納言志るこ店
心まで甘く包み込む、昔ながらの味わい
初代がこの地に開業したのは戦後のこと。近くの学校に通う女子学生が放課後に集まったり、恋心を抱く相手の顔を一目見ようと男子学生が訪れたり、胸がきゅんとなるような青春が繰り広げられていた。そんな昔なじみの客にも人気のクリームぜんざいが、夏のおすすめ。小豆の素朴な風味とアイスクリームの華やかな甘みが溶け合い、口の中でふわっと花開くのだ。さらに、鼻腔いっぱいに膨らむ甘い香り。嗚呼、うっとり。
『納言志るこ店』店舗詳細
珈琲ヲガタ
男の夢(!?)である‟俺流”を極めた店
コーヒーを愛して30年以上の緒形有紀さんが営むコーヒー店。看板はもちろん、自家焙煎の豆をハンドドリップした一杯だが、この店にはもうひとつ名物がある。「365日あんこを食べたいくらい好き」という緒形さんによる、その名もロールケーキ十勝小豆。製菓修業はしていない。小豆の粒の形を残しつつ、食べ進めるうちにふわふわの内側が現れるよう計算された完全俺流レシピだ。甘さ控えめで、コーヒーとのマリアージュもバッチリ。
『珈琲ヲガタ』店舗詳細
円覚寺如意庵茶寮 安寧 an-nei
悩めるおじさんをも癒やしてくれる
山裾に広がる境内に、清々しい空気が満ちる円覚寺。その住職の妻が、普段は非公開の如意庵で週3日のみ茶寮を開く。ぜひものは、安寧あんみつ。寒天は1、2時間かけて手作りし、白玉は注文が入ってから茹でるのでつるりとして弾力があり、噛むと軽く歯を跳ね返す。抹茶アイスには濃茶をたらり。「毎週のように通うおじさんもいる」そうで、きっとこの雑味のない甘みと、縁側から見える景色に心が洗われていることだろう。
『円覚寺如意庵茶寮 安寧 an-nei』店舗詳細
OXYMORON komachi
あれこれ着飾らないところが素敵
すっきりとした店内に味のある古家具を配置。色褪せたテーブルにこのプリン・ア・ラ・モードを置くと、ほっこりと落ち着いた雰囲気になりとても絵になる。ほろ苦いカラメルを纏ったプリンは、昔ながらの固めの食感で、卵の甘みがじんわり。脇に添えた生クリーム、アイスとのバランスや、香ばしい自家製サブレとの対比も絶妙だ。フルーツは、あえてバナナだけに。紛れもなくプリンが主役の、シンプルかつ端正な一品。
『OXYMORON komachi』店舗詳細
構成=柿崎真英 取材・文=信藤舞子 撮影=金井塚太郎、猪俣慎吾