山のみずみずしい空気に浸る朝時間『Art of Life 山の音』【逗子】
物語に出てきそうな、ケヤキの大木が見守るレトロな建物。DJ高木完さんが幼少時を過ごした古民家を、不動産業を営む禧井(ふくい)大輔さん・佐々木晴美さんが改築。暮らしを彩る「アート」を体験できる複合施設として生まれ変わった。発酵やスパイスを生かしたカフェメニューは、体が整うような味わい。看板猫・寅音(とらお)ちゃんが出迎えてくれる。
月・木は9:30〜16:00(金・土・日は〜18:00)、火・水休。
☎046-884-9721
海の幸を片手に逗子海岸へ『魚平商店』【逗子】
逗子海岸のそばで昭和3年(1928)から続く老舗の魚屋。歯科衛生士から若女将に転身した娘・岩楯有加さんが「魚をもっと手軽に、気軽に食べてほしい」と2024年に新ブランド『FLATFISH』を始動。長崎県松浦産のアジを使用したアジフライサンド650円(写真上。金・土限定)は、ボリューム満点だ。
10:30〜16:00ごろ。
火・水休。
☎046-871-2259
映画を軸に人とカルチャーが混ざり合う基地『CINEMA AMIGO』/『AMIGO MARKET』【逗子】
シネマカフェ『CINEMA AMIGO』は、映画全盛期の1930年代をイメージしたビンテージな雰囲気。併設された『AMIGO MARKET』には、フードやドリンク、オリジナルグッズや、地域の縁で生まれたエシカルな食材や雑貨が並ぶ。敷地内には、一軒家貸切の宿泊施設『AMIGO INN』も。
『CINEMA AMIGO』は9:45〜最終上映終了時、『AMIGO MARKET』は11:00〜17:30、不定休。
☎ 046-873-5643
海の風とともに大人スイーツでひと休み『HAYAMA SHINNASE CELLAR』【葉山】
地元で愛されてきた老舗酒店の跡地を引き継ぎ2024年にオープン。「地元住民と観光客が集う場にしたい」と語るのはオーナー・小野圭史さん。ナガノパープルを使用した甘さ控えめのワイン屋のかき氷1700円に、爽やかな酸味のキウイ酢スカッシュ700円。海松(みる)色のカウンターに腰掛けてひと休みしていると、窓の外から心地良い風が流れ込む。
8:00〜20:00、水休。
☎050-7110-5852
海と山に囲まれた、風光明媚な美術館『神奈川県立近代美術館 葉山』【葉山】
一色海岸と三ヶ岡山に隣接する、明るく開放的な美術館。1万6000件もの所蔵作品を生かした展覧会や企画展を開催。建物を囲む庭園には屋外彫刻が20点常設展示され、散策しながら葉山の自然とアートを味わえる。ミュージアムショップにはオリジナルアイテムが並ぶ。
9:30〜17:00(入場は~16:30、ミュージアムショップは10:00〜)、月休(祝または振休の場合は開館)。
☎ 046-875-2800
散歩の最後は、ナチュラルワインで乾杯!『le pissenlit(ピソリ)』【逗子】
葉山で生まれ育った店主・岸部兼太郎さんが、逗子の飲食店や仏・ボージョレのワイン生産者のもとでの修業を経て2026年3月にオープン。店名はフランス語で「たんぽぽ」の意で、お世話になった師匠が畑で初めて教えてくれた単語だ。生産者の顔が見える食材を生かしたおつまみにナチュラルワインが魅力。
11:30〜14:00・18:00〜22:30LO(土は15:00〜22:30LO)、日休。
☎046-845-9766
朝の逗子駅から歩き始める。海とは反対、山の方へと10分ほど。谷戸に現れるのが『Art of Life 山の音』だ。築70年の古民家を生かした空間。庭にはケヤキや梅、野草がそのまま残る。鳥の声、葉擦れの音。ウッドデッキで耳を澄ませば“山の音”が幾重にも重なる。植物療法士・佐々木晴美さんが淹れるカモミールチャイは、朝の体を温めてくれる。道端で偶然出会ったという看板猫・寅音ちゃんに癒やされる。
逗子海岸近くにあるのが老舗『魚平商店』。「昔は周辺の保養所や別荘に鮮魚を届けて、毎日大忙しでした」と、和田修芳社長。若女将を務める娘・有加さんは、結婚を機に逗子へ戻ってきた。「駅を降りると潮の香り。新しい人でもすぐになじめる、温かな街です」と語る。自家製タルタルソースをたっぷり添えたアジフライサンドに、マグロがゴロリと入ったお刺身弁当を、逗子海岸で味わおう。
同じ屋敷通りにあるのが『CINEMA AMIGO』。「映画を軸に人や文化が混ざり合う場をつくりたかった」と館長・長島源さんは言う。仲間たちと立ち上げた「逗子海岸映画祭」は2026年で15回目を迎えた。
併設ショップ『AMIGO MARKET』には店長・大谷和希さんがセレクトしたアイテムが並ぶ。「館内で製造している『じもとの洗剤』は『地元の海を汚さない』という思いから始まりました。余り物素材の松葉や夏ミカンを活用しています」と、大谷さん。こうした企画はクリエイター同士の自由なおしゃべりから生まれることも多いという。「私たちが大事にしているのは『Play with the Earth』。お金儲けではなく、地球そのものを楽しむということです」。その言葉どおり、この街では人と人との関係から、自然と何かが立ち上がる。
街を愛する人々がつなぐ、ユニークな拠点へ
海沿いを歩き葉山・真名瀬の『HAYAMA SHINN』へ。オーナー・小野圭史さんは、地元の漁師たちが集った老舗酒屋の記憶を引き継ぐ。「山があるから海がある」という思いから、シンボルカラーは山や海藻を想起させる海松色。円形のカウンター越しに自然と会話が始まる。葉山在住の料理研究家・土屋由美さんが考案したメニューは、地域の食材を大事に生かす。
一色海岸に向かうと『神奈川県立近代美術館 葉山』が見えてくる。海と山の間で白く光る建物が美しい。アートが醸す異世界に、時間を忘れて浸ろう。
逗子へ戻り、駅近くの『le pissenlit』でナチュラルワインを一杯。「逗子には四季がちゃんとある。春が来れば芽吹きの色を感じて会話がはずみます」と、店主・岸部兼太郎さん。「今の僕があるのは逗子や葉山でお世話になった人たちのおかげ。これからは恩返ししていきたいですね」。
訪れた先々で耳にしたのは「暮らしやすい」という言葉。その奥には、この土地への静かな愛着がある。暮らすこととつくることが地続きとなって、今日もまた小さな営みが新しい風景を生んでいる。
取材・文=村田あやこ 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2026年6月号より







