宝くじの御利益がある巨大涅槃像【福岡】
かつて、日本で一番有名な涅槃像といえば、国宝に指定されていることもあり法隆寺の五重塔にある像だったと思います。
しかし、SNSが発達したこの時代、ビジュアルのインパクトが強いものが一気に拡散されます。そうしたこともあって、現在は福岡県篠栗町にある『南蔵院』の涅槃像が日本一有名と言えるでしょう。
何より目を引くのがその大きさ!なんと、全長41m・高さ11mにもなります。
また、こちらの涅槃像には「宝くじ当選」の御利益があるとも言われており、当選祈願の参拝者がたくさん訪れています。
この涅槃像が完成したのが1995年なのですが、その翌月、こちらの住職が宝くじで1億3000万円を手にしているためです!
なんだか欲にまみれた感じがするかもしれません。
しかしこの像は、南蔵院が東南アジアの子供たちに医薬品や文房具などを送り続けていた返礼として、ミャンマー国仏教会議からお釈迦様らの仏舎利(遺骨)の贈呈を受け、それを安置する場所として作られたものなのです。
お昼寝!?リラックスしすぎな涅槃像【群馬】
群馬県みどり市、ツーリングやドライブでも人気の国道122号線沿いに『草木ドライブイン』があります。
その敷地内に、一目見れば誰もが微笑んでしまうような涅槃像が。
それは、まるでお昼寝をしているかのようなリラックスした姿。
衣の柔らかな流れなどからも、なんとも力の抜けた感じが伝わって来ます。
こちらの像は、袈裟丸山の中腹にある涅槃像のレプリカ。本物は、ここから山道を約1時間も歩かないと見られないため、高齢者や子供でも参拝ができるようにと、1999年に作られました。
そもそも「涅槃像」とは、お釈迦様が亡くなった時の姿を表したもので、涅槃とは欲求や煩悩が亡くなった悟りの境地のことです。
人間、生命がある限り食べたい・眠たい・サボりたいなどの煩悩が起こります。しかし、亡くなってしまえばその煩悩も消えるため悟りに至ると仏教では考えられています。
そうやってこの像を見てみると、方向性は違いますが、確かに色々と満たされてすでに煩悩や欲求がないようにさえ見えてきますね!
ごろ寝でテレビのチャンネルを変えるお父さん?【愛知】
愛知県岡崎市の山の中『一畑山薬師寺(いちはたさんやくしじ)』には、約9mの大きな涅槃像が祀られています。
左手が前に差し出され、そこに乗せられているのは、どんな病気もどんな迷いも消し去る薬が入っているという薬壺(やっこ)。
そこから、この像が釈迦如来ではなく薬師如来の涅槃像であることがわかります。
それにしてもこのポーズ、休みの日のお父さんがテレビを見てゴロゴロしながらリモコンでチャンネルを変えようとしている姿に見えるのは筆者だけでしょうか。
そんな親近感さえ覚える涅槃像ですが、あらゆる病気を治める御利益があると考えられているので、ここ数年はコロナ終息やコロナ治癒を願う人も多く訪れています。
像の上には、薬師如来が暮らす世界を表したステンドグラスが嵌められており、色鮮やかな光を落としている点も見どころ。
また、多様化する時代にあって、個々にマッチした祈願に対応しようとしているのも、こちらのお寺の特徴。
スポーツでの勝利祈願などを受ける寺社はたくさんありますが、サッカー・バスケなど競技ごとにお守りが分けられているのは、初めて見ました!
妖怪博士がのこした公園内の涅槃像【東京】
東京都中野区にある『哲学堂公園』。23区内と思えないほど自然豊かで風光明媚な場所で、2020年には国の名勝にも指定されました。
公園を作ったのは、東洋大学の創始者で哲学者でもある井上円了。
公園の中に、現在は四聖堂ですが当初は哲学堂と呼ばれていて、この公園の起源とも言える建物があります。
四聖とは、孔子・釈迦・ソクラテス・カントで、井上円了がもっとも影響を受けた4人の世界的哲学者のこと。
そのうち、釈迦の涅槃像がお堂の中央に横たわっています。
お釈迦様が亡くなられた時、右の脇を下にして横になったと伝えられています。一般的な涅槃像はそれに従って右脇を下にして作られていますが、こちらは珍しい仰向けの像です。
普段は非公開ですが、月に一度と春と秋に公開されますので、気になった方は哲学堂公園のwebサイトをチェック!
また、井上円了は妖怪博士としても知られていて、公園内には幽霊像や天狗像などもあるので探して見てください!
これは植木!?いや涅槃像だ!【兵庫】
薬師如来の涅槃像やリラックスしすぎの涅槃像など、個性的な涅槃像をご紹介して来ました。
それでも、兵庫県姫路市の北部に位置する福崎町の『応聖寺』に安置される涅槃像は、特に強烈な個性を放ちます。
同寺は「関西花の寺」にも選ばれており、沙羅をはじめとしてサクラやユキヤナギなど、四季折々に色々な花が咲き乱れる美しいお寺です。
そんな境内の一角に、低木の植木に見える塊が。しかし、よく見てみるとそれはなんと涅槃像!
頭と足が石像で、その間の胴体がツツジ科の「サツキ」の木になっているのです。
表情は厳しげにも見えますが、サツキによって優しさと包容力も感じられるという不思議な像。
また、胴体がサツキなので季節によって衣が自然に変わります。
一度だけでなく、時期を変えて何度もお参りに行きたくなる涅槃像です!
死の瞬間を表現した涅槃像ですが、どれも悲壮感がないのは、やはり仏教では「涅槃=悟り」と考えられているからかもしれません。
お気に入りの涅槃像は見つかりましたでしょうか? 旅やお散歩の、目的地の一つに加えてもらえれば幸いです。
写真・文=Mr.tsubaking