共通する想いを持つ2人が生み出した、新たな日本茶カフェのかたち

JR西荻窪駅から高架沿いを吉祥寺方面に5分ほど歩いた場所に、レトロとモダンが融合したような落ち着いた空間が現れる。

『Satén Japanese tea』(以下、Satén)の店主の一人である小山和裕さんは、この店をオープンするまで、コーヒーと日本茶を提供する吉祥寺のスタンド「UNI STAND」(現在は閉店)の“茶リスタ”として働いており、そこでバリスタの藤岡響さんと出会った。

小山さんは日本茶を、藤岡さんはコーヒーをそれぞれ得意分野としながら、「こだわりのあるコーヒー店のような感覚で、日本茶もカジュアルに提供できたら」という共通の想いを抱いていたことがきっかけで意気投合。2018年春に、2人の理想を体現したこの店をオープンした。

カウンター席は2020年現在開放しておらず、持ち帰り用茶葉の陳列をしている。

コンセプトは、“Leaf to Relief ― 茶葉から一服へ ―”。「生産者が大切に育てたお茶が、お客さんの安らぎのひと時の一杯となるまでの道のり」を表しているという。さらに、小山さんはこのコンセプトに込めた想いをこう語る。

「茶葉から一杯のお茶になるまで、僕らが責任を持って提供して、そのお茶を飲んでくださった方に、どこで・どのような人が作ったお茶なのかを、きちんと伝えられる店でありたいと思っています」

その想いは、店の造りにも反映されている。店内には、テーブル席やテラス席のほか、カウンター席も完備。小山さんらが一杯ずつ丁寧にお茶を淹れる様子を間近で眺めることができる、まさにこの店の特等席だ。オーダーしたドリンクに使用する茶葉の説明なども併せて聞くことができ、お茶への理解を深めてから飲む一杯は、ひと味違うものになるだろう。

2020年現在は新型ウイルス感染拡大予防のため、カウンター席の開放はしていないが、買う際に声をかければ茶葉の説明をしてもらえるので理解も深まる。

“日本茶の間口を広げる”柔軟な発想

お茶の種類は、主に7種類。日本各地で生産されたシングルオリジン(単一農園)の茶葉のみを扱っている。シングルオリジンの茶葉は農園や生産者を特定できるため、Saténのコンセプトにも沿っている。

持ち帰り用茶葉は1200円~。

緑茶は約5種類がメニューに並び、茶葉の販売も別途行っている。ほかにも、ほうじ茶をコーヒーで抽出し、きび砂糖で甘みをつけたSaténオリジナルのシロップを使ったほうじ茶カフェオレに、ジンやラムをお茶で割ったカクテルといった、新感覚のドリンクも揃う。

抹茶ぷりん(右下)530円は、抹茶ラテ(左上)560円と並ぶ人気メニューだ。

中でも、最も人気のあるドリンクが抹茶ラテだ。一杯ごとに茶筅(ちゃせん)で点てた京都宇治産の抹茶を、スチームミルクと合わせた一杯。なめらかな口当たりの中に、抹茶本来の旨味やほど良い苦味を感じられる。小山さんは「砂糖を入れて飲んでも構いません。お客さんの好きなように飲んでいただければ」と話す。正統派な飲み方だけでなく、お客さんに合った楽しみ方や選択肢を増やすことが、日本茶に興味を持ってもらうきっかけにつながると、小山さんは考えている。

「入り口は何だっていいんです。人気の抹茶ラテを目当てに来てくださった方が、今度は緑茶を飲みに来ようと思っていただけたら、そこから日本茶の美味しさや奥深さに気付いてもらえる可能性が広がると思うんです。」

Saténのように日本茶を提供する店は、東京でもまだ少ない。2020年でオープンから3年。小山さんは、「これまではどれだけ裾野を広げるかということにフォーカスしてきたが、次はどうやって茶葉に目を向けてもらうか」を考えるフェーズに来ていると、今後を見据える。

家庭で日本茶を淹れて飲むという習慣が薄れつつある今、これからは日本茶もコーヒーのようにこだわりの専門店で買って楽しむ時代が来ると感じた。

『Satén Japanese tea』店舗詳細

取材・文・撮影=柿崎真英