【本厚木】七沢温泉 元湯玉川館

岩間からしみ出でるとろんとろんの薬湯に憩う

やわらかな木漏れ日がゆらゆらと湯を照らす。
やわらかな木漏れ日がゆらゆらと湯を照らす。

檜(ひのき)に漆を塗った珍しい湯船にこんこんと湯が落ちて、湯面が波打つ。五感を澄ませば、「とろん」と音が聞こえるくらい、厚みあるふくよかな湯だ。数字にすればpH10.1の強アルカリ性で、石鹸水に匹敵するほどの鉱泉。20℃の源泉を38〜42℃に加温していて、贅沢なことに洗い場の蛇口から出るのも、この湯だ。かけ湯の段階からつるっすべっになり、「美肌の湯」と呼ばれる理由を実感できる。

外から内から、体を温める

野趣あふれる庭から館を望む。磨き込まれた窓の向こうがロビー。
野趣あふれる庭から館を望む。磨き込まれた窓の向こうがロビー。

七沢温泉の起源は、安政年間に遡る。ある日、農作業をしていた村人が、水たまりに浸かり傷を癒やしているヘビに遭遇した。不思議に思い水源をたどるとぬめっとした岩清水に当たり、それが薬効高い温泉だったと伝わる。以来、温泉地として栄え、バブル全盛期には慰安旅行客でにぎわったが、時代は流れて現在は8軒が静かに営んでいる。当館は明治35年(1902)の開業だ。「祖父の、そのまた祖父が、病弱の息子を健康に育てようと移住して、温泉業を始めました」と語るのは、5代目館主の山本健二郎さん。
「皆さんの健康に役立ちたいとの願いを受け継ぎ、大切にしています」
立ち寄り湯は、その願いの一端だ。気軽に利用できるように、予約は不要。

立派なはりのロビーにて。「どうぞのんびりお過ごしください」と山本さん。
立派なはりのロビーにて。「どうぞのんびりお過ごしください」と山本さん。

館内には湯上がりにくつろげる山小屋風のカフェがあり、2021年にリニューアルしてメニューを一新。スパイスをふんだんに使ったキーマカレーを看板に据えた。湯に浸かりぽっかぽかになった後に味わえば、内からもさらに温まるというわけだ。個室で休憩できる昼食付きコース(要予約)もあり、料理人が腕を振るう季節の膳を楽しみに通う人も。冬季はぼたん鍋がお目見えする。
携帯電話がほぼ圏外の不便な奥地。この不便さこそが心身をふわっと軽くしてくれるのだろう。山本さん曰く、「世の中をほんの少〜しさぼるには、ちょうどいいところです」

カフェのキーマカレーと温泉水で淹れるコーヒー。セットで1210円。チーズケーキ440円も自慢。
カフェのキーマカレーと温泉水で淹れるコーヒー。セットで1210円。チーズケーキ440円も自慢。
町田市の農家を移築した風情ある構え。
町田市の農家を移築した風情ある構え。
七沢温泉 元湯玉川館
すべすべの湯に柔らかな日の光。木々の感じも最高。ふぅ〜とろけそう〜。(編集部・町田)
〔泉 質〕強アルカリ鉱泉
〔入浴料〕 1回1000円(昼食付き、宿泊プラン別途あり)

『七沢温泉 元湯玉川館】詳細

住所:神奈川県厚木市七沢2776/営業時間:11:30~17:00(土・日・祝とその前日は~15:00)/定休日:不定/アクセス:小田急小田原線本厚木駅から徒歩3分の厚木バスセンターから神奈川中央交通バス「七沢」行き約28分の「七沢温泉入口」下車15分(愛甲石田駅、伊勢原駅からの便もあり)

【西武秩父】秩父川端温泉 梵の湯

秩父で際立つすべすべの良泉

露天風呂の近くを荒川が流れる。
露天風呂の近くを荒川が流れる。

秩父エリアではナンバーワンの泉質ではなかろうか。とにかく肌触りがつるつる、すべすべして気持ちいいのだ。昔は含重曹食塩泉と呼んでいた泉質で、肌の不要な角質や毛穴の汚れを洗い流す “美人の湯” 。しかも高濃度だから入浴後も肌の滑らかさがハンパない。皮膚病、特にアトピーによく効くというのも、療養泉らしいところだ。しかも半年前、循環機器などを一新。以前は真湯だった露天風呂にもこの源泉が投入され、常連たちを喜ばせている。内湯も含め、温泉の良さをより体感できるようになったのだ。

内湯も畳敷きの洗い場で足に優しい。
内湯も畳敷きの洗い場で足に優しい。

山と川に囲まれた、静かな環境も抜群。内湯で温まり、川風がそよぐ露天風呂でまったり、そしてサウナでさっぱりとしてまた内湯へ……。その繰り返しがどんどん心地よくなってくる。館内は洗い場も含めてすべて畳敷き(耐水性) で、足に優しいのも高ポイント。このまま併設したキャンプ場のバンガローに泊まってみるのもいいかも、そんな気にもさせる癒やしの湯だ。

併設したドッグランにはワンちゃん専用の温泉も。この日来てた“だいや”君の皮膚病も治ったとか。
併設したドッグランにはワンちゃん専用の温泉も。この日来てた“だいや”君の皮膚病も治ったとか。
秩父名物ホルモン焼き定食800円は元焼き肉屋さんだけあって旨さ◎。
秩父名物ホルモン焼き定食800円は元焼き肉屋さんだけあって旨さ◎。
秩父川端温泉 梵の湯
ここは、泉質がとてもいい。僕も登山の後にはよく立ち寄るよ。(温泉紀行ライター 飯出敏夫)
〔泉 質〕ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
〔入浴料〕大人880円(土・日・祝は980円)

『秩父川端温泉 梵の湯』詳細

住所:埼玉県秩父市小柱309-1/営業時間:9:00~22:00(最終受付は21:00)/定休日:無/アクセス:西武秩父線西武秩父駅から西武観光バス「市立病院経由吉田元気村」行き約30分の「小柱」下車3分。

【奥多摩】丹波山温泉 のめこい湯

人口520人の丹波山村自慢! 川辺の出で湯へ

洋風のローマ浴場。
洋風のローマ浴場。

2000年に湧いた湯に、初めて触れた村人の第一声が、「のめっこい」。“つるつる・すべすべ”のことで、他に“人と人が仲良くする”の意味もある。源泉は、『道の駅たばやま』の駐車場に。地下1500mから41℃の湯をくみ上げ、多摩川源流・丹波川にかかる吊り橋を利用してポンプで送る。送る間に冷めるので、村の木を活用した薪を使って加温している。

川音が届く露天風呂。
川音が届く露天風呂。

浴場は檜造りの和風と、タイル張りの洋風があり、男女交互に入れ替える。硫黄香に包まれて体を沈めると、湯に触れた肌からつるっつる! のほほんと漂う間に、芯から温まっていく。

設営、薪割り、ロウリュまでセルフで楽しめるレンタルテントサウナ3300円(2名利用)。ほてったら川辺のベンチや低温の湯船へ。
設営、薪割り、ロウリュまでセルフで楽しめるレンタルテントサウナ3300円(2名利用)。ほてったら川辺のベンチや低温の湯船へ。

開業20年を超えた2021年、総支配人に元教育長の野崎喜久美さんが就任した。パワフルな野崎さんは、村に移住した若者らとのめっこくなり、一緒に新企画に挑む。その柱が試験営業中のレンタルテントサウナだ。「早くもテントサウナの聖地と呼ばれます」と野崎さん。2階にはワーケーション室も設け、目下、リピーターが増加中。

道の駅から吊り橋を渡り温泉へ。
道の駅から吊り橋を渡り温泉へ。
名水「雲取のしずく」をおみやげに。
名水「雲取のしずく」をおみやげに。
丹波山温泉 のめこい湯
ややぬるの湯加減もいい〜上がったら地酒か丹波山ビールか……。(ライター・松井)
〔泉 質〕単純硫黄温泉(アルカリ性低張性 高温泉)
〔入浴料〕 大人900円

『丹波山温泉 のめこい湯』詳細

住所:山梨県丹波山村2901/営業時間:10:00~19:00(最終受付は18:00)/定休日:木(祝の場合は営業)/アクセス:JR青梅線奥多摩駅から西東京バス「丹波」行き約55分の「丹波山温泉」下車3分

【久留里 】いろりの宿 七里川温泉

房総のおへそに、クセになる湯処あり

山に沈む夕日も美しい。女湯と男湯は毎日交代。
山に沈む夕日も美しい。女湯と男湯は毎日交代。

久留里線で田園風景を抜け、亀山湖を横目に、さらに山奥へ。背負い籠のおじさんが横切ったカーブの先に、ぽつんと見えたのが七里川温泉だ。
中に入ると囲炉裏っ端(ぱた)で猫がお昼寝。炭の香りと、尺八のBGMが裾や袖から染み入ってくる。この時点で心は完全スイッチオフ。丸太を張り付けた素朴な脱衣所から露天風呂へ向かうと、湯けむりの向こうに山の稜線が見えた。やや黄色がかった湯は、塩素の臭いゼロ。すぐにじんじんと体が芯から温まってくる。

内湯も計2つ用意。
内湯も計2つ用意。

「常にかけ流しですし、1日1回お湯を抜いて掃除するから、塩素消毒は不要なの」とスタッフの外川公果子(そとかわ くみこ)さん。
近隣の公園造成工事の影響で現在硫黄泉は使えないが、その近くで以前から湧く露天風呂用のアルカリ性の湯を全浴槽で使用。こちらの湯も、肌にいいとファンが多い。隣で浸かっていた常連さん曰く「ここに通っていたらアトピーが治った。僕の肌に合ったんですね。スタンプ10個で1回無料(入湯税150円のみ支払い)になるスタンプカードは、おすすめですよ! 有効期限1年だけど、過ぎても全然指摘されたことがない(笑)」。

隣で炭焼きをしていた青年たちと意気投合。道の駅で買ったウインナーをお裾分けしてくれた! 
隣で炭焼きをしていた青年たちと意気投合。道の駅で買ったウインナーをお裾分けしてくれた! 

心とろける湯の熱•炭の熱

看板猫のタネたちと外川さん。
看板猫のタネたちと外川さん。

このいい感じのゆるさが七里川温泉の醍醐味。入浴時間制限はないので心置きなくくつろげるし、フレンドリーなスタッフさんのつかずはなれずの接客も居心地がいい。休憩室では若者たちが雑魚寝中だ。極めつけは風呂上がりに楽しむ囲炉裏タイム。干物など約40種から焼き物を注文できるが、炭代500円を払えば食材の持ち込みもOKなのだ。
赤く美しい熾おき火び の炭をいじりながら、網の上で金目の干物が焼きあがるのを待つ。温まった体が、遠赤外線でなおも温まり、額から汗がじわり。そこにキンキンの赤星を流し込めば、くふぅ〜、ああ夢心地。これは、スタンプカード、作らねば。

近所で焼いた火持ちのいい炭を使う囲炉裏。金目鯛の干物大、房総豚みそ焼各880円。瓶ビール赤星700円(酒は持ち込み不可)。
近所で焼いた火持ちのいい炭を使う囲炉裏。金目鯛の干物大、房総豚みそ焼各880円。瓶ビール赤星700円(酒は持ち込み不可)。
いろりの宿 七里川温泉
のんびり長湯が最高。ふと気付けばいつも夕暮れ。(カメラマン・オカダ)
〔泉 質〕アルカリ硫黄泉
〔入浴料〕大人1150円(食事付き、宿泊プラン別途あり)

『いろりの宿 七里川温泉』詳細

住所:千葉県君津市黄和田畑921-1/営業時間:8:00~22:00/定休日:第1・3水/アクセス:JR久留里線久留里駅から君津市デマンドタクシーきみぴょん号約20分の終点下車(前日までに要予約。☎0439-27-3188)

【東鷲宮】百観音温泉

日帰り湯治で享受する観音パワー

菩薩の湯(写真)と阿弥陀の湯があり、ともに広い露天風呂を備える。
菩薩の湯(写真)と阿弥陀の湯があり、ともに広い露天風呂を備える。

駅から近い。寝湯や立ち湯など風呂の種類が多い。寝転べる広いお休み処がある。ここの魅力は数あれど、足しげく通う最大の理由は湯の力強さだ。温泉が湧いたのは1998年。地元の名家である白石家16代目の昌之さんが温泉湧出を願い掘削を始めると、地下1500mから地中に閉じ込められた化石海水が温泉として噴出した。18代目の昌純(まさずみ)さん曰く「この場所には昔、先祖が建立した百観音堂がありました。祖父は『湧出したのは観音様のおかげ』と百観音堂を再建し、この湯を百観音温泉と名付けたんです」。

温泉の前に立つ百観音堂と、昌純さん。
温泉の前に立つ百観音堂と、昌純さん。
毎分490ℓ湧出する湯をかけ流し。
毎分490ℓ湧出する湯をかけ流し。

この観音様の恵みを各風呂にドバドバかけ流し。腐葉土のような匂いがする湯は塩分豊富で保温効果が高く、ジンジンと温まる。豊富なナトリウムイオンとカルシウムイオンが肌の潤い成分と反応し、肌がキュッと鳴るほどすべすべに。隣で「おお、昨日ぶり!」「毎日来んと体の調子が悪くなるんだ」と話す常連たちを見て、ここが通いの湯治場として愛されていることを実感。

背中を流れる湯が心地いい寝転び湯。
背中を流れる湯が心地いい寝転び湯。
リクライニングチェア、畳み部屋を備えた2階お休み処。
リクライニングチェア、畳み部屋を備えた2階お休み処。
百観音温泉
寝転び湯と熱々の立ち湯、普通の入浴を繰り返すのがたまらん〜。(ライター・鈴木)
〔泉 質〕ナトリウム-塩化物強塩温泉
〔入浴料〕大人800円(土・日・祝は850円、貸切風呂プランあり)

『百観音温泉』詳細

【本所吾妻橋】御谷湯

現代に蘇る、浮世絵に描かれし江戸の湯屋

4階は尾形光琳「紅白梅図屏風」がモチーフ。
4階は尾形光琳「紅白梅図屏風」がモチーフ。

暖簾と格子の引き戸からして粋な風情。2015年のリニューアルで3代目の片岡信さんが目指したのは「北斎が描いた浮世絵の湯屋」だ。和風照明がいくつも吊り下がる木造の脱衣場が匂い立つような色香。浴室へ向かえば坪庭越しに外光が差して清々しく、半露天の木格子から東京スカイツリーがひょっこり顔を出す。4階は金色のタイル絵が、5階は冨嶽三十六景の犬目峠を描いたペンキ絵が湯面に映り、雅だ。白湯のジェット風呂も備わるが、自慢は何と言っても澄明な黒湯だ。

5階には丸山絵師が描いた犬目峠が。
5階には丸山絵師が描いた犬目峠が。
スカイツリー近し。
スカイツリー近し。
片岡さんはミュージシャンで「ライブ後もフロントに立ちます」。
片岡さんはミュージシャンで「ライブ後もフロントに立ちます」。

「1947年の開業時に掘った井戸から出た、ラッキー温泉なんです。最初は泥水かと思ったそうですよ」
3つの湯船には44℃の高温、40℃の中温、38℃のぬる湯または13〜18℃の源泉が満ち、交互浴すれば、とろみのある湯が肌をしっとりするすべにする。湯上がりは2階のピアノバーへ。ほろ酔いセット770円や、ウォッカ入りのパフェなどもあり、耳に心地いい音色とともにクールダウンしたい。

2階『café&barとまどい』で一杯。さつま揚げうどん600円は小腹にいい。
2階『café&barとまどい』で一杯。さつま揚げうどん600円は小腹にいい。
御谷湯
モダンで粋な江戸情緒!『散歩の達人』2022年1月号の「東京温泉銭湯案内」でもおすすめ温泉銭湯を紹介してますよ。(銭湯研究家町田 忍)
【 メタケイ酸 】
〔入浴料〕 480円

『御谷湯』詳細

住所:東京都墨田区石原3-30-10/営業時間:15:30~翌2:00(日は15:00~24:00)/定休日:月/アクセス:地下鉄浅草線本所吾妻橋駅から徒歩12分

【湯河原 】湯河原惣湯 Books and Retreat

森に抱かれて本に触れ、湯浴みしながら蘇る

4つに区分けされた浴槽。手前と奥で温度を変えて湯をかけ流し、温度のグラデーションを体感。
4つに区分けされた浴槽。手前と奥で温度を変えて湯をかけ流し、温度のグラデーションを体感。

万葉集に詠われるただ一つの温泉、湯河原。聞き慣れない言葉「惣湯」は遠い昔、中世の頃に村人たちが作り、大切に守っていた共同湯の呼び名だ。川辺に自然噴出する湯に浸かった情景が、古い絵に残る。江戸時代には温泉番付で上位に入る湯治場になり、明治〜昭和には湯宿が林立。各界の著名人が訪れて小説にも描かれた。全盛期の1955年、観光拠点として万葉公園を開くが、次第に客足が遠のき、再生プロジェクトが進められた。満を持して2021年8月、今の時代にふさわしい、新しい惣湯が生まれたのだ。

1500冊の蔵書から150冊を開架するライブラリー。好きな場所へ持ち出せる(浴場以外)。
1500冊の蔵書から150冊を開架するライブラリー。好きな場所へ持ち出せる(浴場以外)。

惣湯文化に親しむひととき

1組ずつ利用する奥の湯。
1組ずつ利用する奥の湯。

「惣湯テラス」は、周囲の景観に調和して立つ。館内はシンプルで、BGMも時計もない。「ゆったり過ごしていただきたくて情報を極力少なくしています」とマネージャーの大門瞳さん。
まず、館内着に着替えて身軽になる。浴場は、湯の恵みに集中するための場として、体や髪はシャワー室で洗う。無色透明の源泉は、61℃。加水した適温でかけ流している。静々と身を沈めると、川の流音、鳥の声、木々のざわめきが重なる。中世の人々が親しんだ惣湯もこんなだっただろうか。温もった肌に触れハリを感じて驚いた。もしかして皮膚が再生してる?

川沿いのテラスで森林浴&読書。
川沿いのテラスで森林浴&読書。
コーヒーは玄関テラス1階で。
コーヒーは玄関テラス1階で。

湯浴(あ)みの間に間に「ライブラリー」や「奥のラウンジ」で本を開く。「装丁が魅力的で、心の持ちようが変わるような本を置いています」と、大門さん。
本の世界と、目の前の森と、歴史ある温泉を、自由気ままに行ったり来たり。そうして心身がリセットされていく。

小径はマイナスイオンたっぷり!
小径はマイナスイオンたっぷり!
食事メニューは月替わり。自然の恵み満載の料理が漆器の応量器に盛られる。
食事メニューは月替わり。自然の恵み満載の料理が漆器の応量器に盛られる。
湯河原惣湯 Books and Retreat
一日ここでゆるゆる過ごし日常にさよなら〜もう帰りたくない。(ライター・松井)
〔泉 質〕ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉
〔入浴料〕2600円(最大3時間。最大5時間・食事付きは5500円)

『湯河原惣湯 Books and Retreat』詳細

住所:神奈川県湯河原町宮上704/営業時間:10:00~18:00(土・日・祝とその前日は~20:00。最終入館は1時間30分前)/定休日:水・第2火

【海浜幕張】JFA夢フィールド 幕張温泉 湯楽の里

湯船に浸かりながら、東京湾の大展望を見渡す

東京湾の大展望が開放感の極み。お湯は薄っすら黄色い。
東京湾の大展望が開放感の極み。お湯は薄っすら黄色い。

2020年にオープン以来、大人気が続く。最新だから様々な施設が充実しているのはもちろんだが、とにかく露天風呂(特に男湯)からの大展望がたまらない。人工浜の幕張の浜に面し、まさに波打ち際の立地。ここでの湯浴みは、眼前の東京湾の眺めを心ゆくまで満喫できる贅沢時間なのである。この日は快晴とあって遠くまでくっきり。スカイツリーや海ほたる、そしてやっぱり富士山が見えるのがうれしい。風が強く波が白く暴れていても、非日常の風景として楽しめる。

内湯は高濃度の炭酸泉やジェットバス、電気風呂、サウナなど多彩。
内湯は高濃度の炭酸泉やジェットバス、電気風呂、サウナなど多彩。

JFA夢フィールドはサッカー日本代表のトレーニングなどを行う拠点だが、入浴施設は一般客の利用が中心。浜辺のウォーキングやランニング後に使えるし、ストレッチやヨガ教室などもあって心地よい汗をかける。実は泉質もなかなか。地下2000mから湧き出す湯はよう素を含んでいて、ほんのりと藻臭が。淡い黄色も深層温泉らしい。塩分があるので寒い冬でも浴後のポカポカが持続するのだ。

自家製のそば湯の湯豆腐780円と、アスリート飯の香味野菜たっぷり豚しゃぶサラダ880円。
自家製のそば湯の湯豆腐780円と、アスリート飯の香味野菜たっぷり豚しゃぶサラダ880円。
屋上展望台も眺めが抜群。
屋上展望台も眺めが抜群。
JFA夢フィールド 幕張温泉 湯楽の里
極楽極楽♪右はスカイツリー左はゲートブリッジ、富士山も!(ライター・工藤)
〔泉 質〕含よう素‐ナトリウム‐塩化物強塩泉
〔入浴料〕大人980円(土・日・特定日は1200円)

『JFA夢フィールド 幕張温泉 湯楽の里』詳細

住所:千葉県千葉市美浜区美浜26/営業時間:9:00~24:00(最終入館~23:00)/定休日:無(年数回メンテナンス休あり)/アクセス:JR京葉線海浜幕張駅より徒歩20分(JR京葉線海浜幕張駅から定時無料送迎バスあり)

【綱島】綱島源泉 湯ゆけむりの庄

温泉地“東京の奥座敷・綱島”の新たな灯

女湯の露天風呂。
女湯の露天風呂。

赤々と燃える暖炉脇でのんびりくつろぐ人の多いこと。綱島はかつて「東京の奥座敷」と呼ばれた温泉地だった。しかし、ラジウム温泉自慢の駅前日帰り温泉が幕を閉じ、その灯が消えそうな2016年、新しい施設が誕生した。「黒湯文化を愛する地元の方に喜んでいただいています」と、相好を崩すのは広報の永井洋輔さん。

内湯も黒湯。
内湯も黒湯。

目を見張るのは和情緒の露天風呂。木組みが美しい櫓やぐらの下に、広々した岩風呂が2段並び、加温の源泉かけ流しからぬる湯へと湯が落ちる。湯はとろりとなめらかに肌にまとわりつき、美容液を塗ったような潤い感。美人の湯と謳われるのも納得だ。高濃度炭酸泉に、壺湯、女湯には深さ140㎝の立ち湯もあり、黒湯バリエーションの充実ぶりにも心躍る

岩盤浴は+880円(土・日・祝・12月30日~ 1月5日は+990円)。「風」のロウリュ時 は米村でんじろう氏監修の空気砲が飛ぶ。
岩盤浴は+880円(土・日・祝・12月30日~ 1月5日は+990円)。「風」のロウリュ時 は米村でんじろう氏監修の空気砲が飛ぶ。
キノコたっぷり酸辣湯麺は唐揚げ+羽釜炊きのごはん付き1300円。
キノコたっぷり酸辣湯麺は唐揚げ+羽釜炊きのごはん付き1300円。

また、5種類の岩盤浴や、発汗作用を促す旨辛の酸辣湯麺(スーラータンメン)など、サウナーの心を鷲わし摑みにする“サ飯”も揃える。
2022年内には新駅も開業予定。パワーアップし続ける綱島で、名湯をとくと味わいたい。

暖炉の火に和む。
暖炉の火に和む。
綱島源泉 湯ゆけむりの庄
指先1㎝が見えないほどの濃厚黒褐色に驚き!あぁ、湯が染みる〜。(ライター・佐藤)
〔泉 質〕ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉
〔入浴料〕大人1320円(土・日・祝は1540円)

『綱島源泉 湯ゆけむりの庄』詳細

住所:神奈川県横浜市港北区樽町3-7-61/営業時間:9:00~22:00(最終受付21:00)/定休日:無/アクセス:東急東横線綱島駅から徒歩18分(無料送迎シャトルバスあり)

【箱根湯本】芦ノ湖畔 蛸川温泉 龍宮殿本館

芦ノ湖と霊峰を望む奇跡のアングル

女性露天風呂は湖とつながっているよう。男湯半露天も富士山を一望。
女性露天風呂は湖とつながっているよう。男湯半露天も富士山を一望。

露天風呂に浸かると、箱根外輪山の向こうで富士山が天を突いていた。眼下には空を映す芦ノ湖。雄大な霊峰の前では、湖に浮かぶワカサギ釣りの船が豆粒のように小さい。風は穏やかで、聞こえるのはトゥクトゥクと注がれる湯の音のみ。風呂の湯と凪いだ湖面は、そのままつながっているかのようだ。

見た目は平等院鳳凰堂の如く

建物は国登録有形文化財。美しい中央階段ホール。
建物は国登録有形文化財。美しい中央階段ホール。

芦ノ湖と富士山の競演という意味では、ほかに比肩する温泉施設がないほど美しい眺めをもつ龍宮殿本館。外輪山の凹んでいる鞍部から、ちょうど顔を出す富士山を拝める立地にあるということが、なにより素晴らしい。同館はプリンスホテルが営んでいるのだが、一説によると西武グループの創業者・堤康次郎が芦ノ湖と富士山が見えるこの場所を気に入り、一帯をリゾート地として開発したのだとか。
「ここを切り開いたとき、山の神を祀った祠(ほこら)も現存しています。当館から徒歩すぐですので、湯上がり後はぜひ参拝してみてください」とスタッフの稲生正隆さん。龍宮殿が芦ノ湖畔で開業したのは1957年。もともと浜名湖で創業した最高級ホテルを、1年以上かけて現在の地へ移築した。外観は平等院鳳凰堂をモデルとし、欅(けやき)や檜(ひのき)の巨木など贅を尽くした建物を移すため、多くの宮大工が関わったそう。
「先日、移築に関わった80代の方がお客様としていらして、内装を懐かしそうに眺めてらっしゃいました」
2017年には、日帰り入浴施設としてリニューアル。新設された女性風呂は露天(写真)と内湯、スチームサウナ、男性風呂は半露天風と内湯、フィンランドサウナを備えており、各風呂でやわらかな美肌の湯を堪能できる。
リニューアルに伴い、1階客室は貸切個室に(要予約)。2時間4400円〜と有料だけれど、上皇・上皇后や各国要人が泊まった湯宿の元客室でくつろげるなんてむしろ破格。入浴後は、湖を望む個室で優雅な時間を過ごしたい。

箱根大平台の老舗・角山の豆腐を使った箱根姫の水たま肌もめん湯豆腐御膳。入浴料込みで3564円。
箱根大平台の老舗・角山の豆腐を使った箱根姫の水たま肌もめん湯豆腐御膳。入浴料込みで3564円。

『絶景日帰り温泉 龍宮殿本館』詳細

住所:神奈川県足柄下郡箱根町元箱根139/営業時間:9:00~20:00(土・日・祝は8:00~。最終受付は19:00)/定休日:無/アクセス:JR小田原駅からバス1時間20分の龍宮殿前下車すぐ

取材・文=工藤敏康、佐藤さゆり、鈴木健太、松井一恵 撮影=泉田真人、オカダタカオ、鈴木奈保子
『散歩の達人』2022年1月号より

スーパー銭湯は、風呂好きを魅了する温泉テーマパーク。岩盤浴やリラクゼーションなど、充実施設を満喫するもよし、極上の湯なら、日がな一日風呂三昧という過ごし方もある。湯上がりのビールと名物グルメで腹を満たせば、至福のひととき。
ざんぶり湯に浸かって、身も心もほぐれたら、胃袋もしっかり満たして帰りたい。食材にこだわり、調理方法にもこだわり、その手のかけ方は、もはや専門料理店以上。ごはん目当てに足を運びたくなる湯処を紹介します。