スマートフォン以降、同期される現代の“時間”を問う
これまで廃印刷工場で開催されたキュレーション展「惑星ザムザ」(2022年)やルーブル・アブダビ「Art Here 2025 Shadows」(2025~2026年)では日時計シリーズ『A Sundial for the Night Without End』を発表するなど、国内外で注目される現代美術家・布施琳太郎氏の個展が開催中だ。
かつて太陽の運行によって一日を知覚していた人々。しかし現在では、スマートフォンやSNSのタイムラインが生成し続ける「いま」の中で生きているともいえる。これまで直線的な秩序として捉えていた時間が、「偶然性」や「アテンション」によって絶えず更新されるものへと変化してきていることに着目する。
展覧会担当者の菅野さんは「本展は、布施が探究してきた『時間』をテーマに、日時計や風景映画、洞窟壁画に着想を得た作品を通して新たな『時間のかたち』を具体化する試みです。作家は『生成された現在』の外側に存在する知覚を『タイムトラベラー』という存在として提示。スマートフォン以降の現代社会における新たな時間概念を表現しました。映像、平面、彫刻作品で構成された展示空間で、布施の新たな時間概念との邂逅をぜひご体感ください」と語る。
時間と出合い、タイムトラベラーになる空間
展示作品は約24時間におよぶ風景映画がメイン。これらの映像は、春分の日に世界中のライブカメラを通じて、地球一周分の日出と日没を24時間かけて観測した映像を用いている。太陽が地平線に触れる瞬間だけを追い続けた映像は、時間が流れるというよりも、静止した無数の「いま」が折り重なっていく感覚を浮かび上がらせる。
「タイムラインに対して、タイムトラベラーは同期できない現在を象徴する。僕はここに芸術の役目を見出している。観客ではなくタイムトラベラーをつくるための芸術実践。それこそが僕がやりたいことだったのかもしれない。(中略)ストーンヘンジやピラミッド、そして世界各地の日時計が、宇宙の原理としての『時間のかたち』をモニュメント化したように、本展ではスマートフォン以降の世界で変質した時間を、もう一度、模型や映像や絵画として立ち上げようとする」(布施琳太郎氏)
“時間”の再発明の場となった展示空間で、「測る」ものではなく、そこに在る“時間”と出合う。そんな「タイムトラベラー」体験を味わえるはずだ。
開催概要
布施琳太郎「タイムトラベラーのための展覧会」
開催期間:2026年5月22日(金)~7月4日(土)
開催時間:13:00~19:00
休館日:日・月・火・祝
会場:SNOW Contemporary(東京都港区西麻布2-13-12早野ビル404)
アクセス: 地下鉄六本木駅から徒歩8分
入場料:無料
【問い合わせ先】
SNOW Contemporary ☏03-6427-2511
公式HP http://www.snowcontemporary.com/exhibition/current.html
取材・文=前田真紀 画像提供=SNOW Contemporary






