草花に包まれ、鳥がさえずる境内「東慶寺」
2020年に始められた事業「大地の再生」のおかげで境内の自然は勢いを増し、北鎌倉の山と一体化したようなたたずまいに。数寄屋造りの写経会場に入り、墨を含ませた筆で書き進めるうち心身が穏やかになる(写経、挿し花など体験の詳細は公式HPで確認)。本堂に参拝し賽銭を志納。現在、三門を銅板ふきの唐門に建て替えており、境内売店では寄進を受付中。
9:00~16:00。
☎0467-22-1663
Instagram:tokeiji_temple
人々が待ち望んだ地元の味が復活『光泉』
「戦後、1950年ごろに開業したと聞いています」と、3代目である従兄弟と共に稲荷すし店を営む堀江邦英さん。先代亡き後、1年ほど休んでいたが2025年5月に再開した。よく染みた濃いめの揚げは伝統の味わい。イートインも、テイクアウトするハイキング客も多い。稲荷すし2本と巻物のセット1200円(テイクアウトは1100円)。
9:30~16:30、月・火休。
☎090-9134-2627
Instagram:kitakamakura_kousen
アールの天井と借景が映える『門』
北鎌倉駅前で1966年から続く喫茶店。マスターの石山修一さんを慕う常連が多く、わずか10席ほどの店内は「まるで北鎌倉のリビング」と評判だ。人気は、注文ごとにネルドリップする炭火焙煎のクラシック・ブレンド600円。深いコクにうっとり浸りつつ、建築家・榛澤敏郎氏による瀟洒(しょうしゃ)な建築の内装や、窓の景色をいつまでも眺めていたい。
10:00~17:30、不定休。
Instagram:kitakamamon
食べごろの野菜が手に入る八百屋さん『八百作商店』
店主が目利きした旬の野菜がずらり。「八百作さんなら安心だ」と人々が信頼を寄せる、地域に根ざした青果店。田村さん一家が代々営み、「5、6月はナスやキュウリ、トマトがおいしくなります」。どれもハリツヤがあり、「肉厚で食感のいいハンサムグリーンは、まずはサラダで味わって」とおすすめの食べ方を教えてくれるのもうれしい。
10:30~19:30、木休。
☎0467-46-2386
小さな店に漂うパンの焼ける香り『LA PETITE BOULANGERIE KITA KAMAKURA』
フランスやドイツで経験を積んだ職人が焼き上げるパンは30~40種類。得意のバゲットやデニッシュ、普段使いしやすい食パン、おやつにもなるヴィエノワズリーなど幅広い。商品によって小麦粉を使い分け、素材の力を引き出す。一番人気のクロワッサンにかぶりつくと、小麦のうまみ、バターの香りが鼻先にふわり。
8:30~16:00(土・日・祝は8:00~)、火・水休。
Instagram:boulangeriekitakamakura
日溜まりのような雰囲気の雑貨店『GM..ごまふたつぶ』
「いらっしゃいませ」と、おっとりした空気で迎えてくれる店主の福さん。こぢんまりした店内で紹介している作家は約50人に及び、とっておきの宝物をぎゅっと詰め込んだみたいだ。各地の陶器市などを訪れ、気になった作家に声をかけたそうで「みなさん、温かい人柄が作品に表れています」。
12:00~16:00、火・水休(臨時休あり)。
☎0467-25-1156
Instagram:gomafutatubu
まずは駅前の『門』へ。行きたい場所はいろいろあるけれど具体的な順路は決めていないので、コーヒーを飲みながら考える。石山さんは鎌倉・小町通りの2号店(2013年閉業)でマスターを務めていたそうで、2025年9月にここを引き継いだ。
「小町通りは全部で60席もあって、観光客が多かったんです。それに比べてこちらは10席程度。常連さんが集まるとみんなでしゃべります」
聞こえてきた会話に、自然と混ぜてもらえるのが心地よい。
鎌倉街道を東へ進むと『LA PETITE BOULANGERIE KITA KAMAKURA』がある。開業してまだ3年も経たないが、「いつもイギリスパンを買いに来る常連のおじいちゃんがいます」。焼きたてのクロワッサンを購入し我慢しきれず道端でかぶりつくと、湘南ナンバーのスクーターにまたがったマダムが一時停止して「おいしそうね」と。そんなやりとりにもなんだかホッと和む。
東慶寺の本尊・釈迦如来坐像もしっかりお参りしたい。境内を散策していると生い茂る緑に飲み込まれたような気分になり、人間は自然の一部なのだとつくづく実感する。写経体験は売店で随時受け付けしていて(9〜12時受付、第1・3火休)、蹲(つくばい)で身を清めてから会場である白蓮舎に入る。硯(すずり)で磨(す)る墨の香りが清々しく、次第に心が整っていく。
ちなみに、北鎌倉の景色は地元の人でも見飽きることがないそうだ。「ここは山に囲まれた谷戸。天気や日差しの具合によっても、日一日と景色が変化します」
19年間、この場所で店を営んできた『GM..ごまふたつぶ』の福さんが、そう教えてくれた。
駅前に戻り、『光泉』の稲荷すしで遅めの昼食にする。約一年間の休業を経て店を再開した堀江さんは、子供の頃から食べていた味の記憶をもとに、それからなじみの人にも試食してもらい、伝統の味を再現したという。お揚げが甘めだから、酢飯はシンプルに酢と塩のみ。砂糖は使わない。素朴でありながら昔っぽくなりすぎないのは「創業者である祖父、祖母のセンスがよかったんですね」とにっこり。
ゆっくりと世代交代が起き、少しずつ新しいコミュニティーができている北鎌倉。移住してくる人も増え、『門』で会った常連さんもそうだと言っていた。そういえば、石山さんが「八百作さんのキュウリの糠漬けが好き」と教えてくれた。帰る前に買いに行かなくちゃ。
取材・文=信藤舞子 撮影=井原淳一
『散歩の達人』2026年6月号より







