銭湯跡地で営まれている下北沢随一の人気店
床や壁のタイル、天井など、内装はほとんど銭湯だった時代のまま。洗い場と脱衣所の壁を取っ払い、名残を生かして男湯だったところにメンズ、女湯だったところにウィメンズを配置しているのがおもしろい。
かつて、下北沢一番街商店街を散歩していたオーナーが、「八幡湯」の取り壊しがスタートしていることに気づき、「このレトロな建物を壊すのはもったいない」と一念発起。工事を止めさせ、持ち主と賃借の交渉をしたのがことの始まりだという。
建物のルーツを匂わせるユニークな店名を考え付いたのは、他ならぬオーナーだそう。元々は同じ下北沢で、ビンテージとアンティークが中心の古着店「HAIGHT&ASHUBARY」を営んでいた人。これに対して2店舗目となるこちらは営業方針の柱にリサイクルを据え、「店内全商品1万円以下」を謳い、学生や古着初心者にもファッションを手軽に楽しんでもらおうと環境を整える。それでいてただ値頃なだけではなく、ラインナアップやスタイリングにこだわり、「NEW YORK JOEらしさ」を打ち出しているのが魅力だ。
一般的な「買い取り」とは異なるシステム「トレード」にも興味をそそられる。聞けば、買取査定後にはもちろん現金での支払いも可能だが、希望すれば査定額(店頭販売価格)の60%相当分の商品と交換することができるという。開業時から導入しているシステムだが、今も昔も他店に同じような試みをしているところは見当たらない。
「買い取りよりもお得に交換できるといいなあ、と思いました。それに、自分では不要になった服を今欲しい服に交換できると楽しいので」と、本部の竹下さん。
買い取った商品はクリーニング、スチームなど必要な処置を施し、きれいにしてから陳列している。「服の価値や寿命を延ばし、ゴミにしないこと」が命題の一つなのだとか。確かに、並んでいる商品はどれも状態が良好で、自分ならどういうふうに着たいかと想像が広がる。それに、リーズナブルだからこそ全身のコーディネートを一度に揃えられ、これまでにしたことがないようなファッションにも挑戦しやすいのがうれしい。
迷ったら、スタッフをファッションの手本に
元銭湯なだけあってBGMがよく響き、少しテンションが上がる。それでなおさらスイッチが入り、自宅のクローゼットの中身を思い浮かべながら店内をぐるぐる回ってみることにした。メンズとウィメンズのフロアに仕切りがないため行き来しやすく、女性がメンズのアイテムを、男性がウィメンズのアイテムを手に取るきっかけになっているようだ。スタッフのファッションも参考になる。
どれも財布に優しい価格になっているが、なかでもTシャツは2000〜3000円と手が届きやすい。古着ならではの味わいや、洒落の効いたデザインを見つけるのも醍醐味だ。
「男性がウィメンズを着てタイトにまとめるのも、女性がメンズをだぼっと着るのも素敵だと思います」
迷った時にスタッフから直接ヒントをもらえるのは、店舗を訪れた人だけが得られる特権とも言える。
「カッチリした印象のボタンダウンシャツに丸襟シャツを重ねると、カジュアルダウンすることができます」
柄物と柄物を合わせるのはハイレベルに思えるが、「例えばどちらにも赤が入っているとか、共通の色を拾うことができれば意外とごちゃごちゃしません」。また、バッグやアクセサリーなどの小物を、ブラウンのような落ち着いた色で揃えてみるのもおすすめ。そうすることで全体的に引き締まり、まとまりが生まれるそうだ。
ちなみに、バターイエローやミントグリーンなど、パステル系が2026年のトレンドカラーの一つ。そこにグレーの小物を加えるといいアクセントになる。スウェットパンツであえてはずす遊び心もポイントに。さらに、「タンクトップやキャミソールをベストのようにしてTシャツの上に重ねるのは、挑戦しやすいレイヤードのテクニック」だという。
「ランジェリーも注目アイテムで、レイヤードにぴったりです」とスタッフ。上半身を大人っぽくしたら、下半身をスポーティに。これもはずしのテクニックと言える。
「足元に何を持ってくるかによってもだいぶ印象が変わります」と教わり、咄嗟に思い付いたのはスニーカー。だが、そこにあったのはハイヒール。なるほど、ハイヒールでぐっとエレガントに見える。
ファッションで冒険することは、思っていたほどハードルが高くないのかもしれない。「こうすればいい」というコツはあっても、「こうしなければならない」という決まり事はないのだ。それでも迷ったら、スタッフに相談すればいい。最後は、それを身に着けている本人がいかに楽しんでいるか、だ。
「古着の街」としての下北沢の今昔
『NEW YORK JOE EXCHANGE』がオープンした2010年、すでに人々にとって古着が下北沢を訪れる大きな理由になっていた。その後、古着店の数が減ったと感じる時期もあったが、昨今のブームで再び急増している。マニアが多かった昔と比べて、現在はもっと幅広い層が古着を求めてこの街にやってくる。
「古着の街」と呼ばれる地域はいくつかあるが、竹下さんが言うには「下北沢は先駆けだったなと思います」。吉祥寺店、渋谷店ができ、現在都内に3店舗ある『NEW YORK JOE EXCHANGE』だが、いちばん多種多様な人が集まるのは下北沢店だという。口コミで広がっているのか、外国人観光客も多い。2025年は、ビリーアイリッシュがお忍びで来ていたそうだ。
今や、下北沢の古着店としては古株になりつつある『NEW YORK JOE EXCHANGE』。これまでスタイルを変えず、「スタッフが自信を持って買い取った商品を独自のスタイリングで魅せる」ことを大事にしてきた。そこから伝わってくるのは、一人ひとりが思うままにファッションを楽しもうという気持ち。自由でいいんだなあ、と体から余計な力が抜けた気がした。
取材・文・撮影=信藤舞子






