初夏からのお楽しみ、自家製小豆アイスも!『焼菓子の店 ハシバミ』
ヘーゼルナッツを意味する名の店は、筑波山麓から2020年にモダンな美容室の敷地内に移転。こぢんまりした店内に、クッキー、スコーン、パイにタルトなどが所狭しと並ぶ。同県の石岡鈴木牧場の牛乳、国産小麦粉、よつ葉バター、奥久慈卵と安心できる素材にこだわる。「気持ちが丸くなるような、毎日食べたいお菓子を目指します」と坂﨑美佐子さん。初夏から登場する小豆アイスも人気だ。
11~16:00、日・月・火休。
Instagram:bakedhashibami
“地産地消”も楽しめる絵本の世界『えほんやなずな』
絵本講師の藤田一美さんが2016年に開店。ロングセラーから最新刊まで現在約5000点ある絵本や児童書を目当てに、生後半年ころの赤ちゃんから大人まで訪れる。特筆すべきは、絵本だって“地産地消”と題したつくばゆかりの絵本コーナー。「出身者や在住者、元筑波大生、地元の出版社など、つくばに関わる作り手は意外と多くて、つくばがモデルになった本もあるんです」。
13:00~17:00、月・水休(臨時休あり)。
☎︎029-828-5120
食生活を豊かにしてくれるモノたち『ろばの家』
美大生時代から日本の器文化にひかれた福江洋子さんが夫・貴行さんと2014年に開店。笠間の小林耶摩人さんの器、岐阜の村上雄一さんの磁器など、全国約20名の作家の器と、実際に使ったり食べたりして心からよいと思えたイタリアや日本の食材、台所まわりの雑貨を取り扱う。「二人とも食べることが好き。リアルな主婦目線で使い方やレシピもお伝えできます」。
12:00~18:00、月・火休(臨時休あり)。
☎︎080-8168-6993
アイスコーヒーの魅力、再発見!『つくば焙煎 SILK HAT』
竹園ショッピングセンターで2023年から営む自家焙煎コーヒー店は、アイスコーヒーが9種類! アイス用にブレンドされた一番人気の「漆黒」は極深煎りなのにごくごく飲める。ハンドドリップで落とし、氷で冷やし、シェーカーで泡を立て出される姿はビールのよう。「泡が蓋(ふた)になって香りを保ってくれるんです」と店主の大河原淳さん。
10:00~19:00(焙煎がある場合は~17:00)、不定休。
☎︎050-8892-8616
仙人というよりもはや研究者!『つくば石焼芋屋』
自ら建てた小屋、自ら設計した薪窯で2000年から芋を焼く松本義男さん。焼き方、温度を試行錯誤し、サツマイモの品種は客の声に応えながら変え、今では「窯に立てば足で焼き加減が分かる」という域に。約20年前より固定した紅はるかを70~80℃の低温で約4時間焼けば、蜜がたっぷり染み出し、筋がなく極上のなめらかさ! 夏は冷やしもおすすめ。
11:00~17:00、月・火・水休。
☎︎090-7941-8425
少数精鋭で生み出す、頼もしき帆布バッグ『須田帆布』
1981年に八潮で生まれ、移転後2008年に直営店も併設オープンした帆布バッグの工房。2代目の須田雅代さん・コーラムさん夫妻が少数精鋭の職人と作るのは、倉敷製の9号綿帆布を使ったトートやショルダー、リュックなど。シンプルだが個性光るデザインで、道具のようにガンガン使える頼もしさが魅力だ。「修理も承ります。直しながらぼろぼろになるまで使ってくれる方が多いんです」。
11:00~16:00、火・水休(連絡すれば入店可)。
☎︎029-886-5315
隙間知らずの魅惑の古書空間へ『PEOPLE BOOK STORE』
ガラス戸越しからもそそられる、隙間のないほどの本の壁に本の山、CDやレコードたち。地元つくばで数々の音楽イベントを手掛けた植田浩平さんが、2013年より商店用長屋の一室に開いた古書空間だ。「店を続けるにつれて買い取りが増えました。街の人に信頼されてきたようでうれしいですね」。アート、カルチャーが強いがノンジャンルの品揃え。隅々まで掘り出し物を探したくなる。
11:00~19:00、火休。
☎︎なし
おいしいビール造りは、伝統とサイエンス!『TWIN PEAKS MOUNTAIN BREWING』
二つの峰(筑波山)を店名に、2022年から営む本格ドイツ式のビール醸造所とレストラン。ドイツ人醸造士で生物化学博士のボイクマンさんが伝統と科学に基づき醸造する。味わえるのは、バナナのような香りに驚くヴァイツェンはじめ常時9種類ほど。山の生き物をデザインしたラベルもユニークだ。
18:00~22:30LO(金は~23:00LO・土は14:00~22:00LO・日は16:00~20:30LO)、月休。
☎︎029-828-8577
筑波山に見守られる唯一無二のベッドタウン
三度の飯より神輿(みこし)好きな浅草っ子の従兄が5年前に移住したのはつくばだった。なぜだろう? 疑問を抱いて降り立つつくば駅は、案内板に“研究学園”、バスに“建築研究所”と研究だらけ。広場で憩う人も談笑する主婦たちまで研究者に見えてくる。筑波研究学園都市には160の研究機関と1万人以上の研究者が集まると聞く。あながち誤りではないかも。『つくば焙煎SILK HAT』の大河原淳さんは愛するコーヒーの道に進んだ元・微生物研究者。「漆黒」は究極の“アイス”を研究したブレンドだ。
『えほんや なずな』の藤田一美さんはご主人が育種の研究者で、植物をテーマにした著書も並ぶ。つくばゆかりの絵本の著者には雲の研究家もいるとか。つくばらしき街の地図が描かれた本あり、『筑波実験植物園』がモデルらしき本ありで、つくばを知るなら絵本もアリかも!
「どこか海外の都市みたいで、ただのベッドタウンっぽさがないんだ」と従兄の言葉を思い出す。未来を見据えた整備で道路が広く、無柱化や緑化が進んだ独特な街並み。駅周辺を離れれば、すぐに高い建物の密集度は低くなり、空は一層広くなる。
「公園も多いですしね。東京で寝てたら怒られるけど、ここは寝ころび放題!」と笑うのは、『PEOPLE BOOK STORE』の植田浩平さん。「つくばは車社会ですけど、結構気持ちよく歩けるんですよね」。店があるのは筑波大そばの天久保地区。パンにチーズ、コーヒー、ブックカフェ、印刷所などの店が点在し、カルチャルな雰囲気を漂わせるエリアだ。その中の一つが『ろばの家』。「つくばは都内へのアクセスがいい。東京駅まで1時間に2~3本出るバスが便利で、ずっと座って本が読めます」と福江貴行さん。
つくば駅の昔は山!どこの農家もサツマイモ
また、昔ながらの農村を感じるのどかな風景も現れる。
「昔、駅のほうは山だったんだよ。農家じゃどこでもサツマイモを作ってた。道が通って変わったね。70年くらい前だっぺなあ」とは、『つくば石焼芋屋』の松本義男さん。
筑波山の隣の宝篋山(ほうきょうさん)で大好きなハイキングをときどき楽しんでいる『須田帆布』のコーラムさんは、故郷のカナダを思うこともあるとか。
「大都市は苦手。ここは歩けばすぐ畑がある。街の中心を貫くペデストリアンデッキでまっすぐ筑波大まで行ける。PeaceでSafeな街です」
つくばっ子の『焼菓子の店 ハシバミ』の坂﨑美佐子さんも、「一度は東京に出ましたが、やっぱり筑波山が見えると安心しますね」。
つくばの人の拠(よ)り所・筑波山。いつでも変わらぬ特別な存在があるっていいな。そんなことを思いながら散策納めに『TWIN PEAKS MOUNTAIN BREWING』で1杯。やっぱりこちらも醸造士が研究者だ。
正直、一度巡るだけでは街はまだまだ研究し足りない! でも従兄がつくばにほれた理由は分かる気がした。
取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2026年7月号より






