奇抜な構図にみる、広重の革新的挑戦

歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」(前期)。
歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」(前期)。

江戸時代後期の絵師・歌川広重が最晩年に描いたシリーズ「名所江戸百景」。広重の旺盛な創意と挑戦が凝縮された名品として知られているこのシリーズが一挙に公開される。

太田記念美術館上席学芸員の渡邉晃さんは、「歌川広重が還暦を迎え、亡くなるまでの3年間に手掛けた超大作が「名所江戸百景」。シリーズ物として広重の生涯で最大の作品数をほこり、手前に巨大なモチーフを描く奇抜な構図や、それまで描かれなかった数多くの新しい名所、最新の時事ネタを作品に盛り込むなど、従来の名所絵の枠を超える、数々の工夫に満ちた最後の挑戦作でもあります。極上の彫摺(ほりすり)で知られる当館所蔵の全120点を、約8年ぶりに前後期で一挙公開します」と見どころを語る。

広重が晩年に挑んだ表現の革新と、その到達点を作品から読み解くことで、広重作品の圧倒的な魅力が体感できるはずだ。

歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(前期)。
歌川広重 「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(前期)。

新たな名所の開拓や最新の世相にも注目

歌川広重 「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」(後期)。
歌川広重 「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」(後期)。

本シリーズにおいて、構図以外にも新たな試みを随所に盛り込んだ広重。王子や目黒といった自然景観に恵まれた地域をはじめ、市中から郊外にまで視野を広げ、新たな名所を精力的に開拓した。さらに、黒船来航後の御台場建設によって削られた御殿山の姿を描くなど、激動する幕末の社会状況も敏感に捉えた作品も多数存在する。

『太田記念美術館』所蔵の「名所江戸百景」は、国内でも指折りのきわめて良好な保存状態と美しい彫摺を誇るもの。名作の全貌を間近で堪能できるのも大きな魅力になっている。

開催概要

「歌川広重『名所江戸百景』最後の挑戦」

開催期間:2026年4月15日(水)~6月14日(日)
《前期》4月15日(水)~5月10日(日)
《後期》5月15日(金)~6月14日(日)※前後期で全点展示替え
開催時間:10:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:月(5月4日は開館)・5月7日(木)・12(火)~14日(木)
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)
アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分、地下鉄千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入場料:一般1200円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名100円引き。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=太田記念美術館