【日本橋・人形町の切絵図】

江戸時代後期の江戸人口は100万人を超し、当時、世界最大の都市といわれた。その中心となるのが日本橋あたり。切絵図でグレーの部分は町家を示すが、商店というカテゴリーはないので商店は町家に含まれる。『日本銀行本店本館』や日本橋三越本店、さらに江戸時代創業の商店の数々が今も歴史を紡いでいる。昔も今も商業タウンなのだ。

切絵図の左下に「一石橋」があり、少し上に「金座」の文字が見える。中央部の白地のところが伝馬町牢屋敷。「囚獄」の文字と、牢屋敷長官であった「石出帯刀(いしでたてわき)」の名も見える。右下は人形町。現在では水天宮が有名だが、水天宮がこの地に移ってきたのは明治5年(1872)のこと。切絵図は嘉永3年(1850)の作成なので水天宮の名はない。

※掲載の古地図は、江戸の町を32区画に分割して作った切絵図を使用。すべて、麹町にあった金鱗堂が出版したもので、屋号である尾張屋清七から「尾張屋板(版)」と呼ばれる。鮮やかな多色刷りが特徴。
※切絵図内の白色の部分は【大名屋敷などの武家地・御用地】、赤色は【神社仏閣】、灰色は【町屋】、黄色は【道】、青色は【海・川・池】、緑色は【山林・土手・馬場・田畑など】を示している。

歌川國直『日本橋より一石橋を見る圖』。
歌川國直『日本橋より一石橋を見る圖』。

【散歩コース】

スタート:三越前駅は地下鉄銀座線で上野駅から7分・180円、地下鉄半蔵門線で大手町駅から2分・180円。

地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅→(1分/0.1㎞)→一石橋迷子しらせ石標→(3分/0.2㎞)→日本銀行本店本館→(5分/0.3㎞)→福徳神社→(11分/0.7㎞)→伝馬町牢屋敷跡→(すぐ)→銅鐘石町時の鐘→(6分/0.4㎞)→繁栄お玉稲荷神社→(20分/1.3㎞)→勧進帳の弁慶像→(5分/0.3㎞)→蛎殻銀座跡→(5分/0.3㎞)→小網神社→(6分/0.4㎞)→玄冶店跡→(1分/0.1㎞)→地下鉄日比谷線・浅草線人形町駅

ゴール:人形町駅から地下鉄日比谷線で上野駅まで7分・180円、地下鉄浅草線で新橋駅まで7分・180円。

今回のコース◆約4.1km/約1時間10分/約5500歩

迷子を知らせる石柱の伝言板「一石橋迷子しらせ石標」

江戸時代、この辺りは繁華街で迷子が多かった。親は迷子の特徴を書いた紙を石標に貼り情報を待った。当時は情報を得ることが大変で、迷子になると生き別れになることもあったという。

「一石橋迷子しらせ石標」詳細

住所:東京都中央区八重洲1-11/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日本橋駅から徒歩1分

今も昔もお金の聖地『日本銀行本店本館』

この場所は江戸時代に金貨の製造を行っていた金座跡。現在の建物は明治29年(1896)竣工。地下金庫などをガイド付きで見学できる。

『日本銀行本店本館』詳細

住所:東京都中央区日本橋本石町2-1-1/営業時間:9:30~16:15に4回案内/定休日:土・日・祝/アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩2分

幸運を呼ぶ縁起のよい社名「福徳神社」

貞観年間(859~877)の創建と伝わり、太田道灌や徳川家康など武将の崇敬が篤かった。江戸時代に富くじを扱っていたこともあり、金運や商売繁盛の祈願をする人が多い。

「福徳神社」詳細

住所:東京都中央区日本橋室町2-4-14/営業時間:拝観自由/アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩1分

吉田松陰が処刑された地「伝馬町牢屋敷跡」

十思(じっし)公園や大安楽寺、『十思スクエア』一帯が伝馬町牢屋敷があったところ。十思公園に吉田松陰の辞世の句を刻んだ石碑が立ち、『十思スクエア』別館内に牢屋敷の模型が展示されている。

「伝馬町牢屋敷跡」詳細

住所:東京都中央区日本橋小伝馬町5/営業時間:見学自由(十思スクエアは9:00~20:00)/アクセス:地下鉄日比谷線小伝馬町駅から徒歩1分

今は大晦日の除夜の鐘「銅鐘石町時の鐘」

徳川2代将軍秀忠の時代に、本石町(現在の日本橋室町)に設置された時刻を報せていた鐘。関東大震災後に東京都に移管され十思公園内に移設された。

「銅鐘石町時の鐘」詳細

住所:東京都中央区日本橋小伝馬町5/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線小伝馬町駅から徒歩1分

参詣者には伊達政宗の名も「繁栄お玉稲荷神社」

美人で評判のお玉は、2人の男に慕われたが、どちらか1人を選ぶことができず、悩んだ末に桜ヶ池に身を投げた。お玉の霊を祀る神社で、江戸の地誌で ある『江戸砂子(すなご)』にも取り上げられ、『江戸名所図会』などにも描かれる。

「繁栄お玉稲荷神社」詳細

住所:東京都千代田区岩本町2-5/営業時間:拝観自由/アクセス:地下鉄日比谷線小伝馬町駅から徒歩5分

見得を切る姿は迫力満点「勧進帳の弁慶像」

人形町は約350年前に市村座と中村座が歌舞伎を上演し、浄瑠璃などの小屋も多い興業街だった。これを顕彰して建てられた像で、歌舞伎十八番の『勧進帳』の弁慶を表している。

「勧進帳の弁慶像」詳細

住所:東京都中央区日本橋人形町2-36-13/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・浅草線人形町駅から徒歩5分

江戸時代後期の銀座はココ「蛎殻銀座跡」

銀座とは、銀貨の製造や銀地金の購入などを扱う役所の総称。慶長17年(1612)に現在の銀座2丁目に置かれたが、寛政12年(1800)に蛎殻町に移設され、明治2年(1869)まで続いた。

「蛎殻銀座跡」詳細

住所:東京都中央区日本橋人形町1-17-8/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・浅草線人形町駅から徒歩1分

ビルの谷間の古社で金運アップ!「小網神社」

室町時代に創建された稲荷社を起源とし、明治時代初期の神仏分離令により小網神社と改称。銭洗いの井で金銭を清めると金運を授かるといわれ、多くの参拝者が訪れる。

「小網神社」詳細

住所:東京都中央区日本橋小網町16-23/営業時間:拝観自由/アクセス:地下鉄日比谷線・浅草線人形町駅から徒歩4分

歌舞伎や歌謡曲の舞台「玄冶店跡」

幕府のお抱え医者であった岡本玄冶の屋敷跡。歌舞伎の名作『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』の舞台としても有名で、年配の方には春日八郎が歌った『お富さん』の舞台としても知られる。

「玄冶店跡」詳細

住所:東京都中央区日本橋人形町3-8-2/営業時間:見学自由/アクセス:地下鉄日比谷線・浅草線人形町駅から徒歩1分

【技を極めた一品を!】

300余年の歴史をもつ楊枝専門店『さるや』

宝永元年(1704)創業の日本で唯一の楊枝専門店。黒文字の木を使い、熟練の職人が1本ずつ手作業で作る。猿を描いた桐箱入り三番叟(さんばそう)1540円。

『さるや』店舗詳細

住所:東京都中央区日本橋室町1-12-5/営業時間:10:00~17:00(土は12:00~)/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩3分

ここにも注目!

歌川広重『東都名所 駿河町之図』

現在、日本橋三越本店があるあたりは富士山が望めることから「駿河町」と呼ばれていた。錦絵には三井越後屋(三越)と富士山が描かれ当時のにぎわいが伝わってくる。

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取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『古地図であるく 大江戸散歩地図』より

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