進化を止めないラーメン店『麺処 夏海』
店主は人気店『麺処 ほん田』出身。故郷、新潟の生姜醤油ラーメンを独自の解釈で進化させたラーメンや、日替わりや月一の限定ラーメンを出すなど、新しい味の追求に余念がない。特製塩ラーメンのスープは、鶏、豚など動物系をメインに、煮干しやホタテ、鯛など魚介から出汁をとり、あっさりしていながら深みのある味を出している。香味ダレに漬け込んだレアチャーシューや、脂身の多い肩ロースを吊し焼きにしたチャーシューなど、3種のチャーシューも絶品。
一度食べたら忘れられない担々麺『自家製麺ほうきぼし』
店主の毛利友紀乃さんが、まだ10代でオープンさせた店。中華料理店を営んでいた祖父の影響で、辛い物のなかでも、特に担々麺が好きだった毛利さん。母の後押しもあり、オリジナルの担々麺を作り上げた。看板料理となった汁なし担々麺は、担々麺には珍しい太麺を使用。歯応えがある手打ちのような麺に、ラー油や特製ダレがよく絡み、ナッツや揚げ麺の食感もいい。コクの強いゴマや、花椒の香りも食欲をそそる。思わず箸が止まらなくほどのおいしさだ。
飲み屋街の外れに行列ができる『麺 高はし』
飲み屋街の一角にある店主ひとりで営む店。つけそば(つけ麺)が人気で、常に数人の行列ができるほど。創業以来使っているという浅草開化楼の麺は210gとボリュームたっぷり。つゆはじっくり煮込んだモミジと魚介がベース。つゆにありがちな甘さや酸味はなく、魚介の香ばしさや脂の旨みが際立つ。麺を食べ終わったタイミングで小鉢に入ったスープがすっと出てくる。つゆに入れて、スープ割りを楽しむのがこの店の流儀。
初代から受け継いだ青竹手打ち麺が自慢『手打ら~めん 満月』
1973年創業のラーメン店。初代店主から代替わりした二代目は和食の道で6年修業し、初代の味を守りつつ和食の経験を活かして進化させてきた。豚ガラ、鶏ガラなど動物系だった基本のらーめんスープは、鰹節を加えて和食寄りの味に。上品にまとめられたスープは、あっという間に飲み干してしまいそうになるほど絶品だ。
初代から受け継いだ青竹手打ち麺は、柔らかな食感にほどよい縮れでスープを吸い上げる極上の麺。スープで8時間茹で、3時間タレで煮込んだチャーシューも、初代と二代目がぶつかりながら仕上げた自慢の味だ。
賄いから生まれた『野菜炒めざるらーめん』、お客さんやお店のスタッフの何気ないひと言で生まれた『ベーコンらーめん』など、豊富なメニューも魅力。子供や孫、ひ孫と5世代にわたって通う常連客や、母から娘と代々バイトに来てくれる方も多い。みんなが「ただいま」といって帰ってくる、赤羽で長く愛されてきた店だ。
『手打ら~めん 満月』店舗詳細
那須塩原のご当地麺スープ入り焼きそばが名物『中華 凛凛』
店主は上野の中華料理店『東天紅』で修業後、赤羽で開業して31年の料理人歴48年。地元・那須塩原で子どもの頃から慣れ親しんだご当地麺「スープ入り焼きそば」を、都内で唯一提供している。故郷の味を再現しつつ、ご当地では豚肉、鶏肉が入るところを海鮮や野菜をたっぷり使ってボリューム満点に仕上げた一杯だ。
まずは純粋なスープを味わい、徐々に麺からソースが溶け出していく味の変化を楽しむのがスープ入り焼きそばの醍醐味。テレビや雑誌でよく取り上げられるので、それを見て遠方から足を運ぶ人も多い。
カウンター5席のこぢんまりとした店を夫婦二人で営みながら、出前や弁当の配達にも対応。4年前に西口から移転しているので、ちょっと遠くなった常連さんも多く出前は喜ばれている。もちろん「スープ入り焼きそば」を出前で堪能するのもありだ。ラーメンスープの中に入った焼きそばという未知の味をぜひ味わってほしい。
『中華 凛凛』店舗詳細
こだわりの豚骨醤油は毎日食べられる味『赤羽らーめん 粋』
店主がトラックで全国を食べ歩いて生まれたラーメンは、家系での修業とさまざまなラーメンのテイストが詰まったハイブリッドな醤油豚骨ラーメン。カスタマイズは、タレの濃さ、鶏油の量、麺の硬さだけでなく、細麺・太麺も選べて替玉もあるという、確かに家系だけでない要素がいたるところに満載だ。
大きな寸胴にゲンコツ、背ガラ、鶏ガラを入れ、長いエンマ棒で攪拌しながら長時間炊き上げるスープは、濃厚な豚骨でとろりと粘度もある。やや甘めだがあっさりした醤油ダレで、なめらかな口当たりのなかにほんの細かな骨粉も。しっかり炊かれた豚骨の旨味あふれるスープだ。
らーめんは豚骨醤油のほかに、豚骨塩、豚骨味噌、さらに豚骨魚介つけめんもあり、じっくり炊いた豚骨をいろんなバリエーションで楽しめる。麺も細麺と太麺をお好みや飲んだ〆には細麺とか、その日のシチュエーションに応じて選ぶのもよし。手間暇かけてお値段以上とお財布にもやさしい!
『赤羽らーめん 粋』店舗詳細
ラーメンの神様・山岸氏の弟子が紡ぐ店『大勝軒まるいち』
『東池袋大勝軒』創業者の山岸一雄マスターの志を受け継ぐ弟子の店。お馴染みの「もりそば」は、時代に合わせて「つけ麺」と名前を変えて提供している。
元祖の味を受け継ぎつつ、味を進化させていったつけ麺は、今風にアレンジしてこってりした豚骨魚介のつけ麺。豚骨と鶏ガラに鯖節と煮干しなどを加えて、最後にもう一度、追い鯖節・煮干しで魚介を強く仕上げることで、濃厚ながら魚介の風味であっさりいただける。
麺は、グルテンの強い小麦粉とタンパク質が多い小麦粉を合わせ、加水率が高めでコシが強くてもっちり感があるのが特徴。並盛で麺量は茹で後600gというボリュームに、「美味しい麺をたくさん食べてもらいたい」という山岸マスターから受け継がれた想いも伝わる。小食の方、女性向けには麺少な目のちょいつけ麺(180g)も用意されているという心配りも。元祖の味とともに、冬には生姜味噌ラーメンなど四季折々の限定商品も見逃せない。
『大勝軒まるいち 赤羽店』店舗詳細
伯父や父の煮干し中華の味を世界に広める『自家製麺 伊藤』
煮干し中華そばの先駆け的存在である、秋田角館『自家製麺 伊藤』を伯父、王子神谷『中華そば 伊藤』を父に持ち、その味を受け継ぐ伊藤家の店。ラーメンは九十九里の煮干しを使った「中華そば」と、秋田比内地鶏に煮干しを合わせた「比内地鶏そば」の二枚看板。尊敬する父と伯父、2人の味を広めたいと2つの味を提供する。
今では多くの店で煮干し出汁のラーメンを出すようになったが、「最初に煮干しそばを食べたのは『伊藤』」という人も多いはず。ガッツリ煮干し香るスープに煮干し粉がキラキラ光る。上品だが凝縮された旨味が後を引く。煮干しは2カ月に1度、九十九里まで直接店主が仕入れにいくこだわりよう。
煮干しスープにポキポキの低加水麺を合わせるのも『伊藤』ならでは。具はネギだけとかけそばスタイルの「中華そば」で純粋な煮干しを味わうもよし。豚バラ肉を味付けしたやわらかチャーシューがのった「肉そば」もよし。煮干し好き必食の店だ。
『自家製麺 伊藤』店舗詳細
赤羽の夜のにぎわいとともにオープンする『赤羽とんや』
赤羽駅東口からすぐの歓楽街の路地にある、深夜営業のラーメン店。21時開店で、飲み歩きの〆で訪れる人や仕事を終えた飲食業の人で明け方までにぎわう。ラーメンは正油と塩の2種類。ついまたお酒を飲みたくなってしまう少し濃いめの味付けが特徴だ。
スープは鶏ガラ、豚の背ガラに野菜や煮干しなどを煮込んだもの。麺はラーメン好きにはよく知られている菅野製麺所の麺で、平打ち麺1種類。モチっとした食感でスープによくからむ。口の中でとろりとほぐれる自家製チャーシューは、バラ肉を4時間煮込んで、その後さらにタレで1時間煮込み、火を止めてタレの中で5~6時間置いたもの。翌日の分を毎日仕込んでいる。
ラーメン以外のサイドメニューは自家製餃子350円、冷やしワンタン500円、おつまみチャーシュー550円など。ビールのつまみにぴったりだ。お客さんのピークは朝4時ごろ。24時間眠らない街・赤羽に集う人々の深夜の胃袋を満足させてくれるお店だ。
『赤羽とんや』店舗詳細
取材・文・撮影=京澤洋子・丸山美紀(アート・サプライ)、大熊美智代、新井鏡子