街を歩いてアイデアとなったシェア型書店
引き戸を開けて足を踏み入れれば、木箱を並べてこしらえた本棚が目に映る。「これ、リンゴの箱なんですよ」と、店主の町田さん。普段は観光業に携わる彼女が、青森で仕事をした縁で仕入れたものだ。実に20年以上も使われた年代物だそう。「いわば、リンゴ箱の第二の人生です」と、町田さんはほほ笑む。
シェア型書店とは、店内の本棚を複数の棚主が借り、各々が選んだ書籍を並べ、販売する書店のこと。
「棚主さんの本が別の人に渡って、別の人生を送る。その循環に、古箱の活用はピッタリだと思って」
すると、奥の『ギャラリーぶらっと・えにし』から「箱はそれぞれクセがあって、仕切り板の取り付けは苦労でしたよ」と、オーナーの矢吹浩二さんが顔を出した。彼は、町田さんの高校時代の恩師でもある。
町田さんは、2022年に『散歩の達人』編集部を離れ、ツーリズムの勉強のため、イギリスへ渡った。帰国した翌年の2025年9月、矢吹さんから声をかけられた。
「私たち、誕生日が同じで。お祝いの言葉のあと、『何か一緒にやらないか』と言われたんです」
もともと、『ギャラリーぶらっと・えにし』は、矢吹さんが13年間一人で営んでいたが、集客の起爆剤に新しいことをしたいと考えていた。町田さんはオファーを快諾。散歩の達人らしく江戸川台の街を歩き、人の流れを探り取っていた。
「街に人の動きを作るため、出版社出身の私の知見がどう貢献できるのだろう。そう考えて、シェア型書店のアイデアが浮かびました」
その後、二人はすぐ棚作りに着手し、2026年3月に『えにしの本屋』を開業。この地に書店が誕生したのは、約20年ぶりだった。
書店と棚主の気持ちを合わせて
「初日は不安でした。でも、その日に来店した方が後日、棚主になってくれて。3月は3人、その後も毎月、棚主が増えています」
町田さんは、申し込みが入ると、必ず対面で面談をする。
「なぜ棚主をやりたいか。どんな本を置きたいか。そういった気持ちの部分を聞かせてもらっています」
シェア型書店は、書店と棚主がともに空間を作り、本を売る。いわば二人三脚。町田さんは彼らの思いまで大切にする。現在の棚主は大学教授や元司書、主婦など幅広く、多彩な選書がにぎやかだ。
「今後は、ギャラリーと連携して、気軽に滞在できる空間や本に触れられるイベントを作りたいですね」
本好きの縁をつなぐコミュニティーとなる日は、きっと遠くない。
『えにしの本屋』店舗詳細
取材・文=どてらい堂 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2026年7月号より






