青山の街になじむ優雅なフォルム
3路線が乗り入れる地下鉄青山一丁目駅に着き、青山通りに出た。見上げれば高層ビルの青山ツインや、Honda本社ビルが空に背を伸ばす。この辺りは大手企業の本社がいくつかあり、サラリーマンの往来も多い。少し南側へ歩くと、一転して静かな青山公園に到着。木々の向こうには、有機的な曲線美をもつ「パークコート青山ザ・タワー」が。
「設計は、世界的インテリアデザイナーのブルーノ・モワナー氏、ガラス師のエマニュエル・パロワ氏、彫刻家の安田侃(かん)氏を起用しています。360°どこから見ても曲線の美しいフォルムなんです」と石川さん。
青山通りに戻ったら、『伝統工芸 青山スクエア』で職人技が光る全国の伝統的工芸品を物色。伝統的工芸品と聞くと高級なイメージがあるけれど、そのほとんどが日用品だ。お椀や漆塗りのグラス、お箸など手ごろな価格帯も結構ある。こういう“本物”を少しずつ買い足していくと、暮らしが豊かになるんだよな。
界隈の緑の多さを実感する隠れ家カフェ
青山通りをさらに東に進むと、高橋是清翁記念公園の緑が目に飛び込んでくる。庭園の池の水が涼しげで、都会のオアシスとはこのこと。その横に建つのが、丹下健三設計の『草月会館』。「いけばな草月流」の拠点となる文化施設で、気軽に参加できるいけばな体験レッスンも行われているそう。
『草月会館』2階には、知る人ぞ知るカフェ『Connel Coffee』が。ガラス張りの店内からは、高橋是清翁記念公園を一望。こちらで買ったコーヒーやラテは、同じく2階の談話室で飲むこともできる。窓際のカウンター席は、赤坂御所の緑を見渡す特等席!
『草月会館』を出て南西に進むと、新坂を渡った先にあるのが「赤坂アーバンライフ」。石川さんによると「1971年築のヴィンテージマンションです。ブラウンタイルと、突き出た2つの搭が特徴的で、一見ホテルと見間違うほど風格のある外観ですね」。
同じくヴィンテージマンションとして人気の高いのが、1975年築の「赤坂パークマンション」だ。「三井不動産のマンションブランドのなかでも、最上級の高級ブランドが『パークマンション』。その第一号として誕生したのが、こちらなんです」。
ほかにも、三菱地所レジデンスの「パークハウス」など、青山一丁目・赤坂周辺は、各マンションの高級ブランド第1号が生まれた場所でもあるのだ。
坂の上で羽を休める巨大な鳥とは?
ここらで昼休憩をと思い、ドイツ文化会館にあるドイツ・オーストリア料理の店『Mahlzeit(マールツァイト)』へ。そういえば、今回の散歩エリアはカナダ大使館やカンボジア王国大使館など海外の公館が多い。「確かに、朝、ランニングしている外国の方も多いですね」とはドイツ料理のシェフ歴15年、山口雅鷹さん。肉を叩いて伸ばしたドイツのカツレツ、豚フィレ肉のシュニッツェルを注文すると、皿からはみ出すほどの大きさにびっくり!
続いて、南へ針路を取り赤坂中心部方面へ。途中、細い路地や個人商店もあり、青山通りとは雰囲気が変わる。赤坂7丁目にあるマンション「インペリアル赤坂フォラム」は、石川さんいわく「1ルーム、1DKの間取りが中心で、場所柄SOHOとして使われることが多いんです」。力道山が分譲した赤坂リキマンション所有のプールがかつてあった場所に、このマンションが建てられたというエピソードも面白い。
薬研坂に出て、青山通り方面へ戻ろうとすると、天を刺すようなタワマンが目に飛び込んでくる。「市街地再開発事業で2009年に誕生した、43階建ての『パークコート赤坂ザ・タワー』ですね。ユニークな三角形の建物形状は『薬研坂という高台に鳥が羽を休めている姿』がモチーフなんです」。
「パークコート赤坂ザ・タワー」から徒歩すぐの場所にあるのが、『Cheesecake plus』。こちらの店主は幼少時代からお菓子作りが大好きで、店の名物・チーズテリーヌのレシピが完成したとき「このおいしさをいろんな人に伝えたい」と、2019年にお店をオープンした。「仕事帰りにテリーヌを買ってくれる常連さんもいます。この辺りの住民やビジネスマンは、多少高くてもいいものを食べたい、という方が多い気がします」。
豊かな緑と、洗練された空気感と。庶民には手が届きにくいけれど、この街に住めばきっと毎日がキラキラして楽しいに違いない。