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[中山道 奈良井宿]
今回歩いた距離・所要時間●約2km・約1時間(休憩などは含まない)
出発駅へのアクセス●JR中央本線奈良井駅下車
建物や町並みが深い歴史を物語る「奈良井宿」
かつて“奈良井千軒”と呼ばれたほど栄えた奈良井宿には、いまも1kmにわたって古い町並みがほぼそのままの形で残っている。この町を支え続けてきたのは、長く営みを続ける老舗たちだ。
『ゑちごや旅館』は江戸時代から営業を続けてきた、奈良井に残る唯一の旅籠(はたご)で、建物そのものが奈良井の歴史を語る証人のようである。「中村邸」もまた、往時の姿を静かに留めている。
しかし奈良井宿の魅力は、ただ“変わらない”ことにあるのではない。古い町並みを尊重しながらも、新しい価値を生み出そうとする動きが芽生えている。
その象徴的な存在が、古民家をカフェへと生まれ変わらせた『いずみや』だ。奈良井で生まれ育ったオーナーの篠原将宏さんが、築200年近い生家を「旅人がほっとひと息つける場所にしたい」と考え、店を開いた。梁の見える低い天井や趣のある黒褐色の格子は奈良井の町家の基本スタイル。
『こころ音(ね)』も同様で、座敷で足を伸ばして古い町並みに目をやる時間が、奈良井という町そのものを味わう特別な体験をくれる。
『日野百草本舗』もまた、古い建物を舞台に新しい価値を紡ぐ老舗の一つ。江戸期から続く薬草文化を現代の感性で再構築し、カフェメニューやアパレル商品など、暮らしに寄り添う商品を生み出している。
古いものを守りながら、いまを生きる人のために形を変える——。その姿勢は、まさに過去と未来の対話そのものだ。
“変わらないもの”という確かな土台があるからこそ、いまの営みが鮮やかに輝く。ここには、時を超えて響き合う温故知新の物語が息づいている。
『宿場cafe いずみや』旅の疲れをほどくコーヒーの香り
築180~190年の実家を店主自らがカフェに再生。梁を見せた店内は足を投げ出せる座敷スタイルで、奈良井の暮らしを体感できる。ひと息ついてほしいから、スイーツはしっかり甘め。店内に漂うコーヒーのアロマにも癒やされる。
☎0264-47-1045
10:30~15:30LO(ケーキがなくなり次第終了)、不定休
長野県塩尻市奈良井201
JR中央本線奈良井駅から徒歩12分
『お食事・甘味処 こころ音』熱い鍋で楽しむそばのしゃぶしゃぶ
看板のとうじそばは、白菜や鶏肉、きのこを入れて煮たつゆに、茹でたそばをさっとくぐらすしゃぶしゃぶスタイル。出汁の効いたやさしい味わいで、疲れた体に染みわたる。最後は卵とご飯を入れて雑炊で締めるのが推し。
☎0264-34-3345
11:00~14:30(そばがなくなり次第終了)、水休
長野県塩尻市奈良井368
JR中央本線奈良井駅から徒歩10分
『日野百草本舗 奈良井店』伝統薬とキハダを未来につなぐ
百草は江戸時代から木曽に伝わる胃腸薬。御嶽山(おんたけさん)の修験者が伝えたとされ全国に広まった。現在は原料の国産キハダを守ろうと、これまで使われてこなかった葉や実などを活用するキハダプロジェクトを展開し、新たな商品を送り出している。
☎0264-34-3321
10:00~16:00、無休
長野県塩尻市奈良井492
JR中央本線奈良井駅から徒歩9分
漆器、曲物(まげもの)、お六櫛(ろくぐし)森の恵みが生んだ工芸品
漆器や曲物は江戸時代から木曽に伝わる伝統工芸品。なかでも、髪がつやつやになるお六櫛は中山道の土産物として絶大な人気を誇った。
取材・文=松井さおり 撮影=平松マキ
『旅の手帖』2026年5月号より






