ツルっとのど越し良い武蔵野うどん。『古久や』

幕末より伝わる武蔵野うどん

肉つゆうどん(並)730円。うどんの量は300g超と3人前相当。天かすもそばちょこ一杯分だ。

木枠の窓格子に積年の風情が漂う、昭和2年(1927)築の建物でいまも営業する武蔵野うどんの店『古久や』。創業はさらにさかのぼって江戸末期。変わらないのは建物のみにあらず。林業で栄えた街、飯能ならではのボリューム。コシがありつつも、ツルツルと口に入る食べやすさ。汗で流れた塩分をしっかりチャージできる濃いめのつけつゆ。しかも、豚肉がたっぷり。力仕事を想定して作られたうどんなのにいまも変わらぬ人気を誇る、その完成度を味わって。

慣れた手付きでうどんをバラしながら湯釜へと投入する店主の細川博之さん。

『古久や』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市八幡町6-9/営業時間:11:00〜14:10LO/定休日:日・祝/アクセス:西武鉄道池袋線飯能駅から徒歩7分

野菜たっぷりの昼ごはん。『もりのたね』

服部一家のもてなし心満載

お昼ごはんセット1250円は、ウェルカムティー、サラダ、選べる週替わりのメイン(写真は大根、白菜、あさりのパスタ、バゲット付き)、ドリンク付き。

店主の服部竜明さんは、フレンチの手法を取り入れた中華料理店の副料理長を務めた後、飯能郊外の人気イタリアン『La Nola』へ。「師匠夫婦をはじめ、飯能の格好いい大人たちに支えてもらって」、独立した。料理は、「野菜を楽しみに来る方が多くて」と、義父が作る無農薬野菜が主軸。みずみずしい葉物のサラダに蒸し揚げの芋類で甘みを添え、ボンゴレにアゴ出汁で炊いた大根を加える。食前、食後に香り麗しいお茶もたっぷり供され、体の内から歓声が上がる。

服部一家。この日長男・義父は欠席。
クリームブリュレ400円も味わいたい!

『もりのたね』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市落合317-1/営業時間:11:00~ 13:45LO・18:00~ 22:00(夜は前日までに要予約)/定休日:月/アクセス:西武池袋線飯能駅から西武バス「河辺駅南口」行き7分の「前ヶ貫入口」下車5分

参加型のそば屋。『そば舎 あお』

お茶もそば湯もセルフ。

辛味大根せいろ1000円(2020年から1100円に変更予定)。常陸秋そばを使う二八。月曜は十割がお目見え。

地道に集めた骨董を使い、いつか飲食店を開こうと企んでいた佐藤暁子(あきこ)さん。やるなら「からだにいい、自分が食べ続けたいものを」と、そばを選んだ。そばを筆頭に、日本産の骨董、使い勝手のいい道具、そしてショートカットの佐藤さん。すべてが潔くかっこいい。季節のせいろなど変化球もあるが、初来店なら、秋田産・松館(まつだて)しぼり大根を使う一枚をぜひ。辛い大根をそばに直接のせて味わうと、そばの甘みがふわっと舞う。

お茶もそば湯もセルフ。参加型のそば屋
全メニューに付く、だし巻き卵とおかず1品。そばを待ちながら日本酒1合600円をちびちび。
屋根上まで青い!

『そば舎 あお』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市小久保275-4/営業時間:11:00~ 17:00(そばがなくなり次第終了、そばの予約可、14:00~カフェ利用可)/定休日:火・水/アクセス:西武池袋線飯能駅からイーグルバス「宮沢湖」行き10分の「宮沢湖」下車3分

天然ものでにぎる華麗な一貫。『鮨 すずき』

江戸前を海のない飯能で

5000円のおかませより。野菜尽くしの前菜の後、にぎり8~10貫が供される。

駅から遠い住宅地に、都内からも通う人がいる寿司屋を発見。迎えてくれるのは、「寿司に行こうぜ、飯能へ!」を唱え、江戸前寿司を貫く職人、鈴木恭司(やすし)さんだ。予約時に予算と好みを事前に相談するが、「これだけは、食べてもらってます」と、近所の小島農園で育つ野菜を使う前菜が登場する。やはり近所で醸される天覧山の生酒を傾ける間に、ゆっくりと鈴木さんの手が動き出す。透明に輝くサヨリ、脂の余韻が深い松川カレイ、技ありの華麗な一貫に唸(うな)る。

ネタケースは「震災を機に節電の意味も込めてやめました」。
中伊豆から取り寄せる真妻(まづま)種のワサビをおろす、鈴木さん。

『鮨 すずき』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市前ケ貫270-2/営業時間:11:30~ 14:00・17:00~ 22:00(昼夜とも要予約)/定休日:木/アクセス:西武池袋線飯能駅から西武バス「美杉台ニュータウン」行き5分「ひかり橋」下車3分

青空の下ですする素朴なうどん。。『お寺うどん』

昆布とかつおからひいた出汁を夏はキリッと、冬は穏やかな味わいに仕上げる。

「こら、コタロウ!」。 観音寺の境内に、いたずら好きの子猫をやさしくいさめる店主・小林美代子さんの声が響く。もともと夫婦で飲食店を営んでいた美代子さん。昨春、常連客だった住職との縁から、境内の一角の空き小屋で1杯310円のうどんをのんびり売り始めた。毎朝、30年物の製麺機をゴトゴト鳴らして打つのは、うっすら茶色を帯びた素朴なうどん。風味を大切にしたいから、使うのは埼玉の黒土で育った農林61号100%と決めている。店頭で注文したら、小屋の外にある小さな丸太に腰掛けてすするのがお決まりだが、お天道様の下で味わう青空うどんの旨いこと! よじれた麺を噛むほど、舌に懐かしい甘みが広がる。おっと、背後のコタロウにご注意ください。

桜海老いっぱいのかき揚げは売り切れ御免!
大切に使い続けているレトロな製麺機。「ちょっと調子が悪いときもあるけど、ね。ふふ」

『お寺うどん』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市山手町5-17 観音寺境内/営業時間:10:00~15:00(売り切れ次第終了)/定休日:月・火・水・木/アクセス:西武池袋線飯能駅から徒歩10分

まるでアフロな驚異のかきあげ。『福六十』

知人を驚かせるために出したのが始まり。

かきあげ天ぷらうどん1540円(麺とかき揚げは通常別盛り)。かき揚げ単品550円。

20年近く前、知人を驚かせるために出したのが始まりというこのかき揚げ。1枚でもすごい量なのにそばやうどん、丼のセットには2枚も! 度肝を抜くボリュームにたじろぐが、口に運べば意外にも後味軽やか。「キャノーラ油で揚げるので食べやすいと思います」と店主の武藤政浩さん。具は北海道産のタマネギに、かなり多めの芝エビ、さらに刺し身用の小柱まで。食べきれなくても持ち帰れるので(パック代20円)、安心してチャレンジを。

小上がりもある店内。酒や一品料理も豊富。
店では武藤さんが打つそば・うどんが食せる。

『福六十』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市緑町11-20/営業時間:11:00~14:00( 日・祝~15:00)・17:00~21:00/定休日:水/アクセス:JR八高線・西武池袋線東飯能駅から徒歩10分

昭和の風情が漂う大衆そば処。『長寿庵』

飯能野菜の底力を知る

野菜でうどんが隠れる野菜3倍 肉汁せいろ うどん1000円。天ぷらも入っているのにお気づき?

昭和の雰囲気が漂う飯能銀座通りにあって、実際に暖簾をくぐっても昭和風情満点の大衆食堂のような大衆そば処『長寿庵』。懐かしのオムライスも人気だけれど、飯能の野菜の底力を腹の底まで知ることができるのが野菜3倍 肉汁せいろ。使われているのは、飯能で育った在来種と固定種という特別な野菜。そば、ないしはうどんとともに豚肉がたっぷり入ったつけ汁に浸して口に運べば、野菜からにじみ出る水分とともにおいしさが口中に広がる。

テーブル席と小上がりからなる昭和ムード漂う店内。

『長寿庵』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市仲町7-28/営業時間:11:00〜20:00LO/定休日:木/アクセス:西武鉄道池袋線飯能駅から徒歩5分

通をうならせる手打ちそば・うどん処。『櫟庵』

細打ち二八そばはまさに絶品。

せいろ そば950円。細打ちのそばゆえに待ったなし、目の前に出されたそばから口に運ぼう。

飯能河原の林に佇む手打ちそば・うどん『櫟庵(くぬぎあん)』の店主、大河原秀夫さんは御年80に手が届くかというご年齢。そば通にはその名を知られる職人だ。2017年に一度店を閉めるも、2020年に後進の育成も兼ねて再び店を開けた。メニューは、せいろ、のりせいろ、天せいろ、かけうどん、天ぷらうどんとそばがきのみ。のど越しがよく、香りがスッと鼻に抜ける。キャリアを通し、一貫して突き詰めてきた白い細打ちの二八そばをぜひ。

天ぷらを揚げる大河原さん。割烹料理屋で”目で盗んで覚えた”という、カリッとした食感が好評。

『櫟庵』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市大河原70-1/営業時間:11:00〜14:30LO/定休日:水・木(祝の場合は翌日)/アクセス:西武鉄道池袋線飯能駅から徒歩15分

ふわとろオムライスを畑の中で。『ラ・ノーラ』

卵本来の味が活きるオムライス

オムライス ラノーラ風1370円。濃厚な卵ならではの力強い色合いは、デミグラスソースとのコントラストも鮮やか。

夫婦二人で切り盛りするトラットリア『ラ・ノーラ』が立っているのは、代々農家を営んできた店主である森富美之さんの家の畑の中。お昼の看板メニュー、オムライス ラノーラ風ランチを目当てに多くの客が訪れる。食感はフワっトロっ。使用するのは、本来はプリン用として生み出された濃厚な卵。その卵自体には一切味付けをせず、ちょっと濃いめのケチャップライスとのコンビネーションで、卵本来の味を引き立たせているのが特徴だ。

「畑の中のレストラン」のキャッチフレーズどおり、目前の茶畑ほか田畑が周囲に広がる。

『ラ・ノーラ』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市下加治243-25/営業時間:11:30〜14:00LO・18:00〜20:30LO/定休日:水/アクセス:JR八高線・西武鉄道池袋線東飯能駅から徒歩30分

名物はクリーミーなエビトマトソースのオムライス。『PASTA AND OMURICE 1+2』

エビのだしがしっかり効いた濃厚なソースで食べごたえ抜群。

エビとトマトクリームのオムライス1100円。

入間川にかかる岩根橋からほど近く、アメリカンハウスを彷彿させる白い外壁が印象的な『PASTA AND OMURICE 1+2』を訪れる客を虜(とりこ)にしているのは、エビとトマトクリームのオムライス。もとはパスタ用に生み出したソースだったが、常連さんの「ご飯にかけて食べたい」というリクエストをもとに考案されたのだとか。濃厚なトマトクリームソースとさわやかなトマトライス。エビはプリっと、卵はフワっと。それぞれがしっかり役割を果たしていて、クセになるオムライスだ。

サラリーマンや会社経営を経て、シェフという天職にたどり着いた店主の高田清さん。

『PASTA AND OMURICE 1+2』店舗詳細

住所:埼玉県飯能市飯能319-1/営業時間:11:00〜14:30LO・18:00〜21:00LO/定休日:火・水/アクセス:西武鉄道池袋線飯能駅から徒歩15分

構成=柿崎真英、フリート 取材=佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ)、井上こん、下里康子、木村雄大 撮影=井上洋平、高野尚人、桧原勇太、小野広幸、加藤昌人、木村雄大