店主の数だけ古道具屋がある
古道具屋といっても、千差万別。古美術からガラクタまで、扱うものも、見せ方も、店によって違う。何を選び、どんなふうに置くのか。その判断に、店ごとの個性が表れる。
『新しい人』の棚にも、その個性が表れている。器や置物、古い雑貨、用途の分からないものなど、さまざまなものが“古道具”として並ぶ。骨董品だけでなく、日用品のようなもの、誰かの家から出てきたようなものもある。それでも、一つ一つに値札がつき、棚の一角を与えられている。どんなものでも店主・小池んさんやスタッフのフィルターを通すと、それらは不思議と『新しい人』の商品になる。
3人は、互いの店を知る間柄だ。『背骨』と『新しい人』はご近所で、オープンした年も同じ。『MUMA』の佐藤さんは『新しい人』の常連客で、同店でポップアップショップを重ねたのちに自身の店をオープンした。
仲がいいからといって、店が似ているわけではない。小池んさんについて、吉田さんは「いいお店を作る人」だと話す。小池んさんも「好きなものは割と似ている。でも、アウトプットのスタイルは全然違う」と語る。好きなものは近い。けれど、それをどう見せるか、扱うかはまた別の話だ。
吉田さんは当初『背骨』という店を、自身の作品のように作っていたという。そこに自分がいなくても成立する空間として考えていた時期もあった。けれど店を続けるうちに、お客さんとコミュニケーションをとることの面白さも大きくなっていった。内向きと外向き、両方を行き来しながら、『背骨』は今の姿になっている。
小池んさんにとって、『新しい人』は古道具を売るためだけの場所ではない。「自分の居場所を作りたかった」という思いで始まった店には、買い付けてきたものだけでなく、人々から持ち込まれたものも並ぶ。思いがけないものが店に加わることもある。小池んさんは、そうした偶然をどう見せるかにも面白さを感じている。
佐藤さんは、『MUMA』のセレクトについて「自然と集まってきたもの、という感覚に近い」と話す。目に留まったものを拾い上げ、スクラップするように店に置いていく。常連客の顔を思い浮かべることもあるという。
3人に共通しているのは、古道具をただ“古いもの”として扱っていないことだ。何を残すのか。どこに置くのか。誰に届けたいのか。古道具屋を構成しているのは、ものの量や種類だけではない。それぞれの解釈が、店を形作っている。
3店を回っていると、生活になじみそうなものよりも、どこに置くのか、何に使うのか想像ができないものばかりを手に取ってしまった。これは誰の家にあったのか。どのようにしてこの店にたどり着いたのか。そんなことまで考えてしまう時間も、古道具屋を巡る面白さの一つだと思う。
『背骨』
入り組んだ構造の店内には古道具やオブジェが整然と収まり、棚や壁、光の具合まで含めて、小さな美術館を訪れたような気分になる。細部に至るまで、店主・吉田尚能さんの美意識が通っている。
『背骨』店舗詳細
『新しい人』
国内外から買い付けた古道具や、どこかの誰かから持ち込まれた不用品も店頭へ。独自通貨「KOIKEN」は1KOIKEN=70~120円(2026年現在)の変動制。レートは世界情勢、そして“新しい人を取り巻く世界”情勢次第。
『新しい人』店舗詳細
『MUMA』
アンティーク、民芸品、用途の分からないものなどが、小さな店内に収まる。価値や年代だけでは測れない、妙に気になるものに出合える。アクセサリーやオリジナルTシャツなど、服飾品も多い。
『MUMA』店舗詳細
取材・文=重竹伸之 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2026年8月号より






