ハイキングコースに巨大な磨崖仏【神奈川】

切り立った岩が特徴的な鷹取山。
切り立った岩が特徴的な鷹取山。

神奈川県横須賀市にある鷹取山。

標高は139mという低山のため気軽なハイキングコースとして人気があります。

歩いていると目につくのが、垂直に切り立った岩肌。鷹取山は古くから、良質な石の取れる採石場としても有名でした。

現在では、層が表出した綺麗な模様の岩肌を登るロッククライマーの姿を見かけることもしばしばです(岩登りには許可申請と指導員の同行が必要です)。

アフガニスタンのバーミヤン大仏を彷彿させる。
アフガニスタンのバーミヤン大仏を彷彿させる。

この良質の岩の間を縫うように進んでいくと、目の前に現れるのが『弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)』です。

その像高は8mにも及ぶ巨像で、出合った瞬間に思わず声が漏れるほどの大きさ!

顔立ちは、日本の仏像とは異なりエキゾチックな大陸風。彫刻家の藤島茂氏が1年かけて制作し昭和40年ごろに完成したものです。

ハイキングがてら、巨大な磨崖仏を鑑賞して見てはいかがでしょう?

見渡す限り石仏だらけの石仏パラダイス【富山】

山あいに無数の羅漢(らかん)像が並ぶ。
山あいに無数の羅漢(らかん)像が並ぶ。

石仏や磨崖仏には、大きなものも多く「でかっ!」というシンプルな感動を得られます。

一方で、富山県の神二ダム湖畔にある『おおざわ石仏の森』は「多い!」という、数のパワーを感じられます。

季節によって花々も美しく。
季節によって花々も美しく。

山の斜面に並ぶ石仏はなんと500体以上!

これらは「羅漢」と言われるお釈迦さまの弟子たちで、有名で徳の高いお坊さんです。

一体ずつポーズも表情も違い、愛らしい像やメッセージ性の強い像など様々なので何時間いても見飽きることがありません。

ピースサインの石像まで。
ピースサインの石像まで。

また、ここからすぐ近くには『ふれあい石像の里』という場所も。

こちらは、お坊さんや有名人ではなく現代の一般人の像がズラリと並んでいます。

スーツやシャツなど、現代的な服装をした人物が石像になっていると、羅漢像よりも一層リアリティが高く、その人の性格や人生までが迫ってくるようで、少しの怖ささえあるほど。

お気に入りの一体を探してみるのも面白いかもしれませんね!

30mを超える巨大な薬師如来の磨崖仏【千葉】

巨大な薬師如来像。
巨大な薬師如来像。

房総半島の南側、千葉県鋸南町にある『日本寺大仏』は、高さなんと31m!

奈良や鎌倉の大仏の倍以上の大きさを誇ります!

江戸時代に有名な石工が約30人の弟子たちとともに3年もの月日をかけて制作した『薬師如来像』です。

完成当時は今よりもさらに大きな37mというサイズでしたが、露座(屋外に祀られること)のため風雨にさらされ傷み、昭和時代の修復で現在のサイズと姿になりました。

露座なので天候によって雰囲気の変化も楽しめる。
露座なので天候によって雰囲気の変化も楽しめる。

それでも、思わず自然と手を合わせてしまうような大きさです。

あらゆる病を治癒させる薬が入っているとされる薬壷を持つ左手。膝の上に乗せている姿が一般的ですが、こちらはやや持ち上げた姿。

仏像マニアの筆者としては、「今まさに薬を使って、私たちを癒やそうとしてくれている表現」なのではないかと空想を巡らせます。

コロナという疫病が猛威を振るうここ数年、病気平癒や疫病退散のご利益があるとされる薬師如来にお参りに出かけてみてはいかがでしょう。

かわいい!でも謎も深い不思議な石仏【長野】

他に類を見ない形は一見の価値あり。
他に類を見ない形は一見の価値あり。

全国に点在する石仏や磨崖仏の中でも、キョーレツな個性を放つのが、長野県にある『万治の石仏』。

ゆるい三角形の体に、ちょこんと乗っかった顔。このシルエットを遠くから見ただけで、筆者は心を射抜かれてしまいました。タイトルにも「かわいい」と入れましたが、この万治の石仏がかわいくてたまらないんです笑。

諏訪大社の鳥居を彫ろうとしたら、その石から血が流れ出したため、阿弥陀如来を彫ることにしたという伝説のある石仏。

この愛らしいフォルムは、あの岡本太郎氏も心酔していて、万治の石仏に会うためだけに何度もこの地を訪れたそう。

胴の部分に意味深な柄が。
胴の部分に意味深な柄が。

しかし、胴体をよくみると逆さ卍や月や太陽の彫刻も見られます。阿弥陀如来には一般的にこうした彫りを施すことはなく、ここに記されている真相は謎。

かわいさの裏に、ミステリアスな部分も秘めた貴重な石仏です。

神か仏か!? 石仏のメッカのローカル石仏【大分】

ひっそりとした山で口を開ける洞窟。
ひっそりとした山で口を開ける洞窟。

大分県には国宝に指定されている臼杵石仏をはじめ、たくさんの有名な石仏や磨崖仏があります。その中では無名で、この記事の中でも最も無名ですが大分県竹田市の『上坂田磨崖仏(かみさかだまがいぶつ)』がオススメです。

近づくとその巨大さがヒシヒシと。
近づくとその巨大さがヒシヒシと。

人気のない山道を入っていった先、岸壁をくり抜かれた洞窟の壁に彫られた2mを超える像。

1853年に彫られた「磨崖仏」とされていますが、つり上がった目や歯を露わにした口、さらに両肩に生えた翼は、仏には見られないものです。

おそらく、ローカルな古い信仰に根ざしたインディーズな神様だと思われます。地元に人からは「神明様」と呼ばれているようです。

神か仏か、はたまた妖怪か。
神か仏か、はたまた妖怪か。

鼻が誇張されていることと、近隣にある彦山に天狗信仰があることから、天狗の像であると考える専門家もいますが、真相はミステリー。

有名石仏と温泉とともに、大分旅にワンダーな神明様も加えてみるのも良いかもしれません。

山道の先に大きな仏の顔が現れる!【群馬】

空を見上げるように彫られた仏像の顔。
空を見上げるように彫られた仏像の顔。

群馬県甘楽郡にある『長厳寺』。

こちらの裏山を4~5分ほど登ると、木々のなかから現れる巨大な仏像の顔!

なんとその大きさは高さ10m・幅8m!

鎌倉大仏が全身で約13mということを考えると、いかに巨大かが伝わるでしょうか。

しかもこれを作ったのは、僧侶でも仏師でもない吉田文作氏という一般の人。

氏は仏教彫刻に興味を持ち、還暦を迎える前に磨崖仏を完成させようと1979年(昭和54年)から6年もの時間をかけて彫りあげました。

身長183㎝の筆者と比べても大きい。
身長183㎝の筆者と比べても大きい。

如来像の決まり事である「螺髪(らほつ)」というヘアースタイルや眉間にある白毫(びゃくごう)、半顔微笑(はんがんびしょう)とされる表情まで、素人仕事と思えないほどきちんと作られていることにも驚かされます。

この森で、一人の男性が6年にも渡って情熱を傾けたことを考えると、感慨深いものがありますね。

木や金属とは違った風合いと魅力のある石仏(磨崖仏)。露座が多いので、気軽に拝観できるのも魅力です。今回ご紹介した石仏や磨崖仏を、旅やお出かけの工程に追加してくださる方がいれば嬉しいです!

写真・文=Mr.tsubaking