物語をつなぐべく守り抜いた門前町の館『古民家カフェ 蓮月』【池上】

昭和8年(1933)築の木造2階建て。
昭和8年(1933)築の木造2階建て。
2階は旅籠(はたご)だった時代も。
2階は旅籠(はたご)だった時代も。
「もとは生きていた」木を使う木造建築との相性を考え、生花をふんだんに飾っている。
「もとは生きていた」木を使う木造建築との相性を考え、生花をふんだんに飾っている。
蓮月プレートランチ1990円とクリームソーダ(洋梨)1390円。
蓮月プレートランチ1990円とクリームソーダ(洋梨)1390円。
「蓮月庵」より前のそば屋時代の価格表も残る。
「蓮月庵」より前のそば屋時代の価格表も残る。
看板猫(不定期)のそば粉ちゃん。
看板猫(不定期)のそば粉ちゃん。

「困っている人がいると助けずにはいられないんですよ」と店主の輪島基史さん。長年親しまれてきたそば店「蓮月庵」が2014年に閉店、取り壊しの危機に瀕した建物を残そうと始動したプロジェクトから依頼を受けた。飲食店経営のノウハウもない輪島さんは当初断ったものの、結局地域の人々の要望に耳を傾けながら暗中模索で2015年にカフェをオープン。建物は老朽化が激しく修繕が追いつかないほどだったが、知り合いの大工が友達価格で直してくれるなど応援の力もあって乗り越えた。「この建物は人の情熱によって保たれていますね。思いがないとつないでいけません」。

思えば、輪島さんの前職は古着屋。古いものにストーリーを添え、付加価値をつくる仕事だ。「先日はここを建てた宮大工の娘さんが来てくれて、話をすることができました。この店は、人が代々つくってきてくれた土台の上に立っている。物語をつないで、どうやって次に残せるか考えていきたいです」。

住所:東京都大田区池上2-20-11/営業時間:11:30~18:00(土・日・祝は11:00~)/定休日:無/アクセス:東急電鉄池上線池上駅から徒歩8分

思い出が宿る銭湯の形をそのままに再生『レボン快哉湯(かいさいゆ)』【入谷】

番台に座って眺める脱衣所のカフェ。
番台に座って眺める脱衣所のカフェ。
自家製アイスクリームと自家焙煎コーヒーのマリアージュ1100円で、お風呂上がりのような気分に。
自家製アイスクリームと自家焙煎コーヒーのマリアージュ1100円で、お風呂上がりのような気分に。
故・早川利光のペンキ絵が圧巻。
故・早川利光のペンキ絵が圧巻。
「快哉湯」の文字が入った大きな振り子時計。
「快哉湯」の文字が入った大きな振り子時計。
元浴室のオフィスには、浴槽も残してある。
元浴室のオフィスには、浴槽も残してある。
塀を低くした以外はほとんど銭湯時代のままの外観。
塀を低くした以外はほとんど銭湯時代のままの外観。

明治後期創業の銭湯「快哉湯」。閉業後も建物を残したいというオーナーの思いが届き、木造が得意な建築会社・ヤマムラが改修と運営を担う。「ペンキ絵を塗り替える時は脱衣所でお茶を飲みながら見ていたとか、鏡は踊りの練習に使ったとか、歴史を知れば知るほど銭湯の形をできるだけ残すべきだと思いました」と、自身も常連客だった代表の中村出(いずる)さん。改修のメインは耐震補強で、天井の高い大空間を内側から支えるために書棚が梁(はり)の役割を果たしている。浴室は当初シェアオフィスにする予定だったが、改修するうちに惜しくなって自社のサテライトオフィスに。「緊張したし費用もかかったけど、思い入れはひとしおです」。

脱衣所には、近所のホテル運営を手掛けるベステイトが2020年にカフェをオープン。銭湯時代の空気感をそのまま体験として提供できる場となり、マネージャーの多田(おおた)真理さんは「なじみのある空間が残ってよかった、と近所の方に言っていただきます」とほほえむ。

住所:東京都台東区下谷2-17-11/営業時間:10:00~18:00(土・日・月は10:00~)/定休日:水/アクセス:地下鉄日比谷線入谷駅から徒歩3分

取材・文=中村こより 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2026年4月号より

店内にもうもうと立ち込めるタバコの煙。昭和から平成中期にかけて、喫茶店は喫煙者の安息地でもあった。その景色は時代と共に変化し、老若男女の憩いの場に。今も昔も誰かにとって大事な居場所だ。
1996年は、書籍・雑誌の売り上げがピークの年。その後、書店はどう歩んできたのか。大型チェーン店、個人経営の新刊書店、独立系書店、古書店と、違う形態の書店の店主の声を聞いた。
高層ビルが次々と建ち、東京のスカイラインは大きく変わった。「でも、本当の変化は足元にあります」と建築史家の倉方俊輔さん。ここ30年で進化した「街と建築の捉え方」とは?