ギンザ通り。

「東中野で新たなコミュニティーが形成されやすくなっているのは、『SUNDAYJAM’s CLUB』が地ならしをしてくれたから」とは、『詩をはじめる本屋蒼枯』の青海賢さん。毎週金曜の19〜22時にはバータイムを実施している。線路の音が聞こえる駅近の雑居ビルで今年オープンしたばかりだが、「静かすぎない環境がかえって会話を誘発」するらしい。詩が好きな人だけでなく、最近では地元客もちらほら集まるようになってきた。

スナックやバーが軒を連ねるムーンロード。
スナックやバーが軒を連ねるムーンロード。

『On Flowers』では、仲のいい店舗を巻き込んでスタンプラリーを開催することも。山に入り、自分たちで切った竹で流し素麺(そうめん)をするなど、季節のイベントも趣向を凝らす。
『JUDGMENT! RECORDS』の整ったオーディオ設備で名盤を試聴できるのは、20〜30代のサブスク世代にとっても貴重な体験。暮らしやすさと文化が交わる東中野。今、同時多発的に発生しているローカルコミュニティーがアツい。

取材・文=信藤舞子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年8月号より