温泉卵とろり。強い麺に強いソースを絡めた「名物!極旨ナポリタン」
『高円寺ウシータ』は、セントラルロードとも呼ばれる高円寺北中通り商店街に2018年にオープンした。壁の青いビルの2階にあるイタリア料理のお店で、店主で姉の安達鮎(あだちあゆ)さんとシェフで弟の深谷郁也(ふかやいくや)さんが切り盛りしている。オープンしてしばらくは夜のみの営業だったが、ランチタイムもお店を開けないともったいないと考えてランチ営業を開始した。
「ランチ営業することにして、見つけたのがカラヒグ麺でした」と安達さん。カラヒグ麺とは、東京浅草にある製麺会社『浅草開化楼(あさくさかいかろう)』の不死鳥カラスさんと、イタリアンレストラン「サローネグループ」のシェフ、樋口敬洋(たかひろ)さんが開発した麺だ。開発者2人の名前をとって「カラヒグ麺」と名付けられている。
カラヒグ麺は生麺なので、乾麺なら10分は必要なゆで時間がわずか3分ほどと短い。つまり、時間のないランチタイムでも、注文を受けてからゆでたパスタを提供できる。
そのカラヒグ麺を使って「名物!極旨ナポリタン」が生まれたのは、麺の強さに負けないソースで、高円寺という土地柄にあったメニューを開発した結果だ。カラヒグ麺は生麺パスタ専用の小麦を使っていて味がしっかりしている。水分量が少ないため、コシが強い。一度シート状に伸ばしてから切っているため麺が四角い分歯応えもある。オイルパスタなどとも相性はいいが、その味と歯応えに見合った、しっかりしたナポリタンのソースが誕生した。
夜まで食べられて、お酒もセットにできるランチセット
「名物!極旨ナポリタン」のソースは、大きな鍋に少量のオリーブオイルとケチャップを入れて1時間ほどしっかり炒めたものだ。ケチャップが持つ独特の酸味を薄めるため、ソースが焦げる寸前まで水分を飛ばすとジャムのように濃厚になる。
そのケチャップベースのソースに、どちらも自家製のトマトソースとチリオイルなど加え、食べ応えのある大きさのソーセージやピーマンなどを加えて、カラヒグ麺を合わせる。盛りつけの仕上げに姉弟が食品の展示会で出合ったという京都・丹波産の卵でつくった温泉卵をトッピング。白身の奥に黄身が透ける様子も食欲をそそる。
「名物!極旨ナポリタン」のほか、パスタは常時10~11種類が用意されている。季節によって、黒キャベツの一種や菜の花、ホタルイカ、ポルチーニやルッコラなど、旬の素材がパスタに展開されているので季節感も感じられる。
11時からラストオーダーまで、いつでもランチセットが食べられるのも『高円寺ウシータ』の魅力だろう。ドリンクは、通常料金でもコーヒーやジュース、ハーブティーなど8種類から選べるが、追加料金でビールやワイン、イタリア産フルーツジュースなどへグレードアップも可能だ。
『高円寺ウシータ』は昼飲みや、低価格でお酒とおつまみが楽しめる“にせんべろ”も売りにしている。ワインの品揃えも多く、ランチセットとして追加料金で注文すると、単品で注文するよりも安い。スパークリングワインやグラスワインは通常600円のものが、プラス400円で飲めるとはありがたい。
ランチセットには、大きなハムが3枚のったボリュームあるサラダが付いている。このハムが、ほどよく上品で、お酒にも合う。その後に出てくる「名物!極旨ナポリタン」を食べると、しっかりと甘く濃厚なソースとカラヒグ麺の力強いコシとの相性のよさを感じる。
ソースはほんのり辛いので、温泉卵を割って黄身と絡めると、麺とナポリタンソースがそのマイルドさに包み込まれて、こちらもお酒と相性がいい。カラヒグ麺は、パスタなのにワシワシ系。他の麺とは異なる力強さで、おなかも大満足だ。
広々30席。マンガも置かれた気軽なイタリアン食堂
『高円寺ウシータ』に入ると、階段付近や店内奥に、たくさんのマンガ本が置かれているのに気が付く。店主安達さんとシェフ深谷さんは2人ともマンガ好き。一部は実家のある愛知県から持ってきたものだ。そのマンガを読みながら、食事する人の姿もちらほら見かける。
壁にたくさんのポスターが貼られているのは、アルバイトスタッフが劇団のメンバーだった縁。お店としても応援しているのだとか。
店主とシェフの姉弟は以前、東中野で深夜まで営業するワインバーを2人で開いていたが、安達さんの出産を機にその店を閉じた。しばらくして再び2人で、今度は高円寺で『高円寺ウシータ』を開いて、2026年で8年目となった。姉弟は、今の自分たちのライフスタイルや社会の変化に合わせるため、その時々で店のスタイルも柔軟に変化させながら、愛される店を作っている。
昼夜問わずお得なランチセットが食べられ、夜にちょっと一杯飲みたいにも応えてくれる『高円寺ウシータ』。1日中頼れるお店に気軽な気持ちで訪ねてみよう。
取材・文・撮影=野崎さおり






