緻密でさりげない絶品料理の数々。『三献』(旧店名「畔家」)

地ダコとトマトの香味和え1200円は、ハーフサイズでの提供も可。
地ダコとトマトの香味和え1200円は、ハーフサイズでの提供も可。

鎌倉駅西口、通称“裏駅”至近。3階まで続く長い階段の先には、粋な料理と酒を気負わずに楽しめる空間が待っている。提供するのはコシの強い徳島の手延素麺「半田麺」を中心に、旬の魚介類や鎌倉野菜を使った一品料理。地ダコとトマトの香味和えを出して「ただ和えただけ」と店主・石松邦雄さんは謙遜するが、薬味どっさりでごちそう感がある。横須賀線のホームを眺めつつ、ちびちびやりたい。

休みの日にはフットサルで汗を流す石松さん。
休みの日にはフットサルで汗を流す石松さん。
トマトの煮浸しがドンとのった、人気の丸ごとトマトのぶっかけ麺1350円。
トマトの煮浸しがドンとのった、人気の丸ごとトマトのぶっかけ麺1350円。

『三献』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市御成町11-3 ウィンズ駅前3F/営業時間:11:30~14:00・17:30~22:30/定休日:火(不定あり)/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅からすぐ

ソムリエ夫婦が営む深夜のワイン食堂。『TRES』

「さっぽろ藤野ワイナリー」のロゼ(グラス)900円は肉料理に好適。水餃子はパクチーを合わせるとさっぱりした味わいに。
「さっぽろ藤野ワイナリー」のロゼ(グラス)900円は肉料理に好適。水餃子はパクチーを合わせるとさっぱりした味わいに。

深夜24時まで開いているため、仕事を終えた飲食店関係者もふらりと訪れる。12席の小さな店内のワインセラーには、国内外の少量生産ものを中心に500本ほど並んでいる。「オススメは北海道のワイン。毎年10月に収穫のお手伝いをしています」と、ともにソムリエの田沼誠さん、美和子さんご夫妻。おつまみには一番人気の特製水餃子600円を。手作りの皮がもっちり、中身はぎっしりで食べごたえあり。

田沼さんご夫妻の人柄に引かれて来店する人も多い。
田沼さんご夫妻の人柄に引かれて来店する人も多い。
平日でも早い時間からにぎわう店内。
平日でも早い時間からにぎわう店内。

『TRES』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-8-9 鎌工会館ビル102/営業時間:16:00~24:00/定休日:水/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩4分

熟練の技×日本一の地鶏の最強コラボ。『鳥料理ごとう』

グリーンサラダ600円、串焼き(ねぎ間、せせり、笹身梅しそ、つくね)各250~350円。温泉玉子300円は濃厚な黄身が美味。
グリーンサラダ600円、串焼き(ねぎ間、せせり、笹身梅しそ、つくね)各250~350円。温泉玉子300円は濃厚な黄身が美味。

銀座にある鳥料理の名店で腕を磨き、2018年10月“あえて”材木座の住宅地に店を構えた。使うのは最高級の比内地鶏のみ。しかも通常より長い180日という日本一の品質のものにこだわる。直送される鶏をその日のうちに捌いて提供するから、鮮度は抜群。備長炭でじっくり焼いた串焼きを頬張ると、その弾力と濃厚な味わいに驚く。定番の日本酒は10種、限定仕入れは約20種とその充実ぶりにも心が躍る。

シックな外観が目印。
シックな外観が目印。
厳選した酒類が燦然と輝く冷蔵庫。
厳選した酒類が燦然と輝く冷蔵庫。
食後にはリッチな味わいのプリン300円を。
食後にはリッチな味わいのプリン300円を。

『鳥料理ごとう』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市材木座4-1-23/営業時間:17:00~21:30LO/定休日:木/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から京浜急行バス「小坪・逗子駅」行き約7分の「九品寺」下車2分

ソロ飲みデビューをするならココ!『山本餃子』

餃子が焼ける音と匂いで酒が進む。
餃子が焼ける音と匂いで酒が進む。

店の雰囲気を一言で表すと、和気あいあい。ひとり静かにグラスを傾けていても、いつしか隣の人と会話を交わす間柄になっているからおもしろい。女性客が入りやすいのもこの店ならでは。店主・山本理央さんがニラやニンニクを使わず、女性でも匂いを気にせずに食べられる餃子を、と思って店を始めたことによるのかもしれない。スタンダードな餃子のほか、水餃子500円や新たに始めたという蒸したてのシウマイ500円も人気だ。

焼き餃子は1人前6個入りで450円(写真は2人前)。おつまみには煮玉子150円、ザーサイ150円もどうぞ。
焼き餃子は1人前6個入りで450円(写真は2人前)。おつまみには煮玉子150円、ザーサイ150円もどうぞ。
カウンターにはいくつものペンダントライトがぶら下がる。
カウンターにはいくつものペンダントライトがぶら下がる。

『山本餃子』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市御成町9-6/営業時間:12:00~14:00・17:30~20:30LO/定休日:月・火/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩3分

夜だけでなく、朝も昼も寄りたい。『小町 よしろう』

姫田さんが店に立つのは夜の営業時のみ。
姫田さんが店に立つのは夜の営業時のみ。

女将・姫田あかねさんの手料理を求める客で夜な夜なにぎわう、創業から約30年を迎える名店。カウンターのみで常連客が多く集うものの「誰だって最初は一見さん」と、分け隔てなく接してくれる。場の雰囲気になじんだころ、常連さんが「煮あずきがおいしいのよ」と。聞けば、昼間は「甘処あかね」として店を開けていて、甘味好きには有名な存在だとか。金~日は朝7時~9時30分LOで焼き魚定食も。いつ訪ねてもおいしいものが待っている。

しらすねぎのオムレツ800円(税別)は割ると中からしらすがどっさり。あさりキャベツ800円(税別)、いわしの黒酢煮700円(税別)も酒の肴にピッタリ。
しらすねぎのオムレツ800円(税別)は割ると中からしらすがどっさり。あさりキャベツ800円(税別)、いわしの黒酢煮700円(税別)も酒の肴にピッタリ。
梅酒700円(税別)は自家製の一年もの。
梅酒700円(税別)は自家製の一年もの。

『小町 よしろう』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市小町2-10-10/営業時間:17:30~23:00(甘処あかねは13:00~16:30LO、土・日・祝は12:00~)/定休日:木/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩4分

毎日の楽しい晩酌が元気の源。『萬屋商店』

客層は20代から90代まで幅広い。
客層は20代から90代まで幅広い。

大正初期の創業で、現在の建物は築約100年。角打ちスペースがあり、18時ごろになると続々と人が集まってくる。店で販売している酒やつまみは何でも買って食べて飲んでOK。この日は、週3回来るという川島さんとじいじの仲良しコンビが主役。腕相撲の後はご機嫌なじいじの歌が飛び出し、みんなも手拍子をとって一緒に歌って和気あいあい。お客さんの一人曰く「毎晩バカ言って笑ってね、もう一つの家族だよ」。あぁ、なんて楽しい生活!

隣の魚屋からのお裾分けの刺し身が届くことも。生ビール300円もある。
隣の魚屋からのお裾分けの刺し身が届くことも。生ビール300円もある。

『萬屋商店』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市材木座6-3-25/営業時間:8:30~22:00ごろ/定休日:火/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩20分

愉快な空間と絶品料理にバンザイ!『Rendez-Vous DES Amis』

豚バラ肉のローストのポルケッタは肉と脂の旨みが引き出され一枚ペロリ。ワインはビオワイン中心でグラス500円~。
豚バラ肉のローストのポルケッタは肉と脂の旨みが引き出され一枚ペロリ。ワインはビオワイン中心でグラス500円~。

レストランのコンサルティング、ケータリング、執筆など多岐にわたって活躍している料理家・副島モウさんが営む立ち飲みビストロ。料理は300円、500円、800円の価格のほか、スペシャルメニューが加わる。イチオシメニューのポルケッタはたった800円で「安すぎる!」と驚くと、副島さんは「バカでしょ」とうれしそう。このコストパフォーマンスの高さなら、リピートは確実。常連客が増え続けるというわけだ。

控えめな看板が目印。
控えめな看板が目印。
副島さんが厨房に立つのは週3~4回。
副島さんが厨房に立つのは週3~4回。

『Rendez-Vous DES Amis』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市小町1-4-24 2F/営業時間:17:00~22:00/定休日:水・木/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩1分

鎌倉ディープのんべの玄関口。『天昇』

新鮮な生肉を一本一本串打ちする焼きとり五本盛り合せ600円、もつ煮350円、地ダコ刺し450円~、ホッピー450円。もつ煮のスープで煮込んだ串煮込みも名物。
新鮮な生肉を一本一本串打ちする焼きとり五本盛り合せ600円、もつ煮350円、地ダコ刺し450円~、ホッピー450円。もつ煮のスープで煮込んだ串煮込みも名物。

入店するや否や自分で冷蔵庫を開けてホッピーとグラスを取り出す常連、天昇が好きすぎて週4回串打ちを手伝いに来る女性客。そんな地元愛され酒場を仕切るのは「店を広げるんじゃなく狭くディープにやっていきたい」と語る店主の山下貴大さん。炭火で焼く焼きとりや地元漁師から仕入れる日もある地魚の刺し身で杯を傾けていると、いい感じで常連さんが絡んでくれた。「ここを1軒目に裏小町へ繰り出すのが、鎌倉ゴールデンコースだよ」。

漁師から仕入れたコショウダイをさばく店主。
漁師から仕入れたコショウダイをさばく店主。
L字カウンターが特等席。
L字カウンターが特等席。

『天昇』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市小町1-3-4 丸七商店街1F/営業時間:16:30~22:00/定休日:日・第3月/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩3分

客同士が“横”でつながれる心地よさ。『昭和スウイング立飲みバアル テンスケ』

玉子焼き300円、カジキマグロとインゲンの和え煮400円、夕日をイメー ジしたカシス入りの稲村ヶ崎ハイボール550円。
玉子焼き300円、カジキマグロとインゲンの和え煮400円、夕日をイメー ジしたカシス入りの稲村ヶ崎ハイボール550円。

舞台女優のマリコママが、鎌倉のゴールデン街ともいわれる大谷ビルで店を開いた。「店をはじめて大正解。うちは本当にいいお客様ばっかりでね、お店が楽し過ぎちゃうの!」と言うように、お店に入る人は和気藹々。鎌倉に増えてきた立ち飲みのある居酒屋の中でも特徴的なのは深夜営業。深夜に開いている食堂が皆無に近い鎌倉で午前までしっかり食事ができる地元民の深夜食堂としても機能している。お酒のちょっとしたおつまみから、炭水化物がっつりの食事までメニューの豊富さはレストラン並みだ。しかも安い。

カレー煮込み300円ほか大皿が並ぶ。
カレー煮込み300円ほか大皿が並ぶ。
「初対面の人と楽しく飲むのって最高」とママ(左から2人目)。
「初対面の人と楽しく飲むのって最高」とママ(左から2人目)。

『昭和スウイング立飲みバアル テンスケ』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市小町2-11-11 大谷ビル2F/営業時間:18:00~翌2:00(土・日は17:00~)/定休日:不定/アクセス:JR横須賀線・江ノ電鎌倉駅から徒歩5分

長谷で飲むって、こういうことっしょ『立呑処まごころ(した心)』

白だしで味付けする納豆オムレツ500円、アジフライ300円、トマト酎ハイ600円など。
白だしで味付けする納豆オムレツ500円、アジフライ300円、トマト酎ハイ600円など。

納豆オムレツなど人気のつまみもあるけれど、ここで料理云々(うんぬん)を語るのは野暮。目の前が由比ガ浜という空気に酔い、そしてオーナー兼皿洗いの虎さん、元常連でいつの間にか店に居ついた店長マッキーさんの最高にゆるいロン毛コンビの人柄に酔えばいい。「ここは長谷の人間交差点。ウチは2回目から常連さんだよ」という虎さんの笑顔に惹かれ、夜な夜な長谷のジモティが集い、時折ある音楽ライブを肴に深酒していくのだ。

「カフェ麻心の下にあるから、した心」と笑う気さくな虎さん(左)。品書きには「笑顔0円」の文字も。
「カフェ麻心の下にあるから、した心」と笑う気さくな虎さん(左)。品書きには「笑顔0円」の文字も。
赤提灯越しに海という幸せな風景。
赤提灯越しに海という幸せな風景。

『立呑処まごころ(した心)』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市長谷2-8-11/営業時間:16:00~24:00(土・日・祝は13:00~)/定休日:荒天時/アクセス:江ノ電長谷駅から徒歩5分

取材・文=林加奈子、井島加恵、鈴木健太 撮影=逢坂聡、丸毛透、yOU(河崎夕子)、小澤義人、高野尚人