丹精込めまくりの絶品洋食『洋食エイト』
「一度食べたら忘れられない味を届けたくて」と、シェフの長山文洋(ふみひろ)さん。仕込みに168時間かけるデミグラスソースや手びきのひき肉、自家製のパン粉など、手間隙を惜しまない。看板はBランチだ。肉感とソースのハーモニーに頬が緩むハンバーグ。衣ザクザク中トロトロのホタテクリームコロッケ。頭から豪快にかぶりつく天使の海老のフライの3連コンボで、童心に帰ったような幸福感を味わう。
『洋食エイト』店舗詳細
パリもちバンズとプリプリパティの衝撃『crafters』
都内で食べたグルメバーガーの味に感動した店主の中川雄太さんは、オリジナル製法のバーガーを作り上げた。パティは牛肉のブロックを部位ごとに大きさを変えて切り分け、つなぎを使わず手捏(ご)ねで圧着。バンズはベーグル生地がベースで、表面の焼き目がパリパリ、中はもっちりの食感が楽しい。かぶりつけば、ガツンと飛び込む肉の弾力と風味、小麦の甘みが口の中で躍り、気分がアガる。
『crafters』店舗詳細
重なる味の深みにハマる傑出したバランス感覚『湘南しんば』
鶏ガラに豚ガラと節類、煮干し類を合わせたスープがベース。醤油と塩の二枚看板だ。「バランスいい味にするため、毎日試行錯誤しています」と、店主の榛葉元(しんばげん)さん。醤油は、3種の醤油をブレンドしたスープが滋味深く、ツルシコ中太麺の喉越しが心地よい。一方塩は、4種の塩とさらに和出汁を加えた和風スープだ。なめらかな細麺とよく絡み、後味はすっきり。サバ丼も合わせて楽しみたい。
『湘南しんば』店舗詳細
2階建て古民家の風情が時の流れを忘れさせる『自家焙煎珈琲 ちえの実』
青森でサラリーマンをしながらカフェを営んでいた店主の石田友和さん。転勤を機に店を人に任せ、平塚へ移住。「こっちでも自分好みの店を作っちゃおう」と、築60年近い古民家を改装して、2020年オープンした。それぞれの豆の風味と魅力を引き出すため、自家焙煎。ネルドリップで、丸みのある味わいに仕上げる。窓際の席に腰かけ、レトロな調度品に囲まれながら、のんびりと過ごしたい。
『自家焙煎珈琲 ちえの実』店舗詳細
コーヒーと空間、雑貨や花も楽しんで『CORNER COFFEE & Design』
「店にあるもの全部を味わってほしくて」とは、店主の冨田良江さん。前職で店舗デザインをしていた経験を活かし、店を作った。グレーを基調とした壁に、木の柱の温かみ。「武骨なデザインにほれた」という米国製エスプレッソマシンで抽出したカフェラテの爽やかな苦みも相まって、ほっとひと息。雑貨や、フラワーコーディネーター・山本真由美さんのプリザーブドフラワーにも目が移る。
『CORNER COFFEE & Design』店舗詳細
知識と技術と遊び心が ゆるりとした空気を生む『ボタンカフェ』
多忙な日々を送っていた店主の中村果林(かんな)さん。「おいしいコーヒーで落ち着ける場所を作る!」と、カフェを開くため、コーヒーマイスターの資格を取得。2014年前に地元平塚で開店した。スペシャルティコーヒー専門の焙煎士から旬の豆を仕入れ、挽きや抽出時間を調整し、風味を引き出す。また、変わり種も。カフェラテにラム酒を加えた渋ラテは、口に含んだ瞬間芳香がぶわっ。ほろ酔いに。
『ボタンカフェ』店舗詳細
千石河岸で提灯を点(とも)す、孤高の食堂『あぶさん』
平塚漁港近くで暖簾(のれん)を掲げて18年。アジやカマス、カンパチといった地魚は、定置網漁の朝獲(ど)れが基本。しらすは平塚のしらす漁船から直接生で仕入れ、自らの手で釜ゆで、佃煮、醤油煮にし、たたみイワシも手製する。定食の吸い物も、旨味が出たしらすのゆで汁を生かしたものだ。人気の港めしは、葉蘭の上に地アジの刺し身にフライ、マグロの刺し身や漬けなどをぎゅっと盛り込んだもの。添えた酢飯がいい塩梅なのも店主・水島新次さんが元鮨職人と聞いて合点がいく。口数は少ないが、「なるべくおいしいものを出したい。それだけだよ」の言葉に思いが表れる。
『あぶさん』店舗詳細
取材・文=高橋健太(teamまめ)、林加奈子、沼由美子 撮影=原幹和、丸毛透、井原淳一、小澤義人