北条政子の思いと震災の恐ろしさを伝える丈六仏【神奈川】
海のレジャーで人気の神奈川県逗子市。こちらにある古刹「東昌寺」の「阿弥陀如来像」は凄みさえ感じさせます。
まず、約2.6m大きさは圧巻の一言!
伝承によると、お釈迦様の身長は一丈六尺(約4.8m)あったとされています。そのことから、立って4.8m、座って2.4m前後の仏像は「丈六仏」と呼ばれ、全国的にも広く親しまれています。
頭部の後ろが欠け落ちていて、痛々しくも荒々しい雰囲気があります。これは関東大震災で頭部が落ちたためですが、それもまた像の生命感を強くしています。
またこの像には先代があるそうで、鎌倉幕府三代将軍であった源実朝が26歳という若さで迎えた非業の死を、母である北条政子が悲しみ作ったとものされています。
歴史の登場人物の思いや災害の恐ろしさを今に伝える貴重な仏像です。
町の人々に守られる巨大な2体の仏像【埼玉】
埼玉県熊谷市にある「平戸の大ぼとけ」。台座を含めると、4m近くにもなる巨像が2体もお堂にミッチミチに入ってる様子は大迫力です!
向かって左が「観音菩薩像」で右が「薬師如来像」で、いずれも江戸時代に作られたもの。
京都や奈良など、仏像の聖地ともいえるエリアにある像は、都(みやこ)で学んだ仏師やその系統の仏師が作ったものが多く、技術が高い分、像の雰囲気が似る傾向にあります。
しかし、こちらの二体など、都から離れた地で独学した人物の作であることも多く、個性的な顔の像が多々見られるのです。
大きさも木彫の坐像としては日本最大級で、見た目も唯一無二となると、拝観に行くしかないですね!
二体は、「源宗寺」というお寺の仏像でしたが、同寺は無住(住職がいない)となり、現在この大きな仏像は町の人々や市が、保存会を組んで守っています。
一般公開は、毎月第1・3日曜(8月を除く)の午前10時~正午。お見逃しなく!
着飾った姿の珍しいお釈迦さまがいる古刹【神奈川】
数多くの名刹古刹が点在する古都・鎌倉。素晴らしい仏像もいくつもありますが、今回はそんな中から「円覚寺」の仏殿に祀られる本尊「宝冠釈迦如来」をご紹介。
如来は「悟りを開いた者」を意味するので、きらびやかな装飾はつけず、質素ないでたちをしています。
しかし、こちらの像はその名の通り宝冠を被り、あざやかな装飾品を身にまとっているのです。
その理由として、「悟りを開いたといえど修行は一生続くもの」であり、また「薬師如来や阿弥陀如来と違って、釈迦如来は実際の人物(ゴータマ=シッダールタ)なので、俗世にある装飾をつけている」とのこと。
いずれにしても、きらびやかな如来像という珍しい像です。
また、大きさも丈六サイズあるので圧巻!
鎌倉のお寺めぐりの際には、漏らさずルートに組み込みましょう!
地域で一斉にご開帳されるタイミングを狙え!【茨城】
普段公開されていない仏像は、風通しが悪くなりカビや虫が発生してしまうこともあります。それを防ぐために、各地のお寺などでは風通しを良くして仏像を「虫干し」します。
茨城県の常陸太田市では、この虫干しを兼ねて文化財を多くの人に見てもらおうと、市内の貴重な仏像が一斉に公開されるイベントがあります。
どの仏像も、拝観チャンスの少ない貴重な仏像で、【前編】の「千手観音像」はもちろんですが、同時期に公開される「中染阿弥陀堂」の「鉄造 阿弥陀如来像」も必見です。
ご存知の通り、日本の仏像は木彫が多いのですが、金属製の場合は銅がよく用いられます。
しかしこちらの阿弥陀如来像は鉄製。銅より融解温度が高いので、仏像には向かない素材とされていますが、鎌倉時代には鉄の仏像の作例もしばしば見られます。
これは、武士の文化が始まり、強い鉄は刀剣などにも使われ、力の象徴となったためと考えられているのです。
時代によって仏像の素材が変化するのは面白いですね!
ウルトラマンにも登場した巨大観音像【栃木】
栃木県宇都宮市は「大谷石(おおやいし)」という石の産地です。柔らかく加工しやすい特性から、建材などに長く重宝されてきました。
そんな良質な石の産地にそびえたつのは、高さ27mにも及ぶ石造の「大谷平和観音」です。
第二次世界大戦の戦没者供養と、世界平和を祈念して戦後すぐの1948年(昭和23年)から制作が始まりました。
地元大谷の石工たちが、6年の歳月をかけてこの巨大な観音像を完成させます。
そしてなんと、この観音像は1981年(昭和56年)に放送された『ウルトラマン80』の 42話にも登場!
ウルトラマン80とともに怪獣を倒すシーンは必見です!
隣接する「大谷寺」には、弘法大師(空海)が彫ったとされる、日本最古の石仏もあるので、合わせて拝観すことをオススメします!
都(みやこ)から遠い地でも、こうして素晴らしい仏像が数多く残っています。
京都や奈良に行かなくても、都内から日帰り可能な圏内ですので、お出かけの参考に是非!
写真・文=Mr.tsubaking