トラブルからクラウドファンディングで復活した子供連れもOKのカフェ
『蒲田カフェ』は、2019年に蒲田でオープンしたハンバーガーの店『KAKUMEI Burger&Café』の2号店だ。蒲田で子育てをしているオーナーが、蒲田には子供と一緒に行けて、ゆっくりできる店が少ないと考えてオープンさせた。朝8時から夕方18時までがカフェタイム。18時以降23時までがバータイムとして営業している。どの時間帯も、個性的なフードとドリンクのセットメニューが用意されていて、気軽に立ち寄れる印象だ。
カウンターの正面に、和食店のメニューのような木の札がかかっているのに気がついた。「これはなんですか?」と店長の大沢懸司(おおさわけんじ)さんに尋ねてみると「ときどきメニュー表と間違えるお客さんがいます」と大沢さんは笑う。クラウドファンディングの返礼品として掲げられているものだ。
クラウドファンディングをすることになったのは、2023年1月のある日の早朝、お店に自動車が突っ込むという災難に見舞われたことがきっかけだった。オープンしてやっと1周年を過ぎたというタイミングのこと。幸い誰にも怪我はなかったが、表のガラスやショーケース、備品などが派手に壊れてしまった。地域のお店や常連客から寄付が集まり、修繕することができた。
「事故直後に表をベニヤ板で塞いで営業していたら、裏口から入ってきたお客さんたちが、ずいぶんくつろいでいましたよ」と大沢さん。まだ新しいカフェという印象だったはずの店は、トラブルを機に街の人との距離をグッと縮めたのかもしれない。
平日の日中は近隣に住む人たちがよく訪れていて、ときにはベビーカーに子供を乗せてやってくる人もちらほら。モーニングの時間帯は、近隣の民泊に宿泊している外国人が朝ごはんを食べにやってくる姿をよく見かけるようになった。羽田空港までのアクセスのいい蒲田らしい光景だ。
浅煎りシングルオリジンから深煎りブレンドまで。コーヒーは7~8種類
朝早くから夜のバータイムまで、ファミレス並みに使い勝手のいい『蒲田カフェ』だが、本格的なスペシャルティコーヒーが種類豊富に揃っているのも大きな魅力だ。
シングルオリジンというとエチオピアやグアテマラなど、国の名前で呼ばれることが多いが、『蒲田カフェ』では、主に農園指定のコーヒー豆を扱っている。バリスタとして焙煎から抽出まで手がける福島宏樹(ふくしまひろき)さんによると、丁寧に育てられた生のコーヒー豆は、火を入れる前から香りがいいとも教えてくれた。
浅煎りが多いスペシャルティコーヒー以外にも、しっかり深みのある味わいに慣れているという人に向けて、機械抽出で気軽に飲める価格設定の深煎りのブレンドコーヒーも用意されている。
ただ、『蒲田カフェ』に通っている人たちの中には、福島さんと話しているうちに、スペシャルティコーヒーに興味を示して、コーヒーの新たな扉を開ける人も多い。
「ブラックコーヒーが飲めないという人に、浅煎りのエチオピアを勧めてみたら、フルーツのお茶みたいだと喜んでくださったこともありますよ」と福島さん。蒲田でコーヒーの魅力を広げる発信地のような役割も担っている。
気軽におなかを満たしたいときに。蒲田になじみ愛されるカフェ
『蒲田カフェ』は、食事やスイーツが充実していることも魅力だ。モーニングの時間帯は、クロックムッシュやクロックマダム、ランチタイムはグラタンやパスタ、サンドイッチが食べられる。スイーツは、瓶の中にプリンとコーヒーゼリー二層にしたスイーツ「プリンとコーヒーゼリーが出逢った」も人気だ。
カフェタイムに小腹がすいていたら、サンドイッチと飲み物を合わせるのがおすすめ。2026年夏のおすすめは、「背徳のバーベキューサンド」。プルドポークにチーズをたっぷり、サワークリームベースのマヨネーズを挟んだ、ボリューム感のあるサンドイッチだ。
福島さんが「背徳のバーベキューサンド」に合わせるならと勧めてくれたのが、「キマる!エスプレッソコーラ」だ。元々はまかないのドリンクとして誕生したドリンクで、「カフェインで集中力を高めたいときにパッと作って飲んでいたのをメニューに加えました」と教えてくれた。
甘みと苦味が交わり合った炭酸のドリンクが食欲を増進させるのか、ジューシーなプルドポークとコクのあるチーズのサンドイッチがおいしく感じられる。
パンは同じ蒲田の『トーチドットベーカリー』のものを使い、自家焙煎コーヒーを提供する一方で、やはり蒲田『サンパウロコーヒー』に依頼したブレンドコーヒーも提供。地元とのつながりはとりわけ大切にしている。
コーヒーや食事を目当てに、いろいろな人が気兼ねなく訪れることができ、しかも蒲田らしい地元密着感のある『蒲田カフェ』。スペシャルティコーヒーが好きになる入り口以上に、ますます蒲田を好きになるきっかけにもなっているのではないだろうか。
/定休日:木/アクセス:JR・私鉄蒲田駅から徒歩5分
取材・文・撮影=野崎さおり





