自然の中にいるような癒やしの空間
人や車の往来が比較的多い、井の頭通り沿いで営業を行う『カフェ海猫山猫』。ブルーのテント看板の下は一面ガラス戸という出で立ちは、どこか昔ながらの商店を思わせる。
中に入ると、広々としたスペースに、スモーキーブルーの壁がアクセントになった落ち着いた空間が露わになる。店主の堀薫さんは、夫である泰彰さんの建築設計事務所の移転を機に、このカフェをオープンした。
「自分のカフェをいつかオープンしたいと思っていて。夫の事務所の移転とタイミングが重なり、カフェにも適した物件を探していたところ、この一軒家に出合ったんです。2階は夫の事務所になっています」と堀さん。
以前は町の電気屋さんだったというこの物件。壁のペイントやインテリアの一部は二人でDIYしながら、現在のかたちに造り上げていった。夫婦揃って自然が好きということもあり、内装には随所に海や山を思わせるアイテムがあしらわれている。屋久島の森を写したポスターや、一筆描きで描かれた山の絵などは堀さんの友人が手がけたものだという。
出入口の脇には金魚の水槽が飾られている。梅(ウメ)と名付けられたこの金魚は、近所の子どもたちものぞきに来るほどの人気者。ペットの同伴を可能としているこの店では、時に金魚だけでなく犬やフクロウなどの動物も居合わせることがある。メニューには犬用のドリンクなども用意されているので、愛犬と一緒にカフェタイムを楽しみたい人にはおすすめだ。
体にいいものをおいしく手軽に
メニューには、エステティシャンの経験を持つ堀さんの美容や健康への関心が表れている。たっぷり野菜が摂れるオープンサンドやスムージーをはじめ、曜日ごとに替わるランチも玄米や野菜を使って健康を考えた構成となっている。
それは、デザートも例外ではない。火を使わずに作ることからローケーキ(raw=生)と呼ばれる、ヘルシーなスイーツが楽しめるのだ。加熱の工程を挟まないことで、酵素や栄養素を生きたまま取り入れることができるのだという。レシピは、卵や乳製品不使用のお菓子作りを得意とするアーティスト・石井織絵さんが監修。このケーキには小麦粉や白砂糖を一切使わず、カカオバターやメープルシロップなどで代用している。
「使う材料が一般的なケーキとは違うので、味気ないと思われる方も多いのですが、実際に食べていただくとおいしいと仰ってくださるお客様が多いです」と堀さんは話す。
そんなローケーキと合わせたのは、創業以来人気の高いオリジナルブレンドの中から、独特の苦みとスモーキーな風味が特徴という山ブレンド。この店で提供するコーヒーは、神楽坂にあるコーヒースタンド&ロースタリー『Swing by Coffee』からオリジナルブレンドをはじめ、ブラジル産やインド産のシングルオリジンの豆を取り寄せている。最近、提供を始めたというオーガニックラムとコーヒーを合わせたドリンクもイチオシだとか。
2022年11月末からは、火曜と木曜(最終週のみ火曜と金曜)のみで夜営業もスタート。ビールやワインのほか、堀さんが太鼓判を押すジンやウイスキーを揃え、昼とはまた違った楽しみ方を提供している。旅行好きな堀さんが旅先で見つけた食材を使って作る旅プレートや、なかなか予約が取れないことで知られる三鷹の人気店『玄関食堂』のフードをデリバリーして味わえるのは夜営業ならでは。
居心地のいい空間を提供し、三鷹の憩いの場として愛される『カフェ海猫山猫』。これからも、新たなメニューや取り組みを重ねていきながら、訪れる人に充実した時間を与えてくれるはずだ。
『カフェ海猫山猫』店舗詳細
取材・文・撮影=柿崎真英