住宅地に5体もの巨大な仏像が【品川区】

身長184cmの筆者と比較しても巨大。
身長184cmの筆者と比較しても巨大。

まずは品川区。JR横須賀線の西大井駅から徒歩10分の場所にある「如来寺」です。

閑静な住宅地にあるお寺なのですが、お堂に入ると驚きの声をあげそうになるほど大きな仏像が並んでいます。

それぞれ、薬師如来・宝生如来・大日如来・阿弥陀如来・釈迦如来で、あわせて「五智如来」と言われています。

密教では5種類の智慧(真理を見極めること)があるとされ、それに倣った5体の如来像が、五智如来として祀られることがあります。

とはいえ、これほどまでに大きな五智如来は国内でも他に例はありません。

仏像や仏教に興味がない人でも、シンプルに「うわ~!すげ~!」と、長時間眺め続けられるほどの圧倒的な存在感があります。

その大きさは最も大きな大日如来(中央)で約3.2m。

高層ビルや巨大建築に見慣れた現代人でも、圧倒されるのですから、この仏像が作られた江戸時代の人々はさぞかし驚いたことでしょうね。

会えるのは年に1度だけ!貴重なチャンスを見逃すな!【国分寺市】

長い歴史の中で金色から黒に。
長い歴史の中で金色から黒に。

仏像好きが興奮することの中に、「秘仏ご開帳」というものがあります。普段は厨子(仏像を祀る箱)の扉が閉ざされ拝観することができない仏像を秘仏と言い、それを、決められた日や期間だけ扉を開けることを「ご開帳」と言います。

商品広告の「今だけ!」や「期間限定!」に惹かれるように、ご開帳は特別なのです。

国分寺市の「武蔵国分寺」の御本尊である薬師如来像も、10月10日の年に一度だけご開帳される秘仏。

ご開帳の当日は、この日を心待ちにした人々が各地からやってきます。

高さ1.95mの大ぶりな像で、平安時代に作られたとのことで、1200年もの歴史を持っています。

かつては金箔で覆われていましたが、現在はそれが剥がれて黒い漆が表面に。

ピカピカの金箔よりも、なんだかこちらの方が歴史深さと「Let it be」な感じがしてグッときますね。

周囲の仏像は江戸時代など後年の作。
周囲の仏像は江戸時代など後年の作。

そんな薬師如来の両脇には日光菩薩・月光(がっこう)菩薩、そしてその周囲には十二神将という仏が並んでいます。

こちらはいわば、薬師如来をキャプテンとするチームで、各地のお寺でも同じメンバーが見られます。

仏像が動いた!?あの日を偲ばせる観音像【中央区】

中央の観音像の後ろに……。
中央の観音像の後ろに……。

中央区人形町。オフィスビルと江戸風情の同居するこの街にある「大観音寺(おおかんのんじ)」にも、ぜひ拝観していただきたい仏像がいます。

パッと見、小ぶりながら流麗なラインが際立つ観音像が目に入ると思います。しかし、その後ろをよ~くご覧ください。

巨大な顔があるのがお分かりいただけると思います。

こちらの御本尊は、この大きな仏頭(仏像の頭部)なのです。

普段は拝観できない秘仏で、ご開帳は毎月11日と17日。

元々は17日のみのご開帳でしたが、ある出来事がきっかけで11日にも開帳をするようになりました。

それは2011年3月11日の東日本大震災。

この大観音寺も、大きな揺れに見舞われました。揺れが収まって、ご住職が本堂の様子を見に行ってみると、仏具なども倒れておらずホッと一安心。御本尊を確認するため、扉を開けてみるとビックリ!

それまで正面を向いていたお顔が斜めを向いているのです!

軽い仏具は倒れることもなかったのに、2mもの大きさのある鉄製の重たい仏頭だけが動いていました。

ご住職はあえて仏頭を斜めのままにし、毎月11日も「東北を想う日」として、御本尊をご開帳することにしたのでした。

オシャレな街にまさかの巨大な仏像が!【港区】

出典:長谷寺公式HP
出典:長谷寺公式HP

まさに都会のど真ん中とも言える麻布。青山通りや骨董通りからほど近い場所にある「長谷寺(ちょうこくじ)」に驚くような観音菩薩像が立っています。

天を衝くような像の大きさはなんと10m!

頭上に11の顔を持つ「十一面観音菩薩像」です。

観音像は、人々のどんな願いでも全て救うために、いろいろな姿に変身しますが、十一面観音は東西南北のどの場所にいる人の願いでも漏らさず聞くという意味で、頭上にぐるりと顔がついているのです。

この場所には、江戸時代から約8mの観音像が立っていて、江戸の町の人々から信仰を集めていました。

しかし第二次世界大戦中の1945年、像は空襲に遭って消失してしまいます。

それでも、像の再興を願う人々の思いが通じ、10年の制作期間をかけて1977年に現在の観音像が2代目として完成しました。

まさに、変化し続ける現代の東京を見守ってきた観音像なのです。

都会のど真ん中にいることを忘れさせてくれる像、必見です!

秀吉も愛した全方位型の仏像とは【台東区】

英信寺に参拝する筆者。
英信寺に参拝する筆者。

七福神のメンバーとしてもおなじみ「大黒天」。

まあるいシルエットと笑顔が、福の神らしいハッピーさ満点ですよね!

ところが、そのルーツはヒンドゥー教の破壊神なのです。そんな暗黒な一面を持つ大黒天のダークな雰囲気を残す像が、全国には点在しています。

台東区入谷にある「英信寺」の像もその一つ。

まさに異形! 3つの顔を持つ大黒天!
まさに異形! 3つの顔を持つ大黒天!

笑顔ではありますが、その奥になんだかブラックな雰囲気を感じませんか?

そしてよく見てみると、顔が3つ付いています!

これは比較的珍しい、「三面大黒天」という像。

両脇についているのは、右が毘沙門天で左が弁財天です。

大黒天は金運の御利益があるとされていますが、そこに毘沙門天の勝負運や縁結びなど、さらに弁財天の学問や技芸上達といった御利益まで追加されていて、全方位型の仏と言えるでしょう。

そんな万能な仏を、あの豊臣秀吉も大事にしており、肌身離さず持っていたと伝えられています。

 

東京にもこんなに多くの素晴らしい仏像があること、意外に思われた方もいるのではないでしょうか。

しかし、この他にも都内にはまだまだ拝観してほしい仏像がたくさん!

というわけで、「東京のオススメ仏像」は後編に続きます。お楽しみに!

写真・文=Mr.tsubaking